《八重山毎日新聞 投稿欄》
 ◎八重山の民主主義の行方は?

八重高3年 城所愛美

 「日本は民主主義国家である」と中学校で習いましたが、「民主主義の成熟の度合いが国や地域で大きく異なる」ということは教わりませんでした。
 チューリッヒ大学は、9つの指標(「積極的社会参加」、「透明性」、「民主主義的に決定された事項を実行する能力」など)でスコア化した民主主義評価法により「民主主義の質が高い国」をランキングしました。
 残念なことに、30の調査対象国の中で日本は25位-。民主主義の質は高くないという評価を受けています。

 昨年8月からの約1年間のアメリカへの高校留学を通して、私は外から日本を眺め、確かに痛感しました。-日本の民主主義の未成熟さを。
 民主主義に大事なキーワードとしてアメリカでの経験から「ディベート」「情報公開」「説明責任」「アドポカシー」をあげたいと思います。


 大統領選挙や州知事選挙などで重要視される「ディベート」は、授業でも取り入れられていました。
 与えられた命題について必要な情報を収集・分析し論理を組み立て、賛成・反対に分かれて徹底的に議論を交わすこの手法は民主主義には重要であり、日本の国会答弁とはずいぶんと違った合理性、説得力を感じました。
 「知る権利」を守るための「情報公開」「説明責任」もアメリカではたいへん重要視されていました。
 ですから、「情報公開」も「説明責任」も果たさなかった、東日本大震災の原発事故での日本政府の対応は、海外でもひんしゅくものであり恥ずかしく思いました。

 さて、日本に帰ってきて、連日地元マスコミをにぎわしている教科書の採択問題を目にして、「八重山の民主主義は大丈夫?」と大きな不安を感じずにはいられません。
 調査員の研究がほごにされ、十分な議論が行われないで結論を出すというのは「ディベート」とは大違いです。
 現場教師、校長会、保護者までもが反対する教科書をあえて選んだことに対する「情報公開」「説明責任」もなされていません。
 尊敬する教師・保護者が反対する教科書だと知りながら、子どもたちが心から教科書の記載を信じて学ぶことは不可能でしょう。大人はしっかりした「説明貴任」を果たすべきです。
 戦争を知らない私たち世代が、輝く未来を築くためには、過去に学ぶ必要があります。
 沖縄米軍基地や男女差別の記述がないこと、憲法の過小評価、徴兵制の積極的紹介など、個よりも国家を優先させた教科書の採択は、高校生の私から見てもとてもおかしいと思います。

 「アドポカシー」とはロビイング活動を含めた、権利を擁護する活動のことでアメリカではたいへん重要視されていました。
 私たちが自分たちの手で民主主義、自分たちの権利を守るために新聞投稿する決心をしました。これが私の果たすべき、「アドボカシー」だと思ったからです。
 子どもは大人の背中を見て育ちます。しっかり「ディベート」してとことん話し合い、「情報公開」「説明責任」を果たす「真の民主主義の姿」を大人には見せてほしいと思います。
 大人が子どもの反面教師とはならないことを、八重山が「民主主義の質が最低の地域」とならないことを願います。

 『八重山毎日新聞』(2011年9月1日【投稿欄】)


≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
今、教育が民主主義が危ない!!
東京都の「藤田先生を応援する会有志」による、民主主義を守るためのHP
http://wind.ap.teacup.com/people/5715.html