転載
銀行労働研究会の成果とネットワークを継承し、
金融労働者と金融研究者が交流するための
新しいフォーラムを立ち上げましょう
高田太久吉(金融研究者)
銀行労働研究会(銀労研)は、長い間関係者の献身的な努力に支えられて、金融分野の労働者・労働組合のために継続的・系統的に収集整理された情報を提供し、さまざまな交流の機会を提供してきました。銀労研は私たち金融研究者にとっても、金融産業の現場を理解するのに欠かせない非常に重要な情報源であると同時に、研究者が金融分野の労働組合で活動する人たちと直接交流できる、貴重な機会を提供してくれました。
銀労研には、何十年にもわたる金融労働者の運動成果が無形の財産として蓄積されており、関係者の運動と交流をささえてきた多くの人々のネットワークもまたかけがえのない財産となっています。この意味での銀労研の成果と財産をこのまま歴史に埋没させるのではなく、今後の労働者の運動と研究者の研究活動に引き続き活用できるように、可能な形で継承し、さらにより豊かなものにしてゆくことは、私たち研究者の立場からも強く念願
するところです。
2007年に発生した世界的な金融危機と、これが世界経済と世界中の市民・労働者の生活に及ぼした甚大な影響は、私たち研究者にも、現代の金融市場と金融産業の構造と運動、これらの健全な発展に責任を負う政府・監督機関の政策について、これまで以上に正確で洞察に富む解明を迫っています。
また、今回の東日本大震災とこれに伴う津波ならびに原発事故の大惨事は、私たちの国の金融産業が、広域かつ壊滅的被害を受けた被災地の復興と長期的な発展のために、民間営利企業の限界を超える社会的で積極的な役割を果たさなければならないことを明らかにしました。
私たちがこのような課題に取り組むためにも、金融分野で働く人たちと金融研究者との開かれた交流の機会をこれまで以上に広げ、大切にすることが必要です。そうした意味で、この度、銀労研の活動を継承する研究会の立ち上げを提案されたことは、まことに時宜にかなう重要な提案であると受け止めています。
私としても、これまで銀労研の活動を支えてきてくださった方々の一人でも多くが、提案の趣旨に賛同し、可能な形で協力と支援を提供してくださることを念願する次第です。
金融・労働研究ネットワーク準備会は1月21日、東京千代田区の厚生会館ホテルで「『金融・労働研究ネットワーク』設立の集い」を開催しまし。「集い」では、東京法律事務所の上条貞夫弁護士から「金融・労働研究ネットワーク設立の意義―銀行労働研究会の継承発展」と題して記念講演を受けました。
上条弁護士は、講演の中で戦後の金融労働運動をふりかえり銀行労働研究会が『銀行労働調査時報』『ひろば』(2誌は2000年に『金融労働調査時報』に統合)の発行と、研究会活動を通じて果たしてきた役割を解説。銀行労働研究会の運動の蓄積を「金融・労働研究ネットワーク」に継承させていくことの意義を訴えました。
上条弁護士の講演を受けて、「集い」に参加した研究者、労働組合活動家はそれぞれの研究活動や、組合運動の経験と銀行労働研究会とのかかわりを紹介。運動の中で研究活動を継続し交流する場を確立していくことの意義が確認されました。この「集い」で、金融・労働研究ネットワークが設立され、代表に高田太久吉中央大学名誉教授が就任。運営委員として合田寛氏(政治経済研究所)、鳥畑与一教授(静岡大学)、平澤克彦教授(日本大学)、忍田年勝氏(金融労連副委員長)、千葉史人氏(金融労連中執)、事務局長に田中均氏(元銀行労働研究会)の就任が確認されました。