山本美香さんが命がけで伝え訴えたかったことは・・・
 
 ”こどもたちを殺すな!”
”戦争をやめろ!”
 
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東京新聞 2012年8月22日

筆洗

 戦場取材というのは、自問との闘いだ、と思う。紛争地で銃撃戦に巻き込まれたことがあるが、間近に聞く自動小銃の音は腸(はらわた)を裂くようだ。戦車砲ともなれば、全身が粉砕される恐怖を覚える。そして考える。自分は何のためにここにいるのか
▼そんな取材を重ねてきた山本美香さんが、シリア内戦の犠牲になった。山本さんと十二年前、モスクワで会ったことがある。ふんわり柔らかな空気をまとった人で、アフガンからの帰りと言っていた
▼小学生向けの著書『戦争を取材する』(講談社)にその時の体験が書かれている。内戦に苦しむ人々を取材しながら、自問していたそうだ。医者なら目の前の命を救えるが、記者の仕事にどれほどの意味があるのか
▼無力感に襲われながら撮影していた彼女に、わが子を失ったばかりの父親が言ったという。「こんな遠くまで来てくれてありがとう。世界中のだれも私たちのことなど知らないと思っていた。忘れられていると思っていた」
▼撃つ側ではなく撃たれる側に立って戦場を駆けてきた。戦争の犠牲者を数字でなく、生の言葉と表情で伝え続けてきた。その著書はこう結ばれている
▼<世界は戦争ばかり、と悲観している時間はありません。この瞬間にもまたひとつ、またふたつ…大切な命がうばわれているかもしれない-目をつぶってそんなことを想像してみてください>