こうした「米国の要求の背景には、米製薬業界の『特許期間が短いと企業の新薬開発意欲がなくなり、結果的に悪影響が出る』との主張があるとみられる。これに対し、後発薬に頼っているマレーシアなどは、後発薬の発売が遅れると自国の低所得者層を中心に影響が出るとして警戒感を強めている。」
以上のような新薬への開発投資の保護を大義名分にした米国の新薬特許期間の延長要求は今に始まったことではない。これについては、筆者も『文化連情報』2013年1月号に寄稿した論稿で取り上げた。同誌の編集部の許可を得たのでその全文を以下、ここに転載することにした。
日本の医療財政の改善策を阻む先発薬の保護強化要求
これをお読みいただければ、新薬の特許期間延長など医薬品への投資の保護を強化すべきという米国の要求は、安価なジェネリック薬を命綱とする途上国の貧民の健康と生命を犠牲にしてでも販路の拡大と薬価の高値維持を求める多国籍製薬資本の強欲を代弁するものであることが理解いただけると思う。
また、そうした日本国内外の製薬資本の強欲に屈して割高な先発薬の特許権保護を強化することは、開発費を要しない分だけ新薬より安価な後発医薬品を普及させることによって薬剤費、ひいては窮迫する医療保険財政の立て直しを図ろうとしている厚労省のロードマップの達成を阻む重大な障害となることを理解いただけると思う。
(補足)
厚労省は2007年に、2012年度末までにジェリック医薬品の数量ベースの普及率を30%以上とする目標を掲げたが、実際には26.3%にとどまった。そこで、本年4月に、普及率の算定方法を変更した上で、2017年度末までにジェリック医薬品(数量ベース)の普及率を60%以上とする目標に改めた。
ちなみに、日本製薬工業会/医療産業政策研究所がまとめたリサーチ・ペーパー(「後発医薬品の使用促進と市場への影響」2012年6月)によると、2009年現在の各国のジェネリック医薬品の数量シェアは次のとおりだった。
アメリカ 72.0% カ ナ ダ 66.0%
イギリス 65.0% ド イ ツ 63.0%
フランス 44.0% スペイン 37.0%
日 本 21.0% イタリア 6.0%
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(以下は『文化連情報』№418、2013年1月号に寄稿した拙稿を同誌編集部の許可を得て転載するものである。)全文のPDF版は次のとおり。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tpp_yakka_bunkaren.pdf
TPPは薬価制度をどう変えるかまた、そうした日本国内外の製薬資本の強欲に屈して割高な先発薬の特許権保護を強化することは、開発費を要しない分だけ新薬より安価な後発医薬品を普及させることによって薬剤費、ひいては窮迫する医療保険財政の立て直しを図ろうとしている厚労省のロードマップの達成を阻む重大な障害となることを理解いただけると思う。
(補足)
厚労省は2007年に、2012年度末までにジェリック医薬品の数量ベースの普及率を30%以上とする目標を掲げたが、実際には26.3%にとどまった。そこで、本年4月に、普及率の算定方法を変更した上で、2017年度末までにジェリック医薬品(数量ベース)の普及率を60%以上とする目標に改めた。
ちなみに、日本製薬工業会/医療産業政策研究所がまとめたリサーチ・ペーパー(「後発医薬品の使用促進と市場への影響」2012年6月)によると、2009年現在の各国のジェネリック医薬品の数量シェアは次のとおりだった。
アメリカ 72.0% カ ナ ダ 66.0%
イギリス 65.0% ド イ ツ 63.0%
フランス 44.0% スペイン 37.0%
日 本 21.0% イタリア 6.0%
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(以下は『文化連情報』№418、2013年1月号に寄稿した拙稿を同誌編集部の許可を得て転載するものである。)全文のPDF版は次のとおり。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tpp_yakka_bunkaren.pdf
~医薬品業界の経営動向~
醍醐 聰
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