毎日新聞夕刊 2012年04月25日

AIJ:基金側から一斉聴取 実態解明本格化 警視庁

 AIJ投資顧問による企業年金消失問題で、警視庁がAIJと契約する厚生年金基金への一斉聴取を始めたことが捜査関係者への取材で分かった。同社の浅川和彦社長(59)は国会の証人喚問で虚偽の運用実績を示して顧客を勧誘していたことを認めたが、「だますつもりはなかった」と一貫して主張している。警視庁は証券取引等監視委員会などと連携し、浅川社長らの勧誘方法や取引の実態を調べ、詐欺容疑での立件の可否について検討を進めるとみられる。
 
 この問題を巡っては、監視委が先月23日、同社などを金融商品取引法違反(契約の偽計)容疑で強制調査。警視庁も事情聴取を始めたことで、巨額の年金を消失させた浅川社長らの刑事責任を追及する動きが本格化する。
 監視委のこれまでの調べでは、浅川社長らが09年以降、新規顧客からの受託資金を本来の私募投資信託に回さず、解約顧客への支払いに充てていたことが判明。この際の投資信託の販売額は虚偽の運用実績に基づいて水増しされた価格だったという。
 
 捜査関係者によると、監視委は強制調査で押収した資料の解析を進める一方、こうした自転車操業的な取引が詐欺容疑に当たる可能性があるとして、警視庁に資料の一部を提供するなど情報交換を行ってきた。
 
 警視庁側も担当班を置き、情報の分析を進めてきたが、詐欺容疑での立件の可否を検討する上で、顧客側から事情を聴く必要があると判断。参院で浅川社長らの証人喚問が行われた24日に複数の基金の担当者からAIJの勧誘の実態などについて事情を聴いたという。警視庁は今後、同社と契約していた残りの基金への聴取を進め、AIJの取引の実態解明を進めるとみられる。
 
【前谷宏、浅野翔太郎】
 
 

AIJ:傘下の証券取締役辞任 03年運用実績を疑問視

毎日新聞 2012年04月25日 11時32分
 AIJ投資顧問の年金消失問題で、同社傘下で運用ファンドを販売するアイティーエム証券(ITM)の取締役が04年ごろ、ファンドに損失が出ているのにAIJ側が運用実績を「好調」としていることに強く反発し、辞任していたことが分かった。ITMの西村秀昭社長はこれまで、ファンドの巨額損失に気付かず、AIJの示す運用実績を信用していたなどと国会で証言しているが、その証言に疑問が生じた。
 参院財政金融委員会での24日の証人喚問で明らかになった。
 この元取締役は西村社長と同じ国内大手証券会社の出身で、ファンドの開発を担当。AIJの主力商品となる「AIMグローバルファンド」の02年の開設にも関与した。
 証人喚問での西村社長の説明や関係者の話によると、元取締役は、監査法人から送られた実際の運用成績を反映したファンドの監査報告書を03年9月に見て、AIJの示す数字との食い違いに不信感を抱いたという。