<集めて分ける 社会保障と税・人口問題編> 【東京新聞・暮らし】
◆ 少子化に歯止めをかけるには?
少子化が止まらない日本。合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの推定人数、以下出生率)は一・三九(二〇一一年)と、低水準から抜け出せていない。出生率アップを遂げた先進諸外国の例も交え、日本の少子化の要因を探った。少子化に歯止めをかける対策とは-。 (宮本直子)
◆ 少子化に歯止めをかけるには?
少子化が止まらない日本。合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの推定人数、以下出生率)は一・三九(二〇一一年)と、低水準から抜け出せていない。出生率アップを遂げた先進諸外国の例も交え、日本の少子化の要因を探った。少子化に歯止めをかける対策とは-。 (宮本直子)
子どもたちの歓声が響く東京都江戸川区の行船公園。小学四年と年長の二人の女の子を育てる主婦、宮田麻津子さん(35)は「近くに公園が多く、いつも子どもがいっぱい。少子化なんて全く感じない」と笑う。
中学一年から年長までの四人を育てる主婦中谷初恵さん(49)も「子育て家庭への区の補助はありがたい。それを目当てに引っ越してきた人も周りにいる」と話す。二人とも「『もう一人ほしいな』という声をよく聞く」と口をそろえる。
江戸川区の出生率は一・三七(一〇年)と二十三区で最も高く、市区町村別データを取り始めた一九九三年からトップを維持。都道府県別で全国最下位の東京都の一・一二(二〇一〇年)、二十三区の一・〇八(同年)と比べると、江戸川区の健闘ぶりが分かる。
同区子育て支援課の岩瀬耕二課長は「子育て世代重視の区の独自策が出生率の高さにも表れている」と胸を張る。
独自策の主なものは、
▽乳児(一歳未満)養育手当=月一万三千円
▽私立幼稚園通園児保護者への補助=月二万六千円
▽中学生まで医療費無料
▽小中学校給食費の約三分の一を区が負担
-など。
ほとんどに所得などの制限がなく、全ての子育て世代が恩恵を受ける。
岩瀬課長は「都心へのアクセスがよい割に地価が安く、公園面積は二十三区一位。憩える場があり、環境面でも子育て世代には暮らしやすい」。
◇
日本の出生率は第一次ベビーブーム(一九四七~四九年)には四・三を超えていた。その後、低下し、二〇〇五年には過去最低の一・二六まで落ち込んだ。
政府は保育サービスの充実を柱に少子化対策を講じてきたものの、効果は見て取れない。
フランスでは二・〇一(一〇年)、スウェーデンでは一・九八(同年)と出生率が回復傾向にある。出生率アップを遂げた両国では、どのような施策が功を奏したのか。
フランスは、経済支援が手厚い出生促進型。
第二子から手当を支給し、子どもが増えれば加算される。税制も子どもが多いほど有利な課税方式。
一方、スウェーデンは、育児休業や保育サービスに重きを置く両立支援型。
育休中の大半の期間で給料の八割を保障。休業前とほぼ変わらない賃金水準が保たれる。保育サービスは一歳児以上なら誰もが受けられる体制が整えられている。
家族関係社会支出(国が家族手当、育児休業給付などに使った支出)の対国内総生産(GDP)比(〇七年)を比べると、フランス3%、スウェーデン3・35%に対し、日本は0・79%と約四分の一。
第一生命経済研究所主席研究員の松田茂樹さんは「子育てにお金をかける姿勢は両国に共通している。適正な負担水準を検討し、日本もその姿勢を見習うべきだ」と話す。
松田さんが「少子化の最も深刻で根本的な要因」とみるのが未婚化。
国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(一二年版)によると、生涯未婚率(五十歳時の未婚率)を四十年前と比べると、男性は1・7%(一九七〇年)が20・1%(二〇一〇年)、女性も3・3%が10・6%へと上昇している。
松田さんは「今は三人に一人が非正規雇用の時代。雇用の劣化が未婚化につながっている。経済的に不安定な非正規雇用者は結婚して子どもを育てることが難しい。賃金を上げる、正社員化するなど、待遇改善策が急務」と訴える。
『東京新聞』(2012年6月7日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012060702000129.html
パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2