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          ◆ 地震と原発事故情報 その184 ◆
             6つの情報をお知らせします(9月25日)
 
       四国電力・伊方原発1号機が9月4日より定期検査の為運転停止
                      残る稼働中原子炉はあと11基 
★1.除染の限界を見極めよう
     -福島市渡利地区の空間線量を測定して
     文字通りの「除染」は全くできていない
★2.メルマガ読者からの講演会のお知らせ
 「10.1森下で織る希望―放射能汚染の現実を超えて―」
★3.新刊紹介
 広瀬 隆著・『原子力産業の終焉 新エネルギーが世界を変える』
★4.「町民の望みと差」 東電賠償 双葉町長が批判
     東電の賠償の在り方が間違い
     東電が誠意ある態度を見せなければ交渉を中断する
★5.「黒塗り」手順書 東電が再び提出を拒否
★6.原発ストレステスト
     再稼働へ“アリバイ”
    「結果 どうにでもできる」専門家、お手盛り批判
  
★1.除染の限界を見極めよう
     -福島市渡利地区の空間線量を測定して
     文字通りの「除染」は全くできていない  山崎 久隆
 
 9月30日には「避難準備地域」が解除されると言うが、その前提には除染により被曝線量を低減させることがある。しかし現実にはそう簡単にはいかないことが明らかになってきている。ここに紹介するのは、「国際環境NGO FoE Japan「福島老朽原発を考える会」が神戸大学の山内知也教授に依頼した福島市渡利地区の除染効果に関する調査報告書の「まとめ」だが、現実の厳しさが突きつけられた結果になった。
 除染さえすれば戻れる。これが今福島県各地で行われているが、結果が伴わないケースもあり、その場合は依然として危険だということも知らなければならない。無理な場合は諦める、そういう決断も必要だ。県や国はこの現実をどう捉えているのか。依然として見えてこない。
 
「放射能汚染レベル調査結果報告書:渡利地区における除染の限界」より
 
まとめ:
 福島市渡利地区の空間線量を計測した。
 ・6月の調査で見つかった 40,000Bq/kgを超える汚染土壌が堆積していた道路の側溝はそのまま放置されていた。堆積した土壌表面の線量は6月の 7.7μSv/h22μSv/hに、11μSv/hから23μSv/hに上昇していた。降雨と乾燥とによる天然の濃縮作用が継続している。
 
・住宅の内部で天井に近いところで、あるいは1階よりも2階のほうが空間線量の高いケースが認められたが、これらはコンクリート瓦等の屋根材料の表面に放射性セシウムが強く付着し、高圧水洗浄等では取れなくなっていることに起因することが判明した。学童保育が行われているような建物でもこのような屋根の汚染が認められた。
 
・渡利小学校通学路除染モデル事業が8月24日に実施されたが、報告された測定結果によれば、各地点空間線量は平均して「除染」前の68%にしか下がっていない。除染作業の実態は側溝に溜まった泥を除去したということであって、コンクリートやアスファルトの汚染はそのままである。道路に面した住宅のコンクリートブロック塀や土壌の汚染もそのままである。一般に、除染は広い範囲で実施しなければその効果は見込めない。今回の計測において通学路の直ぐ側の地表20μSv/hに及ぶ土壌の汚染があった。除染というからには天然のバックグラウンド・レベルである0.05μSv/hに達するかどうかでその効果が評価されるべきである。「除染」の限界が示されたと見るべきである。
 ・薬師町内の計測を行ったところ、国が詳細調査を行った地域から外された地点で高い汚染が認められた。ある住宅の庭では1m高さで2.7μSv/h50cm高さで4.8μSv/h、地表で20μSv/hの汚染が認められた。これは南相馬市の子ども・妊婦の指定基準(50cm高さで2.0μSv/h)をゆうに超えている。
 ・渡利地区では、地表 1cm高さでの線量が異常に高い値を示す箇所が随所に見られる。この地区全体の土壌汚染に起因すると思われる。土壌汚染の程度については、特定避難勧奨地点の検討項目になっていないが、チェルノブイリの教訓に学び、空気の汚染にも直接関係する土壌汚染の程度について、避難勧奨の判断に反映させるべきである。
 ・文字通りの「除染」は全く出来ていない。Cs-134の半減期は2年、Cs-137のそれは30年である。したがって、この汚染は容易には消えず、人の人生の長さに相当する。そのような土地に無防備な住民を住まわせてよいとはとうてい考えられない。
               神戸大学大学院海事科学研究科教授 山内 知也
 
★2.メルマガ読者からの講演会のお知らせ
  「10.1森下で織る希望―放射能汚染の現実を超えて―」
日時:2011年10月1日(土) 10:0016:15ごろ場所:森下文化センター(江東区)
 
 ★3.新刊紹介 広瀬 隆著・『原子力産業の終焉 新エネルギーが世界を変える』
  
 ★4.「町民の望みと差」 東電賠償 双葉町長が批判
   東電の賠償の在り方が間違い 東電が誠意ある態度を見せなければ交渉を中断する
  福島第一原発事故を受け、埼玉県加須市の旧騎西高校に役場機能ごと避難している福島県双葉町の井戸川克隆町長は二十二日、原発事故の賠償について「一般常識的な補償協議では考えられないような、一方的な経緯と手順で進められている」と述べ、国や東京電力に対し賠償範囲や手続きの改善を求める考えを示した。同市で開かれた町議会の一般質問に答えた。                       (東京新聞9月23日より抜粋)
  ★5.「黒塗り」手順書 東電が再び提出を拒否
  東京電力は二十二日、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会から開示を求められた全電源喪失など過酷事故(シビアアクシデント)の対策手順書について、あらためて提出を拒んだ。これを受け、経済産業省原子力安全・保安院は東電に対し、電気事業法に基づいて手順書の一部を提出するよう求める方針だ。
 東電はこれまでも手順書の中身を黒塗りにするなど、委員会への開示を拒み続けている。保安院の深野弘行院長は二十二日の会見で「あそこまで黒塗りすることはやや疑問だ。何が困るのかちゃんと評価すべきだ」と批判。手順書のどの部分が事故調査に必要かを精査した上で、東電に報告徴収を行う。             (東京新聞9月23日より抜粋)
  ★6.原発ストレステスト  再稼働へ“アリバイ”「結果 どうにでもできる」専門家、お手盛り批判
 酷暑の下、節電に力を合わせ、6万人規模の脱原発集会も成功した。それでも、政府と電力各社は着々と原発再稼働への準備を進めている。その手順で重視されているのが、ストレステスト(耐性評価)と国際原子力機関(IAEA)による再評価だ。実効性がありそうに聞こえるが、下地になるべき福島原発事故の原因すら判明していない。「アリバイづくり」という酷評も聞こえる。
            (小倉貞俊、上田千秋)
 ○野田佳彦首相は二十二日、国際社会に事実上の“再稼働宣言”をする。国連本部で開かれる「原発の安全性と核の安全保障に関するハイレベル会合」で「安全でより信頼性の高い原子カエネルギーの確保は引き続き必要だ」と訴える予定だ。
 全国五十四基の原発のうち、現在稼働しているのは十一基。政府は停止中の原発の再稼働に向けて、二次にわたるストレステストを実施し、その結果を原子力安全・保安院が評価、原子力安全委員会が確認するという手順を打ち出している。
 ○最終的には地元自治体の同意が必要だが、すでに定期検査中の原発十五基が一次評価に入ったとみられ、一部は年内の再稼働を目指している。
 まずストレステストとほどういうものなのか。これは実際に原発に衝撃を加えるのでほなく、コンピューター上でシミュレートする方式だ。(中略)
 ただ、「結果いかんで稼働する、しないを判断するねけではない。あくまで住民に安全性を理解してもらうための材料」(保安院)だという。
 ○一方、専門家の間では効果に懐疑的な見方が広がっている。元日本原子力研究所研究員で技術評論家の桜井淳氏は「テストは原発の危険性を測るより、安全性を示すことが前提なので、最初から結果は見えている」といぶかる。
  「地震の揺れや津波の高さについて、厳し数次を前提に調べると思えない。『ぎりぎり大丈夫だった』という結果を出してくるのだろう」
 京都大原子炉実研所の小出裕章助教も「シミーレートするといっても、原発の構造が変わるではない。数値を動かすだけなら、結果はどうにでもできる。甘い設定をすれば甘い結果になるだけのこと。そもそも事故は予測できないからこそ起こるのであって、人が予測したうえでは意味はない。『安全だ』と表明したいだけのお手盛りの検査だ」と語る。
 さらに桜井氏は欧州合(EU)が六月から始めた同テストの設定を日本でも参考にしている点に疑問を呈す。「大きな地震や津波がほぼない欧州と日本では、状況が全然導う。EUの権威に乗って、国民が納得する客観性を求めただけでは」
 
「地震影響 過小評価の歴史」黒塗り手順書 東電の本気度「?」IAEA「お墨付き」も疑問○今回、ストレステストなどが出てきた根幹には福島原発事故がある。これで従来の「安全神話」は吹き飛んだ。だとすれば、新たな安全性の検証も福島事故の原因に基づかねばならない。ところが、いまも事故の原因ははっきりしていない。同社は事故原因を「想定外」の津波による電源喪失と言い張っている。しかし、津波以前に「地震による配管などの損傷が原因では」という指摘が相次いでいる。
 「事故原因があいまいなまま、ストレステストをしても全く意味がない。まずは原因の究明をしてほしい」。こう語気を強めるのほ原子炉格納容器の設計に携わってきた後藤政志氏だ。「電力会社ほこれまでずっと地震の影響を小さく見積もってきた歴史がある。ここで真剣にやらないと、また同じことが起きる」
 同氏ほこの間、事故原因を追究する衆院科学技術イノベーション推進特別委員会の作業に、技術アドバイザーの一人として協力してきた。
 その解明作業に不可欠な情報どして、同委員会は東電に対し、過酷事故が起きた際の運転操作手順書を求めたが、東電側はほぼ黒塗りの形で提出した。このことについて、後藤氏は「『安全性を全く考えていない』と失望した。国会の求めに応じないということは、国民全体をばかにしているということ」と話し、ストレステストへの“本気度”も疑問視する。(中略)
 ○一方、政府はストレステストの結果をIAEAに提出する。保安院と安全委に加え、国際機関の 「お墨付き」を獲得しようという狙いだ。(中略)
 桜井氏は「IAEAは米国の操る糸によって動く、いわば『原発推進機関』。原発行政の首を絞めるようなことはしないだろう。IAEAに太鼓判を押されたからといって、安全の証明にはならない」と強調する。
 前出の小出助教も「原発事故の犯人ははっきりと言えぼ、国と東電。その犯人を原発推進のIAEAが評価するという構図は、犯罪者同士のなれ合い以外の何者でもない」と厳しく批判する。 ストレステストもIAEAのお墨付きも、国民を納得させるものにはなりそつもない。桜井氏は「そんなことよりも、先ににやるべき事がある」と言う。それは保安院と安全委の代わりに新設が検討されている原子力安全庁を、抜本的につくり替えることだと説く。 「従来、原発推進一辺倒だったメシバーは外し、原子力必要から距離を保てる人や原発批判派を登用すべきだ。それが実現できなければ、真の安全性確立はほど遠い」
                     (東京新聞9月21日より抜粋)