普通科でも体罰 桜宮高全体に蔓延か
 
 大阪市立桜宮高校で体育科の男子生徒(当時17歳)がバスケットボール部の顧問から体罰を受けた翌日に自殺した問題で、同校の普通科の生徒も教員による体罰を受けていたことが、全校生徒へのアンケートで分かった。
 学校全体に蔓延していた可能性があり、市教委は調査結果を精査し、同校の改革に反映させる方針。
 
アンケートは弁護士らでつくる市の外部監査チームが18日に実施した。祖脅威関係者によると、アンケートには、既に発覚しているバスケット部やバレーボール部以外の複数の運動部で体罰があったほか、普通科の生徒も体罰を受けたとの記載があったという。
 
 体育系2科の募集中止を決めた21日、橋下徹市長が「今回の調査を基にしても、決してバスケ部だけの問題ではない」と発言。募集を中止するよう改めて要求した。一方、長谷川恵一・教育委員長は「普通科と体育科で体罰の事案(の数)があまり変わらない」と指摘。体育系の募集停止だけでは不十分だと主張し、中止に反対した。
【津久井達】
 
毎日新聞 2013年1月22日 夕刊
 
 
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<大阪・桜宮高>「折衷案」受験生に戸惑い
毎日新聞 1月22日(火)1時48分配信

 大阪市立桜宮高校で生徒が自殺した問題を巡り、体育系2科の入試中止を決定した21日の大阪市教委会議。教育委員らは「再スタート」と強調したが、結論は普通科の入試を事実上、従来の体育科と同じにするという「折衷案」だった。入試を1カ月後に控えた受験生や保護者らには「なぜ変更が必要なのか」と戸惑いが広がり、「子どもたちを置き去りにした議論だ」と批判が上がった。

 「今更、普通科に名前を変えて入試をする理由が分からない」。体育科を希望していた中学3年の男子生徒(15)は疑問を投げかけた。そして「塾のない日も自習室に通って勉強してきた。桜宮に入って甲子園を目指すと決めていたのにショックだ」と落ち込んだ様子を見せた。

 体育教師を目指して同校を受験予定の中学3年の男子生徒(15)は「希望する学科に編入できるのか、普通科で何が勉強できるのかも分からず、受験するか決められない」と、困惑の表情を浮かべた。母親も「市長や教育委員は子どもたちを無視して議論している」と憤った。

 一方、運動部の元主将ら同校の生徒8人が21日夕、市役所で記者会見。女子生徒は「市長から入試中止について納得できる説明はなかった」と反発し、「部活ができず、今しかない一瞬を全部つぶされていると感じる」と言葉を詰まらせた。男子生徒は勝利至上主義との橋下徹市長の指摘を強く否定し、「僕らのことを何も分かっていない」と憤った。8人は市長の説明に納得できないとして、保護者と相談した上で、記者会見を開いた。今後、市長と面会し、入試中止の撤回を求めるという。

 一方、長谷川恵一教育委員長は、この日の会議で憤りを隠さなかった。体育系の入試を中止して定員を普通科に振り替える事務局案は、試験にスポーツの実技を設けるなど、実質的には従来の体育科と同じ。「これでは看板の掛け替え。つじつま合わせにしか見えない」と批判し、入試を継続して体育科を改革することを主張した。しかし、他の委員からは「予定通りの募集では、改革のスタートとして弱い」などと異論が相次ぎ、多数決で中止が決定。長谷川委員長は「不本意だ」と唇をかんだ。

 今月15日に橋下市長が入試中止を要請して以降、委員らは議論を重ねた。20日夜も委員らが市役所に集まり、21日午前2時ごろまで議論が続いたが、結論は出なかった。

 橋下市長は予算の凍結すら示唆し、この日の会議前にも「入試の継続は絶対、間違っている。世論に流されずに判断してほしい」と改めて強く中止を要求。大森不二雄委員は「頭の中に市長がいる」と述べ、橋下市長の意向が決定に大きく影響したことを認めた。【茶谷亮、熊谷豪、林由紀子】