
8月30日にジュネーブでUPR予備審査が開かれ、言論・表現の自由を守る会から垣内つね子事務局長が参加し、3・11後も個人通報制度批准を拒否し続け世界人権宣言に敵対している日本政府を告発し、10月31日に行われるUPR第2回日本審査での勧告について各国の参加者に提案をしました。
開会前に準備した発言原稿とフル原稿と4つの勧告をセットにした30部の資料はたちまちなくなってしまいました。
UPR Info予備審査ドラフト
言論・表現の自由を守る会
国連経済社会理事会正式協議資格NGO
Japanese Association for the Right to Freedom of Speech
non-governmental organization in consultative status
with the Economic and Social Council
2012年8月30 日
当会の会員は、ビラ配布弾圧被害者本人や弾圧事件被害者支援団体の事務局長や支援者、日の丸・君が代弾圧被害者、民事裁判等の原告や支援者である市民たちで、20歳から第2次世界大戦を体験した高齢者まで全ての年代で構成されています。
当会は、2007年11月に国際人権活動日本委員会に加盟し、2008年3月の人権理事会に同委員会名で当会初回のレポートを提出し、今年(2012年)の4月には、当会会員の日の丸・君が代裁判の原告らが、同委員会から日の丸・君が代強制に関するジョイントのカウンターレポートを提出しています。
《 日本政府に対する勧告案 》
勧告1:個人通報制度の即時批准で、日本の三権(立法・司法・行政)を分立させ、世界人権宣言と国際人権規約の活用に道を拓き、人命と人類普遍の基本的人権を尊重する法治国家に転換せよ。
勧告2:国民の参政権にかかわる表現の自由を侵害している、公職選挙法(ビラ配布と戸別訪問の禁止規定)と国家公務員法(102条)を撤回し、日本国民の参政権を確立し、民主主義国家としての基本を確立せよ。
勧告3:こどもの貧困化が急速に悪化し、昨年1年間に1000人もの子供たちが自ら命を絶っている日本において、福島の子どもたちの避難の権利を緊急かつ全面的に保障し、健康管理を抜本的に強化し、社会権規約第13条2のBおよびC項(中等・高等教育の無償化条項)の留保を即時撤回して批准せよ。
1、個人通報制度の即時批准について
前回のUPRで勧告を受けた直後の2009年の総選挙において、現政権党は個人通報制度を実現することを公約に掲げて政権を交代させたものの、法務大臣が交代するたびに実現に対する姿勢は後退し、3・11後、批准に積極的だった外務省政務官を退任させ、人権人道課長を国外に左遷し、人権問題に関心のない人物を課長にすえ「(批准に)反対する団体もいる」と批准を拒絶している。これは、単なる政治的意思の欠如ではない。
1998年世界人権宣言50周年の後、日本政府は勧告の実施をそれまでのネグレクトから、「宣言」に敵対する方針に転換しました。
この事実を正確に把握することが極めて重要です。
その証拠に、2001年社会権規約第2回政府報告書審査に対する社会権規約委員会の勧告に対して、勧告を実施しないどころか、その翌年に反論して勧告を実施していない。
その結果、原発の裁判でも政府は情報を開示せず、原発の建設ラッシュに歯止めがかからず、同時に、万が一の事故に対する備えが欠如し、福島では原発が爆発し、福島の人々は東日本大地震と津波被害の上に、被爆して故郷を追われ、現在においても経済的な保証は極めて不十分である。
事故情報でさえ速やかに開示されず、莫大な放射能汚染によって感受性の強い多くのこどもたちも被ばくさせられ、こどもたちの健康管理と避難の権利も保証されていません。
今尚、被爆し続けている福島県民と原発労働者と全ての避難民に継続している人権侵害行為は人道問題です。
また、今年7月に開催された「世界防災閣僚会議in東北」を主宰した外務省の課長たちは誰一人、社会権規約委員会の勧告どころか条約(国際人権規約)すら知らず、福島県の知事も市町村長たちも、誰も条約も勧告も条約に法的規範性があることも全く知りません。
国際人権規約を敵視している日本の内閣が国会議員の数を頼みに、地震国日本で安全性が確認されていないにもかかわらず大飯原発を再稼働させたことは、国際的な脅威であり、これらは、日本政府が国連憲章と世界人権宣言及び国際人権規約に敵対していることに原因しています。
2、公職選挙法(ビラ配布と戸別訪問の禁止規定)と国家公務員法(102条)の撤回について
前回のUPR審査では勧告されなかったが、同(2008)年自由権規約委員会は、私たちのロビーイングの結果、日本政府に対して、パラグラフ26でこの2つの法律の撤回を求め勧告しました。
これら2つの弾圧法規の撤回は、日本国民の参政権を確立させる課題です。
法律を決める国会議員の選挙を公正に行うことを保障して、国民の参政権を確立することは、人権問題の課題の実現を強く願い行動しているすべての市民とNGOの願いを、確実に実現する共通の道です。
そして、第2次世界大戦の侵略国日本の政府に対して、この人権尊重の道に政治のかじを切り替えさせることは、日本国民のみならず国連中心のアジアの平和と世界の平和を築くために不可欠です。
しかし、外務省も裁判所も検察も、自由権規約委員会の2008年の勧告を完全に無
視し続けています。
2009年3月に東京高裁では、国公法弾圧堀越事件の無罪判決を出したものの
裁判長は、堀越さんの国際人権規約違反の主張については判断せず、警察の
犯罪を証明する最も科学的な証拠である22本もの警察官による盗撮ビデオの
証拠採用を拒否したまま判決を出し、東京高検笠間治雄検事長が無罪判決
は不当だとして堀越さんの事件を最高裁に上告し、その後最高検検事総長に
天上がっています。
最高裁は、板橋高校君が代弾圧事件では、2011年の3・11後の7月に、ヘント大学フォルフォ-教授による国際人権規約違反を指摘した意見書をも無視して罰金20万円の不当有罪判決を出しました。
都立学校の卒入学式で「君が代」斉唱時に起立斉唱しなかった教師たちが、強制によって不利益を蒙った処分の撤回を求めて延べ700人を超える教員が21件の裁判を提訴していました。最高裁は3・11直後から、その内の10事件に対して、国際人権規約を無視し、不当判決ラッシュを続けました。
この結果、教育委員会と校長たちは政治家の意をくんで、児童や生徒に対して「日の丸」と「君が代」への忠誠を強要しています。
また、文部科学省は、最高裁が国際人権規約を無視し続けていることを理由に、大阪市長が国家公務員法102条を根拠法として地方公務員法を改悪し、教師と自治体職員の政治活動を完全に禁止する条例制定と弾圧を容認しています。
国連憲章も世界人権宣言も国際人権規約をも、最も遵守すべきである第2次世界大戦の加害国日本の政府が、治安維持法のない21世紀の日本において、2つの法律をよりどころにして市民の言論・表現および思想・良心に対する弾圧をエスカレートさせ、憲法第9条の破棄を目的にしている勢力は今国会で、民意を最も反映しやすい比例選挙の定数を80議席も削減し、民主主義の息の根を絶とうとしており、この妄動は日本国民にとってのみならず国際的な脅威です。
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9月11日の閣議で、社会権規約第13条2のBおよびC項(中等・高等教育の無償化条項)留保条項の撤回を決定し、日本政府は国連に通報して批准しました!
勧告3:こどもの貧困化が急速に悪化し、昨年1年間に1000人もの子供たちが自ら命を絶っている日本において、福島の子どもたちの避難の権利を緊急かつ全面的に保障し、健康管理を抜本的に強化し、社会権規約第13条2のBおよびC項(中等・高等教育の無償化条項)の留保を即時撤回して批准せよ。
言論・表現の自由を守る会は2009年9月、外務省主催の社会権規約第3回日本政府報告書提出に向けたNGO意見聴取会に参加し、意見書を提出し、中・高等教育無償化条項の留保を即時撤回し批准することを求め発言しました。
今年2月の国会で、政府は撤回の方針を表明したにもかかわらず批准しなかったため、当会はUPR予備審査において各国の政府担当者に日本政府に対する働きかけを強めるよう勧告を提案し、ようやく批准を実現しました。
教育は社会づくりの土台であり、あらゆる政策の要です。この批准を力に、平和な世界を担う世代のために給付制奨学金実現し、大学学費の無償化や私立高等学校の就学支援金の拡充など具体的施策の実現を求め運動をさらに強めていきましょう。