大株主:配当課税「回避」相次ぐ 保有比率引き下げ 優遇措置廃止受け

 上場株式の配当などにかかる税率を軽減する「証券優遇税制」を巡り、株式の3%以上を保有する大株主に対する配当課税の優遇措置が廃止された10月を境に、保有比率を3%未満に引き下げる株主が相次いでいることが29日、明らかになった。保有比率を引き下げて節税を試みているようで、同日の参院財政金融委員会で共産党の大門実紀史氏は節税額が33・6億円に上るとの試算を示した上で、「課税逃れだ」と指摘。安住淳財務相は「事実だとすれば、大変残念だ」と答弁した。
 
 証券優遇税制は、株式の配当や譲渡益にかかる税率を本来の20%から10%に軽減。配当金に関しては、発行済み株式の5%未満を保有する株主が優遇対象だったが、10月1日から3%未満に引き下げられた。保有比率が高いオーナー経営者などは経営参画目的で株式を保有しており、市場活性化という優遇税制の目的からは外れるためだ。優遇対象にならないと、ほかの所得と合算した上で税率が決まるが、高所得者が多いため、所得・住民両税合わせて50%の最高税率が適用されるケースが多いとみられる。
 
 しかし、この「増税措置」に伴い、上場企業の大株主の間で、保有比率を3%未満に下げるケースが続出した。ある電子部品大手の創業者の場合、今年3月末時点で株式を約3・6%保有していたが、9月末時点では約2・9%に低下。大門氏らの調べによると、今年1月以降、3%未満に引き下げた大株主は延べ268人で、年間配当額は約112億円。このうち、3%以上を保有していた場合に想定される納税額と3%未満に引き下げた後の納税額の差額33・6億円が節税された可能性があるという。【小倉祥徳】
 
毎日新聞 2011年11月30日 東京朝刊