転載記事   毎日新聞 2012年06月14日 東京朝刊

検証・大震災:内部被ばく検査中止要請 

福島県「不安あおる」、弘前大に昨年4月

 東京電力福島第1原発事故後、福島県浪江町などで住民の内部被ばくを検査していた弘前大の調査班に、県が検査中止を求めていたことが分かった。
 
 県の担当者は事実確認できないとしつつ「当時、各方面から調査が入り『不安をあおる』との苦情もあった。各研究機関に『(調査は)慎重に』と要請しており、弘前大もその一つだと思う」と説明。
 
調査班は「きちんと検査していれば事故の影響を正しく評価でき、住民も安心できたはずだ」と当時の県の対応を疑問視している。
 
 弘前大被ばく医療総合研究所の床次眞司(とこなみしんじ)教授らは昨年4月12〜16日、放射線量が高く、後に計画的避難区域に指定された浪江町津島地区に残っていた17人と、南相馬市から福島市に避難していた45人の計62人について、住民や自治体の了解を得ながら甲状腺内の放射性ヨウ素131を測定した。このうち3人は2度測定。検査の信頼性を高めるためには3桁の被験者が必要とされ、その後も継続検査の計画を立てていた。ところが県地域医療課から「環境の数値を測るのはいいが、人を測るのは不安をかき立てるからやめてほしい」と要請されたという。
 
 ヨウ素131は甲状腺にたまりやすく、がんのリスクを高めるとされる一方、半減期は8日と短く、早期検査しなければ原発事故の影響を把握できない。床次教授は「放射線への不安が長引いているのは当時の情報がないからだ」と指摘する。
 
 県地域医療課の担当者は「やり取りの詳細は記憶にない。弘前大以外にも県の災害対策本部として『住民の心情を察してほしい』とお願いしてきた」と説明する。だが、こうした要請の結果、事故初期段階でのヨウ素131の内部被ばくデーターはほとんど残されなかった。
 
 62人の検査データーはすでに公表され、事故翌日の昨年3月12日にヨウ素を吸引したと仮定して内部被ばくの積算量を推計したところ、5人が国際原子力機関の定めた甲状腺がんを防ぐヨウ素剤服用基準の50㍉シーベルトを超えていた。ただし現在は3月15日にヨウ素を吸引したとの見方が有力になっており、再解析が進められている。
 
 甲状腺の内部被ばく検査を巡っては、国の原子力災害対策本部も3月下旬、飯館村などの0~15歳の計1080人に実施したが、これはヨウ素を直接測ることができない簡易式の検出器だった。【町田結子】
  

 ◇行政側から依頼を  東京工業大の松本義久准教授(放射線生物学)の話

 住民感情を逆なでするから調査を控えてというのではなく、信頼できる大学や研究機関に行政側から協力を依頼する体制を平時から整えておくべきだ。
 
 
 
JRFS 資料ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
社会権規約  経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会
  2001924
第2回日本政府報告書審査 経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解 :主な懸念される問題とそれに対する勧告(抜粋) 
 
パラグラフ22 委員会は、報告された原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念をする。
【勧告】パラグラフ49 委員会は、原子力施設の安全性に関連する問題に関し周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進することを勧告する。さらに、締約国に対し、原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを要求す