毎日新聞 2013年10月14日朝刊より
 
 防衛秘密公開ゼロ
 公文書館に移管せず
 
 自衛隊に関する機密「防衛秘密」のうち、役目を終えた後に国立公文書館に移されている文書が1件もないことが分かった。公文書館は歴史的に重要な文書を保存、公開する施設だが、防衛秘密h2002年以降、1件も後悔されていない。専門家は「歴史的に重要な文書が検証できない」と批判している。
 
 防衛相02年施行以降
 
 防衛秘密は02年施行の改正自衛隊法で定められ、防衛相が防衛上特に必要な文書を指定する。自衛隊の運用や計画▽防衛力整備計画▽武器や航空機、船の種類・数――などで11年度末現在、3万752件ある。防衛相の内規では、保存期間は1件ごとに異なり、1年未満〜30年(延長可能)。[秘密の要件を欠く]と判断されれば保存期間中でも秘密指定が解除でき、このうち歴史的に重油なものが公文書館に移管されることになっている。しかし、これまでに移された文書は1件もないという。
 防衛省によると、保存期間を終えた文書は省幹部の承認を得たうえで破棄するか期間を延長する。
破棄された件数は07年~11年の年間で計約3万4300件あるという。
 一般の行政文書の場合、11年施行の公文書管理法により、保存期間(30年未満)終了後化、使われなくなった時点で公文書館に移すか破棄する。破棄には首相の同意が必要で、防衛秘密のように省内部だけで決めることはできない。
 
 防衛省防衛政策局調査課は取材に「保存期間が満了すれば管理者の商人で破棄することは、自衛隊法施行令や訓令(内規)で定めている」と説明。保存期間の途中で秘密指定を解除し公文書館に移管するかどうかは省の判断に委ねられていることから、法的に問題ないとの見解を示した。
 
 自衛隊に詳しいジャーナリストの前田哲男さんは「想像するしかないが、日米合同や自衛隊の訓練のシナリオや検討過程も破棄されてしまっているだろう。欧米なら保存し年限が来たら後悔する」。NPO法人除法公開クリアリングハウス理事長の三木由希子さんも「歴史的検証が必要だ。防衛に関する秘密についても公文書管理法の趣旨に従い、重要文書を破棄しない仕組みを作るべきだ」と話す。
 
 破棄ルール定まらず
 
 防衛秘密は、15日開会の臨時国会に提出される特定秘密保護法案で新設する「特定秘密」に統合されることが決まっている。関係法令などに将来の開示を定めた規定が盛り込まれる見通しは立っておらず、防衛秘密同様、保存期間を終えた後も省庁の判断だけで破棄される恐れがある。
 
 法案を審議する与党のプロジェクトチームでも懸念する意見が出たことを受け、特定秘密保護法案を担当する内閣情報調査室は9月27日一般の公文書と同じように、保存期間を終えた文書は首相の同意がなければ破棄できず、歴史的に価値があると判断すれば国立公文書館などに移して後悔することを検討する意向を示した。
 しかし、法案や内規にどのように規定を森効果など具体的な説明はなく、実現するかどうかは分からない。
【青島顕】