転載記事
毎日新聞夕刊 2012年3月24日
AIJ:「UFO」と分析会社報告 運用実績成り立たずと
金融商品取引法違反容疑で強制調査を受けたAIJ投資顧問の運用手法について約3年前に疑問視した別の投資顧問会社が投資分析会社に解析を依頼したところ「運用実績が成り立たないUFO(未確認金融機関)」と報告されていたことが分かった。また、AIJは「リスク管理のため独自の指数を用いている」と説明していたが、金融関係者は「指数は実態を伴っていない」として信用性に疑いがあったと指摘している。
【松田真、町田徳丈、松本惇】
別の投資顧問会社は08年のリーマン・ショック後、相場変動が大きい状況でもAIJが収益を上げたとしている点を疑問視。コンピューターを使って投資手法などを数学的に解析する分析会社にAIJの運用実績記録を送付し、運用が成立するかの調査を依頼した。
当時、AIJは金融派生商品「日経225オプション」のプット(売る権利)の売りを中心とする投資信託を展開しているとして勧誘していたが、その運用手法では相場が大きく変動して想定より下がった場合、多額の損失を出すことになる。
分析会社はリーマン・ショックなど実際に起きた経済状況下でAIJの唱えるオプションの売り戦略を採用した場合にAIJが示すような運用実績になるのかを解析した。その結果、09年2月に「UFO(Unidentified Financial Organization=未確認金融機関)」と題する報告書を作成。その中で「こんな運用は成立しない」と指摘した。
分析を依頼した投資顧問会社の幹部は「我が社の分析も同じだった。AIJの運用成績は作られたものだと確信した」と振り返る。
また、AIJは安定的に収益を上げられる背景として、販売資料で「リスク管理については独自に開発した『MI指数』などを駆使」と説明。同指数は0から100までの数値とされ、販売資料には日経225とMI指数の推移を比較したグラフを掲載していた。
AIJの浅川和彦社長は顧客に「MI指数は利益を出し損ねないよう売り買いのタイミングを計るもの」と説明。指数のグラフが「雲のような形になったら、売り」などと案内していたという。
関係者によると、この指数について浅川社長は「指数を開発した役員とファンドマネジャーの頭文字から付けた」と説明していたという。関係者は「実態を伴っていなくても何とでも名前を付けられる」と話している。