福島第1原発周辺の状況 政府は27日、福島市内で開かれた「福島復興再生協議会」で、年間被ばく線量が200ミリシーベルトと推定される地点では、除染しない場合、帰宅可能な水準(年20ミリシーベルト以下)まで線量が下がるには20年以上かかる可能性があるとの試算結果を示した。菅直人首相は27日、福島県庁で佐藤雄平知事と会談し、東京電力福島第1原発周辺の放射線量が高い地域について「長期間にわたって住民の居住が困難な地域が生じる可能性は否定できない」ことを認め、「心からおわび申し上げたい」と陳謝した。
放射性物質が風雨で拡散されることなどにより、被ばく線量は除染なしでも自然に低下していく。試算結果によると、帰宅可能水準まで被ばく線量が下がるには、現在の推定線量が100ミリシーベルトの地点で10年程度、50ミリシーベルトの地点で4年程度かかる。この期間をより短くするには、除染作業を効率的に進める必要がある。
◇汚染物質保管「福島で」 首相が知事に要請
会談で首相は、除染作業によって新たに汚染土壌が発生することも踏まえ「汚染物質を適切に管理する中間貯蔵施設を県内に整備することをお願いせざるを得ない」と述べ、汚染物質を一時保管するための中間施設を県内に設置したい考えを伝えた。
政府関係者によると、中間施設は国が建設し、放射性物質の空中や地下水への拡散を防ぐための遮蔽(しゃへい)壁も備える。首相は「最終処分場にすることは全く考えていない」としたが、佐藤知事は「突然じゃないか。非常に困惑している」と、受け入れは困難との見方を示した。
汚染土壌やがれきについて、政府が26日発表した「除染の基本方針」は、国が処分場を整備するまでの間、市町村や地域ごとに仮置き場を設けるべきだとしている。しかし、「仮置き場では安全な管理は難しい」との批判が地方から出ていることを受け、国が責任を持って中間施設を整備する必要があると判断した。
会談に同席した細野豪志原発事故担当相は記者団に「一定期間は貯蔵できるものでないと、(市町村の)仮置き場と変わらない」と述べ、放射性物質の封じ込め効果の高い施設を造る意向を明らかにした。
また、首相は「国策で進められてきた原発が事故を起こしたのだから、国の責任で対応しなくてはならない」と強調。「次の内閣にもしっかりと引き継がせていただきたい」と述べ、首相交代後も、事故収束と被災地支援に国は全力を挙げるとの考えを示した。【笈田直樹】
毎日新聞 2011年8月27日 2時31分(最終更新 8月27日 10時42分)
原子力安全委:原発事故直ちに圏外避難…区域設定の方針
国の原子力防災指針を見直している内閣府原子力安全委員会の作業部会は26日、原子力施設で重大事故が発生した場合に直ちに住民が避難する区域としてPAZ(予防的措置範囲)を新たに設定する方針を決めた。具体的な範囲は10月をめどに決めるが、国際原子力機関(IAEA)の安全指針に基づき、半径3~5キロ圏内を目安とする。
PAZは、原子力施設周辺の自治体が地域防災計画を策定する際に反映される見通し。
現行では、放射性物質拡散が予想される半径8~10キロ圏内に、自治体が屋内退避などの対応を準備するEPZ(防災対策重点地域)を設定。実際に重大事故が起きると、放射性物質の広がりを予測するシステム(SPEEDI)の計算などを参考に避難区域が設定される。PAZ内では事故とほぼ同時に避難を求める。【比嘉洋】