検査妨害:振興銀の木村元会長に有罪判決 東京地裁
不都合な電子メールを削除し金融庁の検査を妨害したとして、銀行法違反(検査忌避)に問われた日本振興銀行(10年9月に経営破綻)の元会長、木村剛被告(49)に対し東京地裁は16日、懲役1年執行猶予3年(求刑・懲役1年)を言い渡した。登石郁朗裁判長は元会長が元社長らに削除を指示したと認定。「金融庁顧問として金融検査マニュアル策定に関わりながら、組織的に検査の実効性を失わせる行為に及んでおり悪質だ」と非難した。
判決によると、元会長は元社長らと共謀し09年の検査に際し、経営破綻した商工ローン大手「SFCG」からの多額の債権買い取りなどを金融庁に把握されて行政処分を受けることを回避するため、検査官の閲覧用サーバーから計723通のメールを削除。検査官に「人的ミス」とうそを言い、検査を妨害したとされる。共謀した元社長ら3人は懲役6月執行猶予3年の有罪判決が確定している。
元会長側は起訴内容を認めつつ「削除は『中身をよく確認しておくように』との指示を受けた元社長らが各自の判断と責任で行った」などと積極関与を否定した。しかし判決は「削除を指示された」との元社長らの証言の信用性を認め、元会長の影響力や立ち入り検査への対応を検討する会合の開催状況などを考慮。指示の存在を認め「多くは概括的なものだが、指示があったからこそ元社長らは削除に及んだ。元会長の関与は積極的で主導的だ」と結論づけた。
判決は動機について「元会長は前回検査で振興銀経営に検査官の不当介入があったと認識しており、立ち入り検査に強い不信感や警戒心を抱いていた」と指摘した。
【和田武士】
毎日新聞 2012年3月17日朝刊