毎日新聞 2013年07月04日
オリンパス損失隠し:「先任社長が始めた」経営姿勢を非難
「本件は約20年間にわたる損失隠しの一端として行われた犯行だ」。元オリンパス会長の菊川剛(つよし)被告(72)ら旧経営陣3人を有罪とした3日の東京地裁判決は、長年にわたって市場を欺いてきた同社の経営姿勢を厳しく非難し、歴代トップの責任にも言及した。【山本将克、川名壮志、島田信幸】
午後1時半、104号法廷。菊川被告は執行猶予付きの判決を言い渡されると、小さくうなずき、目を閉じた。閉廷後、弁護人は「社会に迷惑を掛けたことを大いに反省している」と心情を代弁した。
菊川被告は2001年に社長を託された。デジタルカメラ事業を成功させてたどり着いたトップ。だが、待っていたのは約1000億円の「簿外損失」だった。公表か隠蔽(いんぺい)か−−。公判では「社員の生活を守るには(損失隠しは)唯一の対応だった」と訴えたが、判決は「社会的責任を果たすべき大規模公開会社の経営者としてあるまじきこと」と突き放した。
判決は名指しこそしなかったものの、「損失隠しを最初に決めたのは菊川被告の先任の社長ら」と断じた。検察側によると、元社長の下山敏郎氏が手を染め、「負の遺産」は岸本正寿氏に引き継がれたが、公訴時効が成立している。
岸本氏は判決前、取材に「彼らだけに刑事責任を負わせる形になり申し訳ない」と語った。「損失を回復できると思ったが、今考えると僅かな希望だったかもしれない」と後悔の念をにじませた。
◇下山元社長、6月30日に死去
元オリンパス社長の下山敏郎(しもやま・としろう)氏が6月30日、肺炎のため死去していたことが関係者への取材で分かった。89歳。葬儀は親族で営んだ。
下山氏は1984〜93年に社長を務め、その後会長に就いた。損失隠し事件の発覚後に体調を崩し、入院生活が続いていたという。
◇今後の焦点は損害賠償へ
旧経営陣に有罪判決が言い渡され、今後の責任追及の焦点は、民事訴訟と「指南役」の刑事裁判に移る。
損失隠し発覚による株価急落で損害を受けたとして、生命保険会社や年金基金などの株主は東京、大阪両地裁に20件の訴訟を起こし、オリンパスへの請求総額は約351億円に上る。原告のうち個人株主約90人の弁護士は3日、記者会見し「まさか執行猶予とは」と不満を示した。
オリンパス側も3被告を含む旧経営陣19人に計36億円の損害賠償を求めて提訴し、東京地裁で係争中だ。
一方、大手証券OBで指南役とされる横尾宣政被告(59)ら4人は金融商品取引法違反などで起訴され、公判前整理手続きが続く。ある検察幹部は「これほどの粉飾が長年発覚しなかった背景に指南役の存在がある。手口は複雑で巧みだ」と強調する。
横尾被告ら3人は、同社から受け取った報酬約22億円を海外口座に隠したマネーロンダリング事件でも追起訴された。
今回の判決は、旧経営陣と指南役4人の共謀を認定したが、横尾被告らは自らの公判で起訴内容を否認するとみられる。
毎日新聞 2013年06月11日 12時27分
オリンパス損失隠し事件:指南役の社長ら再逮捕
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再逮捕された横尾宣政容疑者=東京都新宿区で2012年2月16日午後3時37分、石井諭撮影
オリンパス(東京都新宿区)の損失隠し事件に絡み、損失の簿外処理に協力した見返りに同社から受け取った報酬約22億円を海外の口座に隠したとして、東京地検特捜部は11日、指南役のコンサルタント会社社長、横尾宣政(のぶまさ)被告(59)=金融商品取引法違反などで起訴=ら3人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)容疑で再逮捕した。
他に再逮捕されたのは、いずれも横尾容疑者の元部下の会社役員、羽田拓(たく)(50)と小野裕史(51)の両被告=金融商品取引法違反などで起訴。
逮捕容疑は、2007年3月期と08年3月期のオリンパスの連結決算で、損失を抱えた金融商品を複数の海外のファンドに移すなど、同社旧経営陣による粉飾決算に協力。08年9月と同12月にオリンパスから得た報酬計約22億円を外国銀行の口座に送金するなど犯罪収益を隠匿したとしている。
オリンパスの損失隠し事件を巡っては、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などに問われた元会長、菊川剛(つよし)被告(72)ら旧経営陣3人と法人としての同社の公判が既に結審しており、7月3日に東京地裁で判決が言い渡される予定。【山下俊輔】