=処分1次最高裁判決=
 
★ 都教委の暴走に歯止めをかける
弁護士 加藤文也

 さる一月一六日、最高裁判所第一小法廷(金築誠志裁判長)は、教職員167名が訴えていた処分第一次訴訟に対し、減給処分については都教委に裁量権逸脱・濫用があり違法であるとしてその取り消しを認めた高裁判決を維持し、原告ら一部勝訴の判決を言い渡しました。
 同日、上記判決の外、関連する2つの事件の判決の言い渡しがあり、そのことも含め判決内容については、翌日の新聞報道でも大きく報じられておりますが、上記最高裁判決は、最高裁が東京都の教育行政の暴走に歯止めをかけたものと言え、実質勝訴と評価すべきものです。
 減給処分の取り消しが認めたられた渡辺さんも記者会見で述べているとおり、これは、訴訟を提起した皆さんで勝ち取ったものといえる内容を持つものでした。
 宮川裁判官は原審の大橋判決の戒告処分の取消しも維持すべきとの反対意見を書いておりますが、多数意見は、原審判決を変更し、原告ら教職員の受けた処分の大部分を占める「戒告」が懲戒権の逸脱・濫用にならないとしており、この点は批判しなければなりません。


 しかし、5名の裁判官全員一致で、「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては、本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」とした上で、過去に職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に減給処分を選択した都教委の判断は、重きに失するとして、その取消しを命じております。
 減給以上の懲戒処分を違法としたことは、きわめて重要な意義を有するものであり、最高裁が東京都が実施してきた「国旗・国歌強制システム」を断罪したものというべきです。
 今回の最高裁の判断内容は、東京のみらず、大阪などの状況をも踏まえて、行政の暴走に、司法の側から歯止めを掛けようという姿勢が窺われ、最高裁が司法の役割を果たしたものとして評価されます。実際、判決の翌日の新聞報道では、大阪府知事は、条例の見直しについて言及しております。

 今回の判決の他の訴訟についての影響に関してですが、宮川裁判官は、反対意見のなかで、教育公務員の教育の自由について論じております。教育公務員は、教育の目的実現のため、教育の専門性を懸けた責任があるとともに、教育の自由が保障されること、普通教育においても、公権力によって特別の意見のみを教授することを強制されることがあってはならないのであり、教授の具体的内容及び方法についてある程度自由な裁量が認められるとし、旭川学力テスト事件大法廷判決を引用しております。その上で、国旗および国歌の教育について具体的に論じております。
 残念ながら、上記のような論じ方をしたのは、宮川裁判官だけでしたが、予防訴訟(同じ最高裁第1小法廷に係属中)において、全裁判官で、教育の自由について論じられるようにすることが今後の課題と考えます。
 今回の最高裁判決は、厳しい状況のなかにあっても、持続した闘いを続けることにより、状況を切り開いていくことが出来ることを示したものといえます。ともに更に闘いを続けて行きましょう。

 予防訴訟をすすめる会『おしつけないで63号』(2012/1/21)

※『東京「君が代」1次訴訟 最高裁判決文』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116162214.pdf
※『河原井・根津06年停職処分取消訴訟 最高裁判決文』

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116143405.pdf
 
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