憲法9条改悪を許さず
☆ こどもの権利条約の個人通報制度即時批准を求める声明 ☆

2013年5月5日 言論・表現の自由を守る会

 日本政府による憲法9条の改悪を許さず、日本政府に対して、被災したこどもたちと人々の「人間の復興」を第一に政治を行うよう求め、日本の司法が国際人権条約を活用する道に踏み出すよう、個人通報制度の即時批准を実現しましょう!
 子どもの権利条約の個人通報制度は、閣議で決定すれば、ただちに批准できます。

 ◎ 子どもの権利条約の個人通報制度即時批准を求める運動を呼び掛けます!

 日本にくらすすべての子どもたちの命と健康を守るために、子どもの権利条約と自由権規約の個人通報制度(第1選択議定書)の署名にご協力ください。
 2001年の社会権規約第2回日本政府報告書審査の結果、日本政府は委員会による勧告を誠実に実行していなかったために、東京電力第1原発爆発事故をひきおこし、安定ヨウ素剤も事前に配布されなかったため、福島を中心にした関東および東北のこどもたちと人々に、効果的な時期に投与されず、甚大な被曝被害を与えました。


 さらに日本政府・文部科学省は、爆発事故の後に、放射能汚染地域の避難基準を20倍に引き上げてしまい、学校やコミュニティー単位の集団移住を保障せず、福島県知事も県民の十分な健康管理を行わないため、現在もこどもたちと被ばく労働者と福島の人々は甚大な被害を受け続け、東京電力と日本政府は、日本全土と海洋と大気を地球を放射能で汚染しつづけています。

 今年の子どもの日で、とりわけて憂えるのは、日本の安倍政権=教育再生実行会議
がすすめている、国際人権に真っ向から逆行する諸々の戦前と同じ反動的教育政策です。
 「道徳の教科化」や「国旗国歌尊重義務」を教育の目的に掲げる国際条約が存在するでしょうか。
 学校における「いじめ」解決の方法として「厳罰化」や「警察力の導入」をうたう国際条約が存在するでしょうか。
 教育の目的とは、「人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化」(世界人権宣言26条)とうたわれている通りである。これは個人の尊厳に対する尊敬(respect)であって、国家に対する尊敬(respect)とはまったく反対のものです。私たちが尊敬(respect)すべきは、国家やそれを象徴する国旗・国歌ではなく、個人の尊厳でしかないことを確認しましょう。

 「いじめ」は、「子どもの権利条約」違反です。
 国が力を入れるべきは、内向きで画一的な上からの押しつけ教育ではなく、世界に通用する普遍的な教育観に基づいた子どもたちの多様な文化的背景と価値観を尊重する教育であり、それを実現するためには、「子どもの権利条約」を初めとする教育に関する国際条約を批准し、国内に浸透させることがいま何よりも優先されなければなりません。

 「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、18歳未満のすべてのこどもたちの基本的人権の尊重を促進することを目的として、1989年の国連総会で全会一致で採択されたものです。
 日本は、1990年9月21日にこの条約に署名し、1994年4月22日に批准の手続きをおこない同年5月22日に発効しています。
また、2000年5月には国連で『武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の議定書』と『児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書』が採択され、日本はそれぞれ2004年9月2日(8月2日批准)、2005年2月24日(1月24日批准)に効力を生じています。

 日本国憲法98条では、
 「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」
 と、日本政府が批准している人権条約を憲法と同等に遵守することを規定しています。

 1979年に日本政府は、人類普遍の基本的人権を保障する国際人権規約(社会権規約・自由権規約)を批准し、7つの人権条約を批准していますが、いずれの個人通報も批准しておらず、日本の最高裁判所で国際人権規約を適応したのはたった1つしかありません。
 日本政府・外務省はNGOと国連などの働きかけによって、2010年4月に外務省人権人道課の中に個人通報制度批准のために「人権条約履行室」を設置しており、批准の準備は整っています。

 ※個人通報制度とは:日本の裁判所で裁判官に国際人権条約を適用させるためには、(国内人権救済機関の手を尽くしてもなお人権が救済されない場合、人権を侵害されている個人(子どもの場合はその保護者)若しくは当該国際人権条約機関に通報できる制度)

 ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

言論・表現の自由を守る会
は、4月30日に国連社会権委員会(ジュネーブ)で行われた第3回日本政府報告書審査においてロビー活動を行い、社会権規約委員に対して下記の質問と勧告等を提案しました。

 ◎ 日本政府に対する質問(案) :
 1、2001年、社会権委員会は、原発施設の安全性に関わる問題にかんする情報の透明性を高め、それを関係する住民全員に開示するよう勧告し、政府にたいし、核事故の防止や早期対応の計画策定を加速化するよう勧告した。この勧告を守るために政府はどのようなことをしたか。

 ※前回2001年9月の第2回日本政府報告書審査において委員会が原発の問題について政府に対して提起した懸念事項(パラグラフ22)と勧告(パラグラフ49)。
 パラグラフ22 委員会は、報告された原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念をする。
 【勧告】パラグラフ49 委員会は、原子力施設の安全性に関連する問題に関し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進することを勧告する。さらに、締約国に対し、原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを要求する。

 2、公的な報告は福島第一原発の爆発は死者を出していないとしているが、現地の人々は原発が爆発した時に、原発で働いていた友人や家族が亡くなったと報告している。このような情報ギャップをどのように説明されるのか?

 3、放射性降下物の降った地域にすむ子供たちのうち甲状腺異常の検査をした比率は?その地域内に甲状腺がんの発病があったのか?

 4、高リスク地域の市民の全員の内部被ばくの有無を検査し、これら市民の長期健康記録を一括して、記録し続けるための共同の努力がされているか。

 5、福島第一原発は依然として不安定な状態で、周辺住民にとっては危険である。なぜ政府は、原発付近の、以前は避難命令をだしたような地域への住民の帰還を奨励する政策をとっているのか。

 6、福島第一事故の後、住民を怖がらせ、混乱を避けるためという理由で、政府は危険な高レベル放射線汚染に関する情報の提供を拒否していた。この政府方針には今も変わりはないのか。もし、変わったのであれば、再び事故が起きた場合に、住民に直ちに情報を伝えるためにどのような仕組みが作られたのか。またこの仕組みは日本全国に確立されているのか。

 ◎ 日本政府に対する勧告(案):
 (東京電力第1原発爆発事故に関して)

 1、委員会は加盟国(日本政府)にたいし、許容最大年間放射線被ばく量を年間1ミリシーベルトというチェルノブイリ基準にまで戻し、このレベル以上の汚染の地域住民、とくに高濃度汚染地域に住むことによる身体的、精神的な危険に敏感な子供のいる家庭にたいし、十分な避難・移住の支援を提供するよう勧告する。

 2、加盟国日本政府にたいし、原発労働者に、これまで未払いになっている危険手当および今後、支払うべき危険手当の支給を保証するために速やかに措置を講じるとともに、これら労働者の十分な健康管理および労働の危険性の透明性を保証するための効果的な措置を講じることを勧告する。

 3、加盟国日本政府にたいし、津波および原発事故避難者にたいし、あらゆる計画やその進捗状況を住民に明確に、直接伝えることを含め、恒久的な住宅と継続的な福祉サービスを提供するための措置を速やかに講じるよう勧告する。
加盟国は、既存の町村の住民全体を、彼らの労働技能や経験を高められるような場所に移住させるために大きな努力をすべきである。

 4、委員会は加盟国日本政府に対し、高放射能汚染地区の住民全員の健康と内部放射線レベルを検査・モニターするための独立の実験・研究機関を設置し、既存の同様の機関と協力して、福島第一事故の長期的影響を明らかにする中央データベースを管理することを勧告する。

 5、委員会は加盟国日本政府に対し、家や土地が高濃度放射線によって居住不能となった住民への十分な補償をおこなうよう勧告する。

 (教育について)
 6、「人格の完成」と「基本的自由の尊重」を目指す(社会権規約)第13条の「教育の目的」に照らして、生徒の思想・良心・宗教の自由を侵害する、国旗国歌への敬意表明の強制を公権力として行わないよう勧告する。

 7、同様に、生徒との人格的接触を通して思想形成に影響を与える教員に対し懲戒処分をもって国旗国歌への敬意表明の強制を行わないよう勧告する。

 8、卒業式・入学式等の学校行事の運営に当たっては、生徒や生徒会を決定過程の重要なメンバーとして、意見表明や参加の機会を与え、十分な説明と協議を行って生徒の納得を得られるように努力し、学校側の意向を一方的上意下達で強制しないよう勧告する。


 9、国旗国歌に対して敬意を表さなかった教員に対する懲戒処分の取消と、それに伴う諸々の労働条件上の不平等な取り扱いを改めるよう勧告する。