《止めよう!教育の民営化・非正規職化⑫》安倍「教育再生」始動
 ▼ 下村博文の文科相・教育再生担当相兼任で教育の民営化が本格化する


 ◎極右だらけの「教育再生実行会議」
 12月27日に安倍内閣が発足し、下村博文が文部科学大臣と新設された教育再生担当大臣に就任した。06年、第1次安倍内閣の官房副長官として教育基本法改悪を強行し、教育再生会議を足場に、免許更新制導入など教育3法改悪を推進した人物だ。民主党政権時代はシャドーキャビネットの文科相を務め、安倍が総裁に就任するや、自民党の教育再生実行本部長として教育分野の選挙公約(本通信33号参照)の策定にあたった。
 1月15日には「教育再生実行会議」設置が閣議決定された。そのメンバーは八木秀次を筆頭に「日本教育再生機構」人脈で占められている(下囲み)。「いじめ対策」を皮切りに、「教育委員会制度の見直し」「6・3・3・4制の見直し」などが議論される。


 自民党政権の復活で、文科省は早速、概算要求で、学力・体力テスト「全校参加」と「心のノート」配布を復活させ、高校学テの調査費も計上、「学校週6日制」の検討も始めた。
 「安倍カラー」の教育改革は、歴史教科書や道徳強化に目が向きがちだ。しかし、文科大臣と別に教育再生担当大臣を新設し、しかもそれを下村博文という人物に兼任させた最大の狙いは、文科官僚の抵抗を排して教育の民営化を本格的に推進することにある。

 ◎公設民営化とバウチャー制度の急先鋒
 下村文科相は教育の民営化の徹底した信奉者である。
 02年には自民党文教科学部会副会長として教育特区による株式会社・NPO参入の解禁を推進した。
 04年9月には文部科学政務官に就任し、「バウチャー制度(注)導入」「全国学力テスト実施」「英国型の学校評価制度導入」などの政策提言をまとめた。
 第1次安倍政権の教育再生会議の議題にバウチャー制度を持ち出したのも下村で、第3次報告に「学校選択と児童生徒数を勘案した予算配分による学校改善システム」のモデル実施が盛り込まれた。
 03年の著書『学校を変える!「教育特区」』(大村書店)では「次の風穴は『公設民営』」と言い、「教育クーポン制度」=バウチャー制度の導入を提案している。

 ◎「教委制度見直し」は民営化・労組破壊
 近著『下村博文の教育立国論』(河出書房新社)では、文科省―都道府県教委―市町村教委―学校という組織構造を「無責任四重構造」と呼び、「四重構造の仕組みや日教組を壊して、これまでのしがらみの教育の現場を更地にしてしまう…その戦術論こそが『バウチャー制度』」と言っている。「教育委員会制度の見直し」の狙いは民営化と労働組合つぶしなのだ。
 「6・3・3・4制見直し」のポイントとなる「小中一貫教育」は、学校選択制に代わる統廃合リストラの手段であり、学校事務の共同実施のテコでもある。中学校区単位の学校運営協議会が企業が公教育に関与し、外注化・民営化を推進する水路として位置づけられている。
 政治活動への刑事罰導入や職員団体登録の抹消など、自民党が公約に掲げる教職員組合への弾圧政策がうち出されてくることも必至だ。
 2013年は教育の民営化・労組破壊攻撃との本格的な激突の年となった。大阪の攻防を先頭に全国で、教育現場の外注化・非正規職化攻撃との闘いを始めよう。

 (注)バウチャー制度
 政府が児童・生徒1人分の教育費を利用券として保護者に交付し学校選択を委ね、学力テストや学校査察とも結びつけて学校間を競争させる仕組み。入学者数に応じて予算が配分されるため学校ごとの教育条件格差が広がり、選ばれなかった学校は廃校・民営化され、教職員は解雇される。

 ※下村博文文科相の発言より
 ●今、何よりも不信感を持たれているのは、公立の先生たちの質だ。改善するためには、優秀な先生の給料を上げ、表彰などを行う一方で、能力のない先生には辞めてもらわなければならない。したがって、まずは免許更新制の導入だ。
 ●国の基準を満たせない学校は廃校になっても仕方ないし、そもそも学校選択制の下では、子どもが集まらないだろうから潰れてしまうだろう。そのような学校にいた先生は、廃校とともに職探しをしてもらう。
 ●究極的には各公立校は『私学化』すべきだ。公立学校も…教育バウチャー制度により、生徒を集めるために学校間に競争が生じるようになる。地域の有識者が、『株主』として…校長と数年ごとの契約を結び、成果によって契約更新する仕組みがチャータースクール(地域運営学校)…。
(『中央公論』06年11月号「安倍新政権のキーマンが語る・水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう」)
 ※教育再生実行会議の主な委員のプロフィール
 ○八木秀次 日本教育再生機構理事長。育鵬社から歴史・公民教科書を発行
 ○加戸守行 前愛媛県知事。01年~2年の県立中高一貫校の教科書採択で「扶桑社がベスト」と発言、扶桑社版・歴史を採択させた
 ○曽野綾子 森政権の教育改革国民会議委員として満18歳での奉仕役義務化を提案、『ある神話の背景』で沖縄戦集団自決の軍命を否定
 ○河野達信 「美しい日本人の心を育てる」教職員団体を標榜する全日本教職員連盟委員長
 ○大竹美喜 アフラック日本創業者・最高顧問。産経新聞社取締役
 ○尾崎正直 高知県知事。下村の第1次安倍内閣の官房副長官時代の秘書官
 ○貝ノ瀬滋 三鷹市教育長。小中一貫教育とコミュニティスクールを全市導入。アントレプレナーシップ(起業家精神養成)教育を推進
 ○佐々木喜一 幼児教育から中学・高校・大学の受験塾、社会人研修まで手がける総合教育サービス企業グループ「成基」の代表
『教育労働者全国通信 第35号』(2013.1.15)
 
パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2