津波で全校児童の七割に当たる七十四人が犠牲となった宮城県石巻市の大川小学校が十七日、間借りしている市内の飯野川第一小で卒業式を開いた。卒業を果たせなかった児童の遺族が、特別に卒業証書を受け取った。当時の五年生十五人のうち六人が死亡し、二人が転校。卒業生は七人となったが、学校は遺族にも式典の案内状を送った。
 
 次女千聖(ちさと)さん=当時(11)=を失った建設業紫桃(しとう)隆洋さん(47)は妻、長女と出席した。「みんなと一緒に卒業できて、千聖も喜んでいると思う」
 紫桃さんの地区にいた児童は女子三人だけ。千聖さんは学年が一つ上の二人と仲が良く、「六年生になりたくない。卒業して早く中学生になりたい」と話していた。その二人も津波で亡くなったという。千聖さんの兄、姉がバレーボールをしており、中学でバレー部に入ることも楽しみにしていた。
 大川小では地震から避難開始まで時間がかかり、学校は今年に入り「危機意識が低かった」と認めた。「対応に問題があった学校の校長から証書を受け取りたくない」と紫桃さん。姉の朋佳さん(14)が柏葉照幸校長から受け取った。
 
 「前を向いて行きましょうって言われっけど、どこが前だか分がんね」。一年たっても無念の思いは消えない。
 
 式典は非公開。卒業証書を渡すほかは、黙とうや追悼行事をしない。柏葉校長は「一昨年までの式の流れを基にした。追悼行事は(校内で)話題にならなかった」と話している。
 文部科学省によると、卒業は六年間の課程を終えないと認められないが、学校の判断で卒業証書に代わるものを渡すことができる。 (荒井隆宏、竹田佳彦)