個人番号法案:是か非か 対談 東京大名誉教授・醍醐聡氏×新潟大法学部教授・鈴木正朝氏
毎日新聞 2013年04月01日 東京朝刊
日本国内に居住する外国人を含む全員に、番号を割り当て、広範囲な個人情報を共通の番号で管理する「個人番号(マイナンバー)法案」が衆院内閣委員会で審議入りした。官民両分野での利活用を視野に入れた同法案は、「国民総背番号」の色を一層、濃くしている。賛成の立場から鈴木正朝(すずき・まさとも)・新潟大法学部教授(情報法)、反対の立場から醍醐聡(だいご・さとし)・東京大名誉教授(会計学)が是非を論じた。司会は、山田健太・専修大教授(言論法)。【構成・臺宏士、写真・中村藍】
◇行政効率化、代替策ない−−新潟大法学部教授・鈴木正朝氏
◇利用の範囲、あいまいに−−東京大名誉教授・醍醐聡氏
−−まず、法案に対する賛否をお伺いします。
鈴木氏 私は推進側です。国の歳入が40兆円なのに対し、歳出は90兆円という財政状況が続く中で、超高齢化社会の到来に備えて、社会保障制度をはじめさまざまな制度を手直ししなければならないのは国民の総意です。海外でも番号制を導入しています。
醍醐氏 私は法案に異論があります。高齢化、財政難を乗り切る手段というなら、形骸化した総合累進課税を復元することなど共通番号制以前にやるべきことがたくさんあります。英国のように導入後に廃止した国もあります。
−−共通番号制導入のメリット、デメリットについてはどう考えますか。
醍醐氏 番号制導入によるコストとメリットの証明がされないまま法案が提出されています。推進論者が言うメリットは、それが番号制度に基づくものなのかどうか。何となく便利だという程度で検証が緩いと感じます。番号制を導入することで、財政再建にどのように結びつくのかも見えにくい。社会保障・税分野で言えば、果たして法案に掲げられた目的が実現できるかどうかについては懐疑的です。