世界へ未来へ 9条連ニュース 2013年2月20日号より
ド田舎で聞く櫻井よしこ講演
ジャーナリスト 由井 晶子
中国が沖縄をとりに来る
「ド田舎の、ド田舎のド・ローカルな新聞(離れた席にいた友人はド・ローカルではなくてローカルと聞いた)」、櫻井よしこ氏は、沖縄タイムス・琉球新報のことをそう表現して、ローカルに強くても国際感覚に欠ける、また反日・反本土、親中国の変更記事ばかり。みんなもう一つ中央紙を読め、朝日でも日経・毎日でもいいが産経ならなおよい、と論じ立てていた。
1月28日夜、普天間飛行場野嵩ゲートに近い宜野湾市民会館に着いたとき、「櫻井よしこ沖縄講演会『東京から見た沖縄のマスコミ』は始まっていた。沖縄本島北部ではさくらまつりやらプロ野球のキャンプ入りなどで、観光客の「わ」ナンバー(レンタカー)車両が連なって道路渋滞、開始時間に間に合わなかった。受け付けは「一般」「議員」と別れていた。
渡されたプログラムを見ると、君が代を歌い、初代防衛教会婦人部長が、祖国復帰の喜びを語って開会。実行委員長(沖縄駐留軍労働組合=全中労に対抗する第二組合相談役)が講演会の趣旨を説明したらしい。
概略は・・・沖縄は四つの選択を迫られている①基地撤去か存続か②自衛隊反対か増強配備か③尖閣の中・台との共同管理か日本の領土か、そして④沖縄は日本につくか、中国につくか。選択を間違えれば、中国の支配下に入ってしまうであろう―。(近未来県民の若い層が取り組んでる、筆者)独立論や、国連人種差別撤廃委員会における少数民族としての日本政府への提言は中国の画策である。そして、正しい未来の選択に最大の足かせとなっているのが、沖縄の新聞二紙の世論コントロールである云々。で、桜井先生に講演いただいて、同沖縄マスコミ環境を変えていくか考えよう。
沖縄の新聞購読をやめろ
そ子で櫻井先生の「ド田舎の、ド田舎の」というご託宣。さらに、反日本的な両紙が九〇%のシェアを占めているのはおかしい。朝日は偏向記事のため部数が減ったおかげで、少しはいい記事を書いている。
沖縄でも同じことをやってみてはどうか。地元二紙の購読をやめたら変わるでしょうとの提案(結論)に至るまで、一時間半にわたって弁舌をふるった。
中国がフィリピンの島々を力でとり、やがて尖閣をとり、台湾をとり、南シナ海はすべて自分のものにするだろう。沖縄も自分のものだと言っている。原発をやめたら、マラッカ海峡を封鎖してげんにゅを輸入する日本の船を通さないだろう。大国アメリカがいるからこそ南の国々は中国に物が言える。台湾を守らなくてはならぬ。沖縄を守らなくてはならぬ、まず尖閣を守らなくてはならぬ。そのための軍事基地だ。本誌の読者ならよく御存じの論法だろう。
ふと気がつくと、舞台の両脇から、花道にあたる通路にかけて、黒服の屈強な男たちが立ち、客席を見張っている。講演会の宣伝文句に「沖縄に巣食う左翼勢力とたたかうために『沖縄対策本部』を立ち上げました」とある。その「左翼勢力」がテロを仕掛けてくると予測した警戒なのか。
連れとはぐれたので、聴衆があらかた帰るまで出口で待っていたが、名護の島袋吉和前市長が同僚議員とともに帰るのを見た。
安倍政権を支えるため?
1月28日は、県下41市町村の首長・議会議長(代理を含む)、県議会議長以下県議、沖縄婦人連合会、県商工会連合会など民間団体代表、総勢144人の「東京行動団」が手分けして、安倍首相や関係閣僚に建白書を手渡した日である。建白書は9・9「オスプレイ配備に反対する県民大会」決議に基づき、①オスプレイの廃部撤回とあと12機の追加配備中止および嘉手納基地への特殊作戦用オスプレイ配備計画撤回②普天間飛行場閉鎖・撤去と県内移設断念を骨子とする。
前日27日は、日比谷の野外音楽堂で4000人の支援者と「NO OSPREY 東京集会」で熱い交歓をした。銀座でのパレードの道筋で、日の丸や旭日旗を掲げた集団が罵声を浴びせた。沖縄側がどんなに声をあげても、日米同盟の方を重視する政府は振り向いてもくれない。万策尽きて、自民党県連会長も務めた翁長雄志那覇市長が保守も取りまとめ、オール沖縄による政府と本土国民へのいわば実力[示威行動]であった。
櫻井よしこ講演会を開催した団体と東京で「オスプレイは安全だ」「いやなら日本から出ていけ」と叫んだ連中とどう重なるかは知らない。翁長那覇市長を名指しで非難し、「このまま放置していると安倍政権が樹立しても沖縄vs安倍政権の構図をつくられ、安倍政権のアキレス腱となるのは火を見るより明らかです。安倍政権を支え、明るい未来をつくるために・・・・・沖縄のマスコミ正常化に向けて戦いを始めたい・・・』中村覚、対策本部呼びかけ文)という危機感で一致しているのは確かだ。
県民は全国紙を購読してみることを私も勧めたい。いかに沖縄が無視されているかを知るだろう。「ド田舎のローカル」報道こそが今の日本にどれだけ必要かも知るだろう。
さて講師に触れると、2007年6月14日号の『ワシントン・ポスト』に安倍晋三首相ら自民党タカ派などが、朝鮮半島の「従軍慰安婦」動員に日本政府や旧日本軍の計画的強制連行はなかった胸の意見広告を載せた。米国だけでなく国際的な顰蹙を買った。櫻井よしこ氏は広告を出した歴史事実委員会の委員だ。その他、あまりに日本中心の歴史認識に基づく言説はしばしば誤りを指摘される。
彼女こそ、国際感覚を描いた「ド・ローカル」の扇動屋論客だと思うが、どうだろう。