毎日新聞
原爆症訴訟:4人を新たに認定
大阪、京都、兵庫の被爆者5人(1人については遺族)が国に原爆症認定申請の却下処分取り消しを求めた訴訟の判決が21日、大阪地裁であり、4人を新たに原爆症と認定した。
山田明裁判長は、内部被ばくによる身体への影響について「一時的な外部被ばくと異なる性質があり得る」と異例の言及をした。
03年に始まった原爆症認定を巡る一連の集団訴訟は、実質的に終結した。
判決は、兵庫県の高松幸子さん(69)の右眼動脈閉塞(へいそく)症について「喫煙歴はあるが、放射線の影響が否定されるものではない」と述べ、同種訴訟で初めてこの疾病を原爆症と認めた。一方で、胃腺腫を患った大阪府の男性(86)の請求は退け、3人の国家賠償請求(1人300万円)も棄却した。
訴えていたのは広島、長崎で被爆した69~86歳の男女4人と、死亡した男性原告1人の訴訟を承継した遺族。5人のうち3人は爆心地から1.2~4キロで被爆し、2人は原爆投下後に被爆地に入った入市被爆者だった。
この訴訟では他に、国の再審査で原爆症と認定された男女2人が国家賠償を求めていたが、判決はこれも退けた。
集団訴訟は03年に始まり、17地裁で306人が提訴。国側の敗訴が相次ぎ、国は08年4月、原爆症認定要件を緩和した新基準の運用を始めた。政府と被爆者側は09年8月、訴訟終結に向け、原告全員救済などを盛り込んだ確認書を交わしたが、新基準でも認定されない被爆者らが新たに訴訟を起こしている。
勝訴した4人と弁護団は会見で「判決は現在の国の認定行政が著しく誤っていることを示した」と話した。
04年に動脈閉塞症を発症し、右眼の視力を失った高松さんは「長くかかったが、後に続く他の被爆者のためにも認められてよかった」と涙を流した。
全国弁護団連絡会の宮原哲朗弁護士は、これまでの集団訴訟で国の敗訴が相次いでいることを踏まえ「今回の判決内容は、司法判断との乖離(かいり)を埋めない行政に対する明確な批判だ」と話した。【牧野宏美】
毎日新聞 2011年12月22日 朝刊