たんぽぽ舎です。【TMM:No1252】 転送歓迎
◆ 地震と原発事故情報 その237 ◆
4つの情報をお知らせします(11月17日)
★1.肥田舜太郎(広島原爆被爆医師)氏の発言-低線量被曝の時代を生き抜く
◯1945年8月、私は広島陸軍病院に勤務していました。6日朝は6キロ離れた村に深夜往診をして幸い原爆の直爆死を免れました。
それから65年間、私は多くの被爆者を診察してきました。直爆を受けた人々の死は壮絶でした。火傷や外傷とともに、発熱、紫斑、目、鼻、口、陰部を含む体中からの出血の急性原爆症で死んでいったのです。
しかし、医師である私にさらに強烈なショックをもたらしたのは、あとから入市した人々が似たような症状を呈して死んでいった姿でした。
以来私は、生涯、不明の病気で苦しんだ、放射性物質を体内に取込んだ内部被曝者を数多く診察しており、彼らこそ核の時代の最大の被害者だと感じてきました。
◯ところがマッカーサー将軍が、原爆被害を米軍の軍事機密に指定し、被爆者には「喋るな、書き残すな」と命じ、医師、学者には被害の研究を禁止して、違反者は重罪に処すと宣言したため、占領下の7年間、被爆者は放置されたままにされました。
さらに、1949年に廣島と長崎に設置されたABCC(後の放射線影響協会)が、「内部被曝は放射線が微量で、人体には全く無害」と強力に宣伝したため、「だるさ」を訴える内部被曝者の慢性症状「ブラブラ病」は神経症状とされ、中には仮病とまで言われて、被爆者の苦しみをさらに広げました。
◯私は原発労働者の中にも、ぶらぶら病の症状を呈した患者を診たことがあります。電力会社は今までたびたび放射線の放出を伴った原発事故の直後に「健康に影響がない」と発表してきました。医師でもないのに電力会社の責任者がなぜそのようなことが言えるのか。真面目に言っているとしたら茶番です。
今回の福島原発事故でも、労働者三人が亡くなっていますが、電力会社は放射能との因果関係を否定しています。どのような根拠で否定できるのでしょうか。
実際私の元には、数百人の相談者が既に来ており、鼻血、下痢、発熱、甲状腺の腫れ、紫斑の出ている子どもも出ています。福島や東北地方はもちろん、東京を含む関東、遠くは山梨県や静岡県からの相談もあります。
子供さんに放射線被害の初期症状がでた福島や関東平野の母親は、これから、どう生きたらよいのか深刻に悩んでいます。放射能は自分の家族だけの安全を許しません。
人類にとって唯一の生き延びる道は原爆、原発を全廃することだけです。ありがとうございます。
◇(編集部より)
この文章は、11月15日の記者会見(午後)の時に配布された肥田(ひだ)さんの文章です。夕方からの「スペースたんぽぽ」での講演内容と同趣旨ですので、参加されなかった方のために掲載しました。
なお、11月15日の講演での4人の発言(肥田舜太郎さん、竹野内真理さん、佐藤幸子さん、梅田隆亮さん)の内容を含んだDVDは、10日ほどで完成する予定です。ご希望の方はたんぽぽ舎あてご連絡下さい。
(DVD1枚1000円、送料1枚80円、合計1080円)
★2.<テント日誌 11/16(水)>
広がりを見せる「みんなの反原発ひろば」
― 経産省前テントひろば 67日目 ―
今日の経産省前テントひろばは、平和な一日でした。
寒さの厳しい朝にかかわらず、9時過ぎから座り込みを始める人がおり、ひとり、またひとりと増えていきました。お昼ころには7人くらいが座り込んでいました。
愛知から来た男性は用事のついでに寄ってくださり、お菓子の差し入れも。反原発のステッカーを置いていってくださいました。
日中は、毛布や手袋の差し入れも頂き、大変ありがたかったです。寒さが厳しさを増す中、風雨に弱いテントをいかに補強し、宿泊や集会を快適に行うことができるかが課題です。
午後18時ころには、東京電力本社前にて「TEPCO kills US」というテーマで、反原発パフォーマンスをしたアーティストの方々(主催は、「原発いらない全国の女たち」座り込みアクションで、絵を描くパフォーマンスをした増山麗奈さん)がテントひろばの座り込みに加わり、ますますにぎやかになりました。
この日は、栃木や茨城、東京から兵庫に避難されている方、医療関係の方がいた関係で、放射能の危険性について率直な意見交換が行われました。
また、個人的に東海村の村長に手紙を送った方が、村長からの返事を読み上げ、村長に対する支持を呼びかけました。
夜は、飲食物の差し入れが多くあり、その場に集まった20人ほどのみなさんで分け合い、思い思いに語り合いました。
ここが霞が関の真ん中で、日々権力と闘争している最前線の拠点であるということを一瞬忘れそうなほど、穏やかな時間でした。
しかし、テントひろばに集まる方々は、テントひろばの存在意義を強く認識されており、口々に持続させたいとおっしゃっていました。
また、どうやって原発を止めればいいのか、どうやって生きていけばいいのか、穏やかな交流の中で、真剣に話し合っているのです。
人の輪は確実に広がっています。「反原発のみんなのひろば」である経産省テントひろばは、まさに「みんなのひろば」になりつつあります。(文責 ひまわり)
★3.メルマガ読者からの講演会・集会のご案内
脱原発1000万人署名の推進を目的に、鎌田慧(さとし)さんの講演会が実現しました。
日 時:11月29日(火)18:30~
会 場:船橋市勤労市民センター
※鎌田慧さんは青森県弘前市出身。青森県立弘前高等学校卒業後に上京し、零細工場で働く。ガリ版印刷の会社を退社した後、早稲田大学第一文学部露文科に入学。大学卒業後、業界紙(鉄鋼新聞社)記者を経てフリーライターとなる。トヨタ本社工場の季節労働者の実態を自身の経験から描いた『自動車絶望工場』以来、一貫して社会の中で虐げられた側に立って、現地を足で巡ってルポルタージュを
書き続けている方です。
原発関係でも著作が多く、さようなら原発1000万人署名の呼びかけ人です。福島瑞穂さんとの対談の動画がアップされています。
400人の会場をいっぱいにしましょう。
お誘いあわせてご来場ください。 市民ネットワークふなばし
★4.―複眼単眼―
「原発住民投票」の提唱者の民主主義観の底の浅さ
「原発国民投票」を呼びかけていた「みんなで決めよう『原発』国民投票」(今井一事務局長)が突然、東京や大阪での「原発住民投票」運動を呼びかけ始めた。
今井氏たちは、今年六月末、この原発国民投票運動の構想として、「私たちが要請している『原発』国民投票法の制定を立法府に受け入れさせるべく、二〇一一年十一月十一日までに『原発』国民投票の実施を求める『請求人』を百十一万人、本会の活動に賛同しサポートしてくれる『賛同人』を十一万人獲得するという(語呂合わせのような)目標」を掲げ、運動を始めた。しかし、間もなく、目標期限が来るのに達成率は一%程度に過ぎない。
そこで今度は「原発『住民』投票」を東京都、大阪市などで行うことを呼びかけている。今井氏の説明によれば、「原発は、立地先だけの問題ではなく、消費地の問題であるということを多くの国民に理解してもらう。主権者が、消費地の人間が、自身で決定して責任を取ることを実現させよう。
そのことによって同志、仲間の輪を飛躍的に広げていく可能性を見出せる。この機会を逃すと、国民投票運動は、近々、尻すぼみになって運動が滞り、結果として、署名やカンパを頂戴した大勢の方を裏切ることになる」という。「みんなで決めよう」「私たちの未来は、政治家に委ねず、自分で決めよう」ということ
を強調し、直接民主制の重要性をいう。このコピーに、あまり深く考えないまま乗っている人びともいる。
しかし、この今井氏の「国民投票」や民主主義に対する立場には、かつてナチスの台頭を許したドイツの「ワイマールの悲劇」の例を挙げるまでもなく、重大な落とし穴がある。「一票投票」「国民投票」は無前提的に「善」ではない経験を民主主義の歴史は持っている。
第一に、東京電力福島第一原子力発電所が未曾有の事故を起こし、立地地元の福島県民をはじめ、近隣住民に多大な被害を与えているのに、電力「大消費地」の東京都民・大阪市民にたいして、原発賛成でも、反対でもない立場を強調して「原発稼働か、廃止か」を提起し、選ばせるという運動の思想は、原発の問題をまったく理解していない底の浅い提起だ。まさに原発とは都市に象徴される弱肉強食の資本主義がこうした過疎地(辺境)に立地を押しつけて、弱者が原発を受け入れざるを得ないような構造の下で、存在してきた。
東京都民に福島県民を犠牲にする「原発稼働」を投票で選択する「権利」などない。「辺境」を犠牲にした「都市」の電力の浪費はやめなくてはならない。
「辺境」にあぐらをかいて、繁栄を謳歌する「民主主義」は、かつて奴隷制のうえに特権市民の「民主主義」を展開したギリシャの民主主義のレベルの思想だ。
第二に、地方自治法の規定に基づく住民投票条例制定の直接請求に必要な「有権者数の五〇分の一」の署名を集めても、条例制定がその議会で否決されたら、それは元の黙阿弥だ。
原発維持論者の石原慎太郎都知事のもとで、都議会では民主、自民、公明各党が圧倒的な議席数を占めている。これらの人びとが、いまのままで脱原発を選択する可能性のある原発住民投票条例制定賛成にまわることはありえない。
第三に、いかなる住民投票条例が議会で作られるのかの問題だ。今回、今井氏たちが発表した「条例案」は、この間の「憲法国民投票」や「原発国民投票」での論争を経て、他の重要な問題が残る(住民投票運動期間、若ものの将来を左右する原発問題で意思表示する権利の年齢は一六歳でいいのか、テレビ・ラジオ・新聞の有料広告などマスメディアでの宣伝の公平性をいかに保障するか、などなど)とはいえ、最低投票率が設定されたことや、投票権者の「国籍」問題、「年齢」などでは従来の今井氏らの主張より、一定の「前進」が見られる。しかし、現在の東京都議会、大阪市議会がこうした市民の要求する条例案を支持し、その条例制定が実現可能だと考えるのか。例えば投票権者の「国籍」の問題(永住外国人など)で、世論が盛り上がっていないもとでは、民主党の大半の議員や自民党の議員の条例の拒否の理由になるのは明らかだ。
第四に、このような「実現不可能」な運動に多くの市民活動家のエネルギーを投入し、浪費することは、脱原発運動に亀裂を持ち込むことになる恐れがあり、問題が大きい。いま、緊急に必要なことは、被災地の子どもたちをはじめ住民の救援を優先させつつ、脱原発の世論を盛り上げながら、ひとつひとつ、原発立地
や周辺自治体に確実に脱原発の橋頭堡を作っていく運動だ。福島県議会につづいて、浜岡での牧ノ原市議会や焼津市長の永久停止要求や、東海での村長の脱原発宣言、上関での建設計画の中止の運動などなど、ひとつひとつ民衆の運動で脱原発を実現するための橋頭堡を作っていくことだ。いま、全国各地で無数に取り組まれている大小の集会やデモ・パレードなど、これらが世論を作っていく。これらこそが脱原発の実現と民主主義をたたかいとっていくことに連なる。(T)
「人民新報」2011年11月15日号・第1283号(統合376号)より
(注):「人民新報」編集部の了解を得て掲載