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white rose (photograph;cat)
 
 
金融・労働研究ネットワーク HPより
Institute for Finance and Labor in Japan 
 
 
 コラム 紹介
 中央労金の小林寿太郎さんからのコラムです。
小林さんは東京労金労組(現中央労金労組)の機関紙を担当していたころから、銀労研の「ひろば」や「調査時報」に原稿を執筆してきた方です。
原発稼動反対の声を、宮本百合子の『貧しき人々の群れ』と結びつける視点は、読書家の小林さんならではです。(2012年4月23日up)
 
 『貧しき人々の群れ』舞台で「原発NO!」1万6千人
                                           小林寿太郎
 
福島県郡山市の開成山公園で開かれた「原発いらない3.11福島県民大集会」に友人たちと参加した。
郡山と言えば宮本百合子が17歳の時に発表した白樺派風の名作「貧しき人々の群れ」の舞台として知られている。
百合子の祖父中條政恒が中心となって推進した安積疎水建設と開拓事業は、
荒涼たる安積原野を日本有数の一大穀倉地帯とした士族授産事業として歴史的大事業だった。
また農業だけでなく、工業・発電なども目覚しい発展をとげた。
しかし多くの開拓民たちは、極貧の中で仕事と生活に追われることになった。
「貧しき人々の群れ」は、
日本資本主義形成の資本の原始的蓄積の中で生きた人々の現実を生き生きと描き出している。

私は安積疎水を建設し、産業発展に尽力した中條政恒と、産業発展の過程で極貧の生活をおくった人々を描写して、我々にその時代の現実を教えてくれる孫娘の宮本百合子の両方に深く感謝しなければならないと思う。
郡山市役所に隣接する開成山公園は、この事業の中心地であり、園内には中條政恒と官本百合子の両方の記念碑がある。
開成山公園の広大な敷地内は、放射能除染が終っているが、
それでもなお園内の検出器には2マイクロシーベルトという高い放射能が表示されており、
原子力災害というものが、一度起きるともう取りかえしができないものであることを実感した。

また公園の中心にある大きな池は、地震のため土手が崩れまだ修理中で、
水位も低く水鳥もあまりいなかった。

集会は園内の野球場で開かれ、1万6千人が参加したということだった。
郡山の寒さは厳しく、静岡など暖かいところから来た人たちは本当に寒そうだったが、
集会の熱気はすごかった。

福島県民を代表して、主婦、高校生、農民、漁民がスピーチをしてくれた。
 
女子高校生の放射能汚染で人命が危機にさらされているのに経済だとか電力の心配をしている場合ではないという訴え、
農民の心をこめてつくった農産物を出荷できないと言う無念さは、補償金などではつぐなえないという訴えなどを東電、国、原子力産業、御用学者などの連中はどのように受け止めているのだろうか。
原子力災害が起きるまでは、事故は絶対起きないと嘘をつき、
事故後、放射能に汚染されても心配はいらないと再び嘘をつく連中を許すことは絶対できないと思った。

しかし「原子力帝国」は極めて強固なので脱原発は決して容易ではない。
そのあいだに次々に原子力発電所が大事故を起こすのではないかと心配になった。
夕方、デモが出発すると会場出口付近には警備公安警察の捜査員と少し離れたところに公安調査庁の係官が監視していた。
(互いに仲が悪いので一緒にはいない)
この連中は、デモ隊から東電を逮捕しろ、と言われて体裁が悪そうに頭をかいていた。

『地震は止められない、しかし原発は止められる』
というスローガンがこの問題の本質を言い当てていると思った。
 
 

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