尿から内部被ばく、がん発症の恐れ―「チェルノブイリ膀胱炎」

20年で2倍、研究者の福島氏危惧

福島でも影響懸念

○福島第一原発事故から半年。子どもの尿から放射性セシウムが検出されるなど、福島県内では内部被ばくの危険にさらされている。
 チェルノブイリ原発事故で、がん発症の因果関係が認められたのは小児甲状腺がんのみだった。だが、土壌汚染地域からはセシウムの長期内部被ばくによる
「チェルノブイリ膀胱炎」という症例の報告もある。提唱者で医学博士の福島昭治・日本バイオアッセイ研究センター所長に聞いた。

○「セシウム137は膀胱にたまり、尿として排泄される。絶えず膀胱に尿がたまっている前立腺肥大症の患者なら『影響がでやすいのでは』と…」(中略)1986年4月、旧ソ連(現ウクライナ)でチェルノブイリ原発事故が発生。10年後の96年、大阪市立大学医学部第一病理学教室教授だった福島氏は、ウィーンで開かれた世界保健機関(WHO)の会議に出席した。その際、事故の健康被害を研究していたウクライナの
教授らと意気投合し共同研究を始めた。(中略)同国では、10万人当たりの膀胱がんの発症率が86年に26.2だったのが、96年には、36.1人と、約1.3倍に増加していた。
○汚染されたほこりや食品などを口から体内に取り込むと、腎臓を通って尿から排泄されるのは40日から90日もかかる。(中略)病変は、DNAでがんの発生を抑える「P53遺伝子」などが、セシウムのガンマ線などで変異して損傷したのが原因とみられた。
福島氏らは「膀胱がん化する恐れが、高い慢性の増殖性膀胱炎」と結論付け、04年に「チェルノブイリ膀胱炎」と命名した。(中略)日本でも、チェルノブイリ膀胱炎のような現象が起こるのだろうか。(中略) 福島市の市民団体「福島老朽原発を考える会」も、チェルノブイリ膀胱炎の研究報告に着目する。
(中略)同会は7日、都内で尿検査の結果を発表した。阪上武代表(46)は、「福島では日常的な呼吸や食事により、内部被ばくが続いている可能性が高い。汚染地域に住み続けることで、チェルノブイリ膀胱炎のような症例が起きかねない。…除染完了まで子どもを避難させることも考えるべきだ」とも。
○(中略)南相馬市で除染活動に携わる東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授(58)
は「すでに膀胱がんなどのリスクが増加する可能性のある段階とみるべきだ。一刻も早い除染が必要」と警鐘を鳴らす。(中略)福島氏は、「尿をためないように、なるべくトイレにゆくこと。マスクで防御し、安全な食材を選ぶこと。…がん細胞ができてから『がんです』と診断されるまで、一般に約20年の期間がある。適切な対応を取ることで、正常に戻ることもある。…『福島膀胱炎』が起きないようにすることは十分できるはずだ。適切な情報を得ることが安全安心を守ることにつながる。風化させないよう、一人一人が意識を高めてほしい」(2011.0914. 東京新聞より抜粋)