「金を敷き詰めろ」4年前の総選挙でも買収
2013.9.19 12:53
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徳洲会東京本部を家宅捜索し、押収物が入った段ボールを運び出す東京地検特捜部の係官ら=18日未明、東京都千代田区
「金を敷き詰めろ」。医療法人徳洲会理事長、徳田虎雄(75)が衆院選を戦った時代、虎雄からこんな言葉で有権者に金をまくよう指示されたと元側近が告白する。
札束が飛び交う選挙区として全国に悪名をとどろかせた奄美群島。ここで虎雄は小選挙区比例代表並立制移行後も含め7度の衆院選を戦い、戦績は4勝3敗。選挙のたび、現金買収などで末端運動員の摘発が繰り返されたが、虎雄の関与が暴かれることはなかった。
買収を含む汚れた選挙運動を陣頭指揮してきたのは、虎雄の命を受けて東京などから送り込まれた徳洲会グループの幹部たちだったという。
「最も金を使ったのは、初当選した平成2年だった。この選挙で裏の資金を30億使った」と、金の差配を任された元側近が語る。
現金は箱に詰めて航空便で送られたほか、虎雄が自分で運ぶこともあった。当時、現地の選対幹部だった地元病院元幹部が語る。
「空港で理事長(虎雄)を出迎えると、駐車場で札束の入った箱を開けて、○○町に1千万、○○町に1千万と手渡された」
こうして届いた金は、各地区に配置された幹部らに分配された。当時、奄美で選挙は「第4次産業」とまで言われ、選挙戦中に買収金額がつり上がり、投票当日には1人10万円まで払ったという。「今思うと、皆、感覚がまひしていた」
裏資金は数億円
こうした買収選挙は、虎雄の後を継いだ次男、徳田毅(たけし)(42)の時代になっても、手法を変えて引き継がれたと複数の関係者が証言する。
「最後の総力戦になったのは平成21年の総選挙だった。民主党が大勝する選挙で、自民党入りした毅さんにとっては背水の陣だった。百戦錬磨の徳洲会職員たちが現地に乗り込み、期日前投票で約1万票を数億円で買った計算だった」と関係者が明かす。
どうやって期日前に票を買ったのか。
「衆院解散の前から選挙区に入り、昼間からパチンコ店にいる若者などに声をかけ、仲間を集めさせて組織を作る。1人5千円で期日前投票に行ってもらうが、取りまとめ役には事前に飲み食いの費用などを別に渡す。そういう組織を何カ所も作った」
選挙公示後、まとめ役が各地区の選対を訪ね、集めた有権者の名簿を提出し、人数分の現金を受け取ったという。「名前が重複することがあるので、こちらはその都度、パソコンに名前を打ち込んでチェックした。すでに払った人の分は金を出さない」
21年の衆院選に先立ち、前年にも衆院解散の機運になったため買収組織作りをした結果、経費を2度かけることになり、裏の費用は数億円にのぼったという。
「こうして期日前に稼いだ票が約1万で、これが結局、対立候補との得票数差とほぼ同じ数字だった」
追及は沙汰やみ
金で買われた議席。その資金はどこから捻出されたのか。
徳洲会グループでは今年初め、解雇された元幹部がグループ企業から引き出していた仮払金の残額が問題になったことがあった。
仮払いされたまま未処理で残った金額は、平成13年時点で約1億7千万円だったが、24年時点には7億8586万円まで膨らんでいた。このうち21年の衆院選当時に引き出されたのが約5億円だった。
元幹部は、虎雄の親族らとの対立から解雇に追い込まれたが、かつては腹心として選挙戦の陣頭指揮を任される立場だった。
解雇に先立ち、徳洲会グループの顧問弁護士が元幹部に、仮払金の使途を明かせと詰め寄った。元幹部が、支出の大半は選挙運動の裏資金だったとして明細書を示したところ、追及は沙汰やみになった。
「これ以上つけばヤブヘビになる。だから追及をやめたのでしょう」と関係者は語っている。(敬称略)
徳洲会グループは理事長一族の「選挙マシン」 前例ない組織的動員の疑い
2013.9.17
昨年の衆院選で徳田毅(たけし)衆院議員(42)=自民・鹿児島2区=を当選させるため、徳洲会グループが全国50余りの病院職員を選挙運動に大量動員していたことが16日、明らかになった。公的な役割を担うべき医療法人が、理事長一族の「選挙マシン」として働かされていたという、過去に例のない組織的な選挙違反の疑いがある。
徳洲会は、創業者の徳田虎雄氏(75)が理事長を務める医療法人徳洲会、特定医療法人沖縄徳洲会など計51の法人で構成され、運営する総合病院は全国66に上るほか、診療所、老人保健施設、介護事業所、特別養護老人ホームなど計361もの施設を運営する国内最大級の医療・福祉グループだ。
医療法人は国や自治体から多額の補助金を受ける非営利法人であり、中でもグループの2法人は、法人税、固定資産税が免除される社会医療法人の認可を受けており、高い公益性が求められている。
昨年の衆院選で徳洲会グループは、小規模な病院を除いた50余りの病院職員を鹿児島県に派遣し、徳田毅氏の選挙運動にあたらせたほか、虎雄氏の盟友といわれる野党代表の陣営にも、神奈川県内の4病院の職員を派遣していた。
鹿児島の選挙事務所には選挙期間中、各病院の事務職員だけでなく、事務局長、看護師長ら事務部門と看護師部門の責任者も常駐させていた。その間の給与や日当、経費はすべて病院持ちで、事実上の「丸抱え選挙」だった。
派遣された地方病院の事務責任者は「派遣の指示を拒んだりすれば徳田家に対する反逆と見なされる。従わざるを得なかった」と証言しており、強制的な動員だった疑いが強い。
職員を派遣した病院の中には、厳しい資格要件が課された社会医療法人や特定医療法人が運営する病院も含まれる。このためこの問題は、公選法に抵触する疑いがあるだけでなく、医療法人の資格認定にかかわる問題にも発展する可能性がある。
公選法は第三者が資金を提供しての運動員派遣を禁止。最高裁では今年1月、経営する会社の社員に選挙運動の報酬を支払う約束をしたとして公選法違反罪に問われた元民主党比例代表候補の男性について、懲役2年執行猶予4年とする有罪判決が確定している。