「秘密保護法案」意見募集に対する意見 :言論・表現の自由を守る会
 
1 意見募集期間を、少なくとも2か月以上に延長せよ。
2 国際人権規約と日本国憲法に違反している「特定秘密の保護に関する法律案」に強く反対する。
 大型台風18号の大雨と突風・強風によって、京都府の桂川をはじめ全国各地での河川の氾濫、家屋や車の浸水と家屋の喪失、全国で143万人の人々に避難指示・勧告が出され、3人の方がお亡くなりになり、5人もの方々がいまだ行方不明。22府県で124人が負傷され、停電も近畿から東北までの広い世帯で23万世帯を超えたと報じられています。多くの国民が夜を徹して復旧作業にかかっています。
 この大規模災害の中で「秘密保護法案」のパブリックコメントの締め切りを本日17日締め切りとすることは許されません。
 
この「秘密保護法案」は9月3日に公示したばかりにもかかわらず、本日17日をパブコメ提出期限としています。人類普遍の基本的人権と国民主権を侵害する重大な法案に対する意見聴取期間を、たった2週間で閉め切ろうとしています。
 通常の意見募集期間30日です。しかも、意見提出期間が30日未満の場合には、『意見提出が30日未満の場合その理由』をホームページ上に明記しなければなりませんが、この欄は空欄です。
 しかし、政府は『その理由』も空欄のまま理由の説明を拒否してまで、意見募集を強引に短期間で締め切って次期国会でなにがなんでも採決を強行する構えです。
 
 
 こども被災者支援法案の場合ですら、8月30日に公示し、意見・情報受付開始し、当初意見・情報受付締切日を17日までとしていたものの市民の強い要望を受けて9月23日 まで延長しました。
 『意見提出が30日未満の場合その理由』には、「任意の行政手続きであるため(行政手続法※※の対象外)」と、『理由』を表示しています。
 こども被災者支援法案も、意見聴取期間を少なくとも2か月に延長すべきです。
  
 この法律は、「福島第1原発事故によって、日本の国土がどれくらい放射能汚染されたのか明らかにしたい」ということを犯罪化するための法律であり、憲法違反であるとともに、国際人権規約違反であることは明らかです。 
 また、今年の元旦から、三度国連人権理事国となった日本政府において、自由権規約に適合している法律であるか否かということについて検討された形跡すらないことは重大問題です
 
 ※※ 行政手続法:
第1章 総則(目的・定義など)
 申請に対する処分や不利益処分の手続き、命令等制定時における意見公募の手続きを明確に定めることによって、不当な処分がなされることを事前に回避するという意味において、事前の救済制度としての機能を持つところにその特徴がある。・・・
第1条(目的等)1、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続きに関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること)の向上を図ること。上記目的の達成により国民の権利利益の保護に資すること。
 
 この悪法の成立を許さないために、一人でも、一団体でも多くの意見を届け、国際世論も広げて廃案にしましょう。
 
 下記URLから、意見(パブリックコメント)を提出することができます。
 
内閣官房内閣情報調査室「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について 
☎代表03‐5253‐2111(代表) 担当:橋場健参事官
 
1)電子メール:メールアドレス。tokuteihimitu@cas.go.jp
(2) 郵送の宛先。 〒100-8968 東京都千代田区1-6-1 内閣官房内閣情報調査室「意見募集」係宛
(3) FAXの場合以下のFAX番号・宛先。03‐3592‐2307  内閣官房内閣情報調査室「意見募集」係宛 
 
参考資料 
■「秘密保全法とは?」日本弁護士連合会
http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret/about.html 
 

「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書

日弁連は、内閣官房が実施している「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集に対し、2013年9月12日付けで「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する意見書」を取りまとめ、内閣官房内閣情報調査室に提出しました。

本意見書の趣旨

1 意見募集期間を2か月に延長すべきである。
2 当連合会は、日本国憲法の基本原理を尊重する立場から、「特定秘密の保護に関する法律案」に強く反対する。
 
■東京新聞 2013年9月15日 
秘密保護法案の危うさ あの国家秘密法と同じ!?
 
政府が臨時国会で成立を狙う特定秘密保護法案の概要が発表された。国民の知る権利を侵害するとして、批判が強い法案だ。秘密の指定方法は、自衛隊法の「防衛秘密」がモデルになっていることが分かる。自民党政権が一九八〇年代に画策し、世論の反対で廃案となった国家秘密法案の一部が復活したものだ。一度は葬り去られた国家秘密法案がよみがえろうとしている。 (佐藤圭)
 
特定秘密保護法案の概要
行政機関の長が、漏えいすると国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあり、秘匿が必要な情報を特定秘密に指定する。
公務員らが漏えいした場合、最高10年の懲役刑。秘密情報を扱う省庁と契約を結ぶ民間企業の従業員らも罰則の対象となる。
特定秘密を取得するため 1.人をあざむき、暴行を加え、脅迫する行為 2.窃取 3.施設への侵入 4.不正アクセス─は処罰対象。取得行為の未遂、共謀、教唆なども処罰される。


何でも「秘密」指定乱用も

「国家秘密法案の試みが挫折しても、すべてが終わったわけではなかった。自衛隊法の防衛秘密は、国家秘密法案のつまみ食いだ。外交と治安分野の秘密を加えたものが、特定秘密保護法案にほかならない」

 軍事評論家の前田哲男氏は危機感をあらわにする。

国家秘密法案は、自民党が85年に議員立法で提出した。スパイ行為の最高刑を死刑と定めていた。野党や世論の反発が強く廃案に追い込まれた。

 しかし、自民党や官僚は国家秘密法案の復活を虎視眈々(たんたん)と狙っていた。2001年9月の米中枢同時テロ直後の臨時国会で、米軍のアフガニスタン攻撃を支援するテロ特措法が制定された。この国会で、自衛隊法も改正され、「防衛秘密」が新たに規定された。「9・11後のどさくさに紛れて、テロ特措法とは関連のない自衛隊法が抜け駆け的に改正された」(前田氏)

 

 「防衛秘密」とは何か

指定範囲を示した別表には「自衛隊の運用又(また)はこれに関する見積もり若(も)しくは計画若(も)しくは研究」など10項目が並び、自衛隊や防衛に関する領域をほぼ網羅しているこれらは廃案になった国家秘密法案の防衛に関する条項を踏襲したものだった。

 防衛相が秘密を指定するが、第三者が乱用をチェックする手だてはない。実際、防衛秘密の件数は、06年末の9772件から11年末には30752件へと、6年間で3倍に膨れ上がった。中身はベールに包まれたままだ。

 政府が今月3日に発表した特定秘密保護法案の概要を見てみると、対象となる「特定秘密」の防衛に関する指定範囲は、防衛秘密の別表がそのまま使われている。政府は「別表で具体的に限定列挙する」と説明するが、歯止めにならないことは、防衛秘密の現状を見れば明らかだ。

 防衛以外の 1.外交 2.外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止 3.テロ活動の防止─ の3分野についても、別表が付いている。いずれも防衛秘密と同様、それぞれの分野が広範囲にカバーされ、「限定列挙」とは言い難い

 「テロ活動の防止」の別表は「テロ活動防止のための措置又(また)はこれに関する計画若(も)しくは研究」と、防衛秘密の書きぶりとそっくりだ。これでは、例えば、福島第一原発の放射能汚染水漏れなどが、テロ活動防止の観点から秘密だと恣意(しい)的に指定される可能性を排除できない。


◆イラク派遣で反対活動暴露

 防衛省と自衛隊は秘密保護を名目に、国民を幅広く監視している。その一端を垣間見たのが、自衛隊の情報保全隊が02~04年、イラクへの自衛隊派遣に反対する市民団体などの情報を収集・分析していた問題だった。

 自衛隊の情報保全隊は、前身にあたる調査隊を改称し、人数を大幅に増やして2003年に発足した。目的は「自衛隊の機密情報の保護と漏えいの防止」。防衛秘密とは密接不可分の関係にある。

 日本政府は04年、自衛隊をイラクに派遣した。情報保全隊がイラク派遣反対市民らを調査していた問題は、共産党が07年に公表した自衛隊の内部文書によって暴露された。そこには反対集会の日時や場所、発言などが詳細に記載され、個人名もあった。

 東北6県の住民が、情報保全隊の監視は憲法違反に当たり、精神的苦痛も受けたとして、情報収集の差し止めや賠償を国に求め提訴した。原告団・弁護団事務局で訴訟に関わっている仙台市民オンブズマン前代表の千葉晃平弁護士は、「組織内部を統制するとともに、外部からの接触者を監視の対象とする。しかも単なる情報収集ではなく、自衛隊を批判する人たちを敵として分類した。違憲・違法な活動だ」と厳しく批判する。

 訴訟は、昨年3月の仙台地裁判決で、情報収集を「人格権を侵害し違法」と認め、原告5人に計30万円を支払うよう国に命じた。現在、仙台高裁の控訴審で審理中だ。

 自衛隊法の防衛秘密では、秘密を漏らすと最高5年の懲役に処せられる。漏えいの共謀・教唆・扇動も3年以下の懲役が科せられる。ただし、実際に処罰されたケースはほとんどない。例えば、隊員らが起訴され、裁判で防衛秘密が証拠として法廷に提出されてしまえば、それは秘密ではなくなる。罪に問うための重要な証拠を提示できないという矛盾を抱えている。

 秘密保護法案でも、同様の問題がある。裁判のあり方は重要な論点だが、概要では何も触れていない。民主党政権時の有識者会議では、基準にのっとって指定されたと判断されれば、裁判でも保護に値する秘密と「推認」する仕組みが検討された。だが、これでは秘密裁判とも言える司法手続きになってしまう。

 千葉弁護士は「秘密保護法案が成立すれば、次々と立件されることはなくても、見せしめ的に1、2件罰せられるのではないか。一方で、市民側が民事で権力の違憲・違法な活動を訴えようにも、そこに特定秘密があると、逆に罪に問われかねない。権力をチェックするのは非常に難しくなる」と警戒する。

 

 政府は、法案概要について一般から意見を募るパブリックコメントを実施しているが、17日までの15日間と極めて短い。「重要法案なのに短すぎる」という批判が出ている。反対世論が盛り上がり廃案になった国家秘密法案の二の舞を避けるために、一気呵成(かせい)に事を運ぼうとの思惑が見え隠れする

 前出の前田氏は「憲兵隊のような組織がつくられ、日本が『戦争できる国』になってしまう」と警鐘を鳴らす。憲兵隊とは、旧日本陸軍で軍事警察をつかさどった組織。権限は次第に拡大していき、思想弾圧など国民生活全体を監視するようになった。

 「秘密保護法案は、外交・安全保障政策の新たな司令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)の創設や集団的自衛権の行使と一体だこれらを許せば自衛隊が首相の一存で海外に派兵され、反対する人たちは徹底的に弾圧される。こうした企てを阻止するためには、国民全体で危機感を共有していく必要がある」