転載記事
毎日新聞 2013年09月20日 西部朝刊
徳洲会公選法違反:「ボランティアを装え」 運動員の職員ら「指示された」
医療法人「徳洲会」グループを巡る公職選挙法違反容疑事件で、自民党の徳田毅(たけし)衆院議員(42)の選挙区(鹿児島2区)に運動員として派遣された複数の病院職員が毎日新聞の取材に応じ、「外部にはボランティアと装うよう指示されていた」などと証言した。運動員らは実際には日当を受け取っており、公選法に抵触すると認識しながら組織的な選挙運動をしていた実態が改めて浮かんだ。
昨年11月16日の衆院解散直後から有給休暇を取って選挙区入りした東日本の病院の男性職員は、現地で選挙を取り仕切っていた陣営関係者に「外部から(身分について)問い合わせがあったらボランティアと答えるように」と指示された。日当は3000円で、今年7月の夏季賞与に上乗せする形で病院側から振り込まれたという。男性は「内部ではみんな違法と気付いていた。今まで発覚しなかったのが不思議だ」と振り返る。
また、東日本の別の男性職員は「日当が支払われるようになったのは最近の選挙から」と証言。活動内容については「2人1チームで、チラシを渡して『お願いします』と。1日150〜200軒くらい回っていたと思う」と明かした。
この職員は徳田議員の父で徳洲会理事長の徳田虎雄元衆院議員(75)が出馬していた時代から選挙運動に加わっていたといい、「選挙運動への参加は習慣化していた。今回も当たり前という感覚だった」と述べた。【吉住遊、山下俊輔】
2013/09/22 02:00 【共同通信】
「徳洲会」病院職員を一斉聴取 特捜部、選挙実態解明へ
東京地検特捜部が家宅捜索した福岡徳洲会病院=21日夜、福岡県春日市
医療法人「徳洲会」グループの公選法違反事件で東京地検特捜部は21日、昨年12月の衆院選で自民党の徳田毅衆院議員(42)=鹿児島2区=の選挙運動に派遣された系列病院職員の一斉聴取に乗り出した。
内部資料によると、全国の約40の病院が、200人以上の職員を派遣していた。特捜部は警視庁と連携して選挙の実態を解明する方針で、関係者の聴取と押収した資料やパソコンの分析を進めている。徳田議員や父親の徳田虎雄理事長(75)の関与についても調べる。
また特捜部は21日、福岡県春日市の福岡徳洲会病院などを家宅捜索した。
産経ニュース 2013.9.22
有権者ランク分けし票読み 徳田氏親族、総出で陣頭指揮
昨年12月の衆院選で、医療法人「徳洲会」グループの各病院が徳田毅衆院議員(42)=自民・鹿児島2区=陣営に職員を派遣、日当などを支給していたとされる公職選挙法違反事件で、徳田氏の親族が運動員が戸別訪問した際の有権者の感触をランク付けして分析し、細かい票読み作業を行っていたことが21日、関係者の話で分かった。親族は「徳田家から総理を出す。倍以上の差で勝つ」などと鼓舞。家族総出で陣頭指揮を執り、運動員に指示を出していた。
「親族専用トイレ」
「指宿地区で一票でも多く」「谷山地区で勝てなくては勝ったことにならない」
関係者によると、選挙期間中、徳田氏の親族は鹿児島入りし、事務所に常駐。運動員が戸別訪問で得た有権者の感触を「◎○×」などに分けたうえで票読みをしていた。その上で、具体的に地区名を指定し、重点的に巡回するように運動員を叱咤(しった)していたという。その中で「徳田家から総理」というフレーズも飛び出した。
主に陣頭に立ったのは徳田氏の母や姉など徳田ファミリーの女性たちだ。病床にある医療法人徳洲会理事長、徳田虎雄・元衆院議員(75)の“名代”として振る舞っていたという。「その態度は『理事長そのもの』のように見えた」と、グループの地方病院幹部は話す。
徳田家家系図
選挙事務所にはファミリー用の部屋が用意され、専用の洋式トイレも設置された。「他は全部和式。事務所には足の悪い高齢者もいたが、洋式トイレを使いたくても使えなかった」(グループ関係者)
「パパ」は禁止
虎雄氏が一代で打ち立てた徳洲会グループで、虎雄氏の息子や娘は、主要企業・法人の役員に就任。ファミリーによるグループ支配を盤石のものにしていった。
虎雄氏は著書で「家族を治められない者は国を治めることはできない」とするなど、家族の結束の重要性を主張。幼少のころから、帰宅した父を正座で出迎えさせるなど厳しい教育を施したという。
グループ元関係者は、虎雄氏の“教育方針”を振り返る。「虎雄氏は子供たちに『お父さん』『パパ』と呼ぶことは禁じ、理事長と呼ばせていた。毅氏も『お父さんと呼んだことはない』などと話していた」。子供たちにグループの一員であるという意識を、普段から徹底させていた。
東京地検特捜部は、こうした結束が強い虎雄氏の子供たちを事件のキーマンととらえ、20日には数人の子供の東京都内の自宅を家宅捜索。今後、選挙運動の指揮系統を確認するため、ファミリーから任意で事情聴取を進めるもようだ。
ファミリーをよく知る地方病院幹部はこう話す。
「特に虎雄氏が病気に倒れて以降、一族による専横は激化した。『徳田総理』という願望も結構だが、その野望のために公益性の高い医療法人を私物化していたという事実は重い」
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【用語解説】徳洲会グループ
66の総合病院を運営するほか、診療所や老人保健施設など計361の施設を抱える国内最大級の医療・福祉グループ。グループ全体を統括する「一般社団法人徳洲会」、病院を運営する「医療法人徳洲会」、全病院が調達する物品を一手に仕入れる「株式会社徳洲会」など計51の法人で構成される。