締約国(日本政府)は、出生届に子どもが「嫡出」か、否かの記入を規定している戸籍法第49条1項の1と同様、国籍法第3条と民法900条4項を含む、婚外子に対するいかなる差別条項の法律を撤廃すべきである。
婚外子相続 差別規定なくす道筋を(7月11日)
結婚していない男女間に生まれた婚外子(非嫡出子)の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法の規定は憲法に反していないか。
これを争点とする2件の裁判で最高裁大法廷は弁論を開き、当事者の意見を聴いた。婚外子側の代理人弁護士は「速やかに違憲無効と判断すべきだ」と主張した。
大法廷は判例変更時に開廷し、今秋にも違憲判断を示すとみられる。
出自の違いで相続分に差をつける規定が法の下の平等を定める憲法14条に反するのは明らかである。
大法廷は1995年の決定で、この規定を合憲と判断した。だが、裁判官15人中5人は違憲とする反対意見を付した。その後も地裁や高裁で違憲判断が示されている。
大法廷には今度こそ、この規定が相続という財産分与での差別にとどまらず、婚外子への社会的偏見を助長している現実を見据え、規定撤廃につながる判断を期待したい。
審理で事実婚を含む家族形態や価値観の変化など時代の流れを十分考慮すべきなのは言うまでもない。
主要先進国でこうした規定を残しているのはいまや日本だけということも忘れてはならない。
この規定は明治時代からあり、法律婚制度の尊重が目的とされる。
昨年の内閣府の世論調査では撤廃賛成は約26%で、反対は約36%だった。相続は利害が激しく対立する。男女間の複雑な感情も加われば、規定撤廃に抵抗があるとの意見も一定程度は理解できる。
だが、よく考えてほしい。
ポイントは、相続財産の分与は遺言により、一定の範囲内で、民法の規定と異なる割合で行えることだ。
95年の大法廷決定で違憲を主張した裁判官の1人は反対意見で、婚姻家族の相続分を多くしたいなら遺言制度を活用すれば足りると述べた。
個人財産の分配である以上、当事者の意向が尊重されて当然だ。
一方で、この規定があることで婚外子の心は傷つき、偏見の目を向けられる。「百害あって一利なし」としか言いようがない。
婚外子という少数者の権利を擁護するのは民主主義社会の責務だ。問題は政府と国会の対応である。
法相の諮問機関である法制審議会は96年、この規定を撤廃する民法改正要綱を答申した。夫婦が別姓を選べる制度新設も盛り込んだ。
しかし、与党内から異論が出て、法案提出には至らなかった。野党が再三、改正法案を提出したが、いずれも廃案となった。