ふなしん(旧船橋信用金庫)破たんから10年目の本日125日、
 出資金返還訴訟原告団と支援者が、出資金の一刻も早い全額返済を求めて、
最高裁と金融庁に要請を行いました。
 
最高裁判所 第一小法廷
横田尤孝 裁判長
2012125
ふなしん出資金返還訴訟原告団
                 
ふなしん(旧船橋信用金庫)出資金返還訴訟 上申書
  
原告の命のあるうちに、
憲法と国際人権規約に照らした公正な裁判で、
一刻も早く出資金の返還を命じる判決を出してください。
 
本日125日で、2002年に船橋信用金庫(ふなしん)の大木淳良元理事長が金融庁に破綻申請を行い、金融庁が破たんを発表してから丸10年になります。
この破たんの結果、預金は全額東京東信用金庫(ひがしん)に引き継がれた一方で、出資金は1円も出資者に返還されないという事態が起こり、裁判に勝った原告に対しても預金保険機構も未だ1円も返還していません。
19日に習志野市内で私たち原告団と支援者の学習会を開き、ふなしんに出資したお金をどう働いて積み立て、どうやって出資を勧められたのか、その経緯と、破たんから裁判を決意して原告となってたたかってきたこれまでの裁判を振り返り交流しました。
 
この19日は、ふなしん本店のすぐそばにお住いの原告の○○さんの告別式でした。上告人◆◆さんのお母様で享年72歳でした。障害者ゆえにご自身も大きな出資金の被害にあい、教員で超多忙な娘さんから預かっていた生活資金をも被害にあわせてしまったために、強い責任を感じて、地裁では車いすで証言台で証言しました。その後は、裁判傍聴もできず、入退院を繰り返されていました。昨年の暮れには、退院したばかりにもかかわらず、やっとのことで、傍聴に参加できない侘びと一日も早い返還を願う手紙を書いてくださり、事務局に送付いただいたばかりでした。
もし、すでに出資金が尾藤さんの手元に返還されていたなら、精神的な苦しみから解放され、ヘルパーの訪問時間も回数も増やすことができ、気持ちのゆとりもできて安楽に暮らすための介護と医療のサービスを十分に活用することができて、こんなに早すぎる死に至ることはなかったと確信しています。
 
私たち原告団は、東京高裁でも出資金返還が認定されず最高裁に上告した12人の原告とともに、憲法と国際人権規約違反のふなしん出資金被害について、一刻も早く命あるうちに出資金の返還救済命令を出していただくことを求めて再度要請します。
 
裁判長と裁判官のみなさん、原告には、もう時間がありません。
 
私たち、ふなしん出資金返還訴訟の原告は、国と船橋信用金庫および大木元理事長ら3名の代表理事を相手に千葉地裁に提訴し、20096月に一部勝利判決を勝ち取りました。また、昨年20117月に東京高裁も、一審判決を維持して、過失相殺も一切認めず20001221日の理事会以降に出資した原告に対して原告数・被害総額共に7割の44人・7200万円の出資金を返還することを、ふなしんとふなしん元理事らに命令しました。
この判決を受けて、私たち原告団は、被告に対して早期解決を求め、20001221日以降の被害についての上告を断念するよう要求し、勝利判決分を確定させました。
しかし、判決から半年以上経ちましたが、元理事らも預金保険機構も未だに出資金返還の手続きに入っておらず、出資者には未だ1円も返還されていません。
 
この10年間の長きにわたって、原告は生活の糧である出資金を奪われたまま、財産権も幸福追求権も自己決定権をも奪われ続け命も落としてしまいました。
被害にあった出資金は、汗水たらして命がけで働いたお金です。
不労所得の株で儲けたお金とは違います。
パートで働いた給料を毎月積立てて満期になった老後の資金や、体を酷使して寒い冬も夜明け前の2時に起きて、二つの弁当をもって船橋漁港から海に出て暗くなるまで命がけで働いてためた生活資金です。
原告の大半が高齢者で、その多くが病のために外出することすらできません。
この事件によって心労と生活費の乏しさから、受けられるはずの介護や医療を欠くこととなり、そのことによってさらに障害を進行させ重症化させ、原告の健康に生きる権利:生存権が脅かされ奪われている中で、原告は一刻も早い全面的解決によって出資金が全額返還されることを求めています。
 
政府・金融庁は2002年までに、不良債権早期処理の名のもと、全国で約60近くの信金信組を破たんさせました。その中で出資金が1円も返還されなかったのはふなしんと大阪の相互信用金庫の2つだけです。被害者は困難な中、出資者名簿を開示させ、大阪と連帯して学習会を開催して提訴を準備し、千葉県の原告団は大阪に1年遅れて、2004530日に千葉地裁に提訴してもう9年目になります。
 
昭和6年の創業から70年を超えていた老舗の信用金庫だったふなしんは、地域住民や商店・事業主たち、PTAのお母さんたちからも愛着とともに大変大きな信頼がありました。出資者は、日掛けの時から長年の付き合いの中で、地域に根ざし良心的で家族同然のように信頼していたふなしんの職員から、「利率がいいから」「定額預金のようなもの」と勧誘され、ゼロ金利の中で、2002年4月のペイオフ予定の不安もあり、多額の出資をしたために今回の甚大な被害にあいました。その際、出資についてのリスクはもちろん、法律が改悪されて破たん時に出資金が保護されなくなったことについても、全く説明がありませんでした。
 
千葉地裁段階では、国もふなしんも、証拠をほとんど出さないために、裁判の進行には膨大な時間がかかってしまいました。そのため、控訴審ではふなしんとふなしん元理事らのみを相手に裁判をすることとなりました。
ところが、一審でふなしん側が負けたため、控訴審ではふなしん元理事らは証人申請を行い、それまで『ない』と隠していた重要証拠を出して証言しました。
この証拠から、1998年(平成10年)度末には61億9800万円だった、ふなしんの有価証券残高が、翌年には103億2800万円と急激に増加し、その2割=20億円もの損失を出していたことが明らかになりました。
また、1999年(平成11年)度には違法な『バックファイナンス』(約7億円)で損失隠しまで行っていたことも明らかになり、私たち原告はふなしんの経営実態が極めて悪かったということを初めて知ることとなりました。
ふなしん破たん時の債務超過額は15億円です。20億円もの巨額の損失が、ふなしんの命取りになったことは明らかです。金融庁から天下りした大木理事長と理事らが違法行為により、この損失を隠していたことは重大問題です
まさに、本件は刑事罰を問われるべき事件です。
理事長と理事らは、実質債務超過でふなしんの「破たんの具体的・現実的危険性」があることを認識していたにもかかわらず、そのことを一切説明しないまま、出資金増強月間を設けて自己資本比率をあげて、これを破たんするまで2次にわたって繰り返したのです。
理事長の説明責任については、2001年に作成したふなしんのパンフレットの31ページに、「信金法に基づくディスクロージャー項目の単位ベースのディスクロージャー項目」として『金庫の主要な事業に関する事項』から『有価証券についての取得価格または契約価格、時価及び評価損益』などと書いてあります。
大木淳良元理事長は1981年まで大蔵省の職員で、帯広財務事務所長、東北財務局理財部次長、北海道財務局理財部長を歴任してきた人物であり、この説明責任について知らないはずがありません。
 
出資金の勧誘の時に、定期のようなもので利率がいいからとしか説明をされなかった出資者も、もし「危ない」と聞かされていれば、聞いた時点で、ただちに出資を断わり、解約の手続きをする判断力も行動力もありました。しかし、被害者である原告の誰一人として経営状況については全く知らされず、勧誘した職員すら被害にあっているのです。
一方、経営が危険な状態にあると知り得た半田博理事の身内等には、破たん以前にその危険が知らされて、解約していた出資者もいると聞いています。
地裁の堀内裁判長は、限られた証拠の中から、少なくとも2000年(平成12年)12月21日の理事会で、理事長と理事らが破たんの危険性を明確に認識していたとして、この日の理事会以後の出資者のみを救済しました。
しかし、高裁で明らかになった上記の証拠から見れば、被害認定を2000年12月21日以降の被害者に限定することには道理がなく、2000年12月21日以前の第一次出資金増強月間による被害者も同様に救済されるべきです。
ふなしん破たんの記者発表が行われた当夜には、千葉財務事務所も記者会見を行い、ふなしんの事業譲渡先が東京東信金(ひがしん)の予定であると発表しています。
破たん後の債務者切り分け作業には、ひがしんの職員も入っていました。
そして、ふなしんは同年6月には900億円近くの持参金付きで“ひがしん”に譲渡されました。
 
なぜ金融庁は、たったの15億円の債務超過でふなしんを破たんさせて、ひがしんには900億円近くもの多額の持参金をつけて譲渡したのでしょうか。
なぜ金融庁は、ひがしんに出資金を引き継ぐように指導をしなかったのでしょうか。
 
そもそも金融庁が、大銀行と同じ基準でふなしんの検査をしたことにも重大な問題があります。
全国で60もの信金信組を破たんさせた後20026月に、金融庁はやっと中小企業融資編の金融検査マニュアル別冊を発表しましたが、これは遅きに失したと言うよりも、そもそも信金信組は、国際間の競争に打ち勝つための都市銀行とは役割が異なり、地域経済の担い手として、金融庁が守り育てるべき金融機関です。
しかし、金融庁は、地域経済を壊すために労働組合が地域に根ざしている老舗の信用金庫を嫌悪して、これをつぶすことを目的に金融庁の天下りの役員らとともに都市銀行用の検査マニュアルをおしあてて、60もの信金信組を破たんさせました。このことも、責任者が刑事罰を問われるべき事件だと考えます。
 
ふなしんの破たん直後に、私たちの道理ある要求と提案に基づいて、ふなしんの本店と支店所在地であった船橋市、習志野市、八千代市、市川市、佐倉市、鎌ケ谷市、松戸市の7市長が連名で、出資金保護を求める要請書を、政府(金融庁)および信金中金と千葉県知事等に提出して下さいました。裁判に提訴した後、現在においても、各市の市長や市民経済部等のみなさんからは、個人の財産を守る観点と共に、地域経済を守る重要な問題として、裁判への大きな関心とご支援をいただいております。
 
 1979年に、日本政府は国際人権規約(自由権規約・社会権規約)を批准しています。
本件は、憲法違反であると共に、国際人権規約:社会権規約及び自由権規約第1条に違反しています。国際条約の活用を主張する前提は、国際条約が特に国内法化の手続きを経なくても、条約の内容が自動執行力があると認められるかぎり国内法的効力を有する、という一元的解釈が通説です。
 
最高裁判所におかれましては、一刻も早く、本件を憲法と国際人権規約に照らして公正な裁判を行い、ふなしんとふなしん元理事らの不法行為を断罪し、原告の命のあるうちに、汗水流して蓄えた老後の資金である出資金全額の返還を命じる判決を出してください。
                                              以上