シリア:ジャーナリスト山本美香さん死亡 戦闘巻き込まれ

毎日新聞 2012年08月21日 08時12分(最終更新 08月21日 13時11分)
 
  カイロ前田英司、エルサレム花岡洋二】
 
 政府軍と反体制派の激しい攻防が続くシリア北部の主要都市アレッポで20日、取材活動をしていた独立系通信社「ジャパンプレス」(東京都杉並区)所属の女性ジャーナリスト、山本美香さん(45)が戦闘に巻き込まれて死亡した。山本さんの遺体はすでに隣国トルコに運び出された。外務省によると、同行していた男性からの連絡を受け、在トルコ日本大使館が身元を確認した。
 シリア反体制派組織「シリア人権観測所」によると、死亡した現場はアレッポ市北部の激戦地スレイマンハラビ地区。現地の反体制派メンバーは毎日新聞の電話取材に対し、山本さんが当時、離反兵士団体「自由シリア軍」と行動を共にしていて、「シャビーハ」と呼ばれる政府系民兵との銃撃戦に巻き込まれたと語った。山本さんはドラム缶の陰に隠れたが撃たれ、他にトルコ人記者も死亡したという。
 同行していたジャパンプレス代表の佐藤和孝さんから電話で知らせを受けた山本さんの父、孝治さんによると、空爆の取材中に銃撃を受け、首に受けた銃弾が致命傷だったという。
 
 インターネットの動画サイト・ユーチューブでは、布に包まれた山本さんとみられる遺体を横たえた車の脇で、銃を構えた反体制派メンバーが「これから日本人ジャーナリストを安全な場所に移す」と語る映像が公開された。また、銃撃後に搬送された病院内とみられる別の映像では、腕などを激しく損傷した山本さんと共に、佐藤さんが映っていた。
 シリアのアサド政権はビザの発給を含めて外国メディアの取材を厳しく制限しており、一部の報道機関やフリージャーナリストは反体制派の手引きでトルコやレバノンからシリアに入っている。
 シリアでは昨年3月に民主化闘争が本格化して以降、英紙サンデー・タイムズのベテラン戦争特派員マリー・コルビンさんら少なくとも3人の外国人記者がこれまでに死亡している。
 
 ジャパンプレスのホームページによると、山本さんは1967年生まれ、山梨県出身。95年からジャパンプレスに所属し、アフガニスタン取材などを継続。イラク戦争報道が評価されて03年度のボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞した。
 日本テレビ広報によると、山本さんは今月14日からトルコで取材を開始、16日には国境を越えてシリアに入った。その後の予定については、戦況を見ながら判断することになっていたという。20日夕方の報道番組「ニュースエブリィ」では、山本さんらジャパンプレスが取材したシリアのアザーズ付近でのVTR映像を放映した。
 
 

山本さん死亡:迷彩服の一団が銃乱射 同行者語る

 毎日新聞 2012年08月21日 13時19分
 シリアで死亡した山本美香さんと行動を共にしていたジャパンプレスの佐藤和孝代表(56)は21日午後、毎日新聞の電話取材に銃撃を受けた当時の状況を語った。
 佐藤さんによると、トルコから銃撃現場となったアレッポに入ったのは現地時間の20日。自由シリア軍に同行し、政府軍との空白地帯に入り、ドラム缶などで各所を封鎖しながら進んでいたという。
 佐藤さんは「午後3時半ごろ、前方から迷彩服を着た10人以上の一団が向かってくるのが見えた。恫愒(どうかつ)するような大きな声を上げて銃を乱射してきたので、身をかがめながら一目散に逃げた。山本さんは最初、僕の右後ろにいたが、はぐれてしまった」などと語った。
 アレッポの病院で既に死亡していた山本さんと対面したという。