SPEEDIは、2つの異なる状況に対応できるよう設計されている。通常時には、放射性物質が放出された場合の想定放出量に基づいて拡散場所を予測し、1時間ごとに地図を作成する。そして万一、非常事態が起きた場合には、原発から収集した実際の放出データを使って予測することになっている。
しかし、福島第1原発の放射線放出データをリアルタイムで送信するシステムは、事故発生後に使用不能となった。菅内閣は6月に国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書の中で、損壊した原発の放射線放出に関する完全なデータをリアルタイムで入手することができなかったと説明した。さらに、SPEEDIが推測に基づいて作成した予測結果を公表すれば、「不必要な混乱」を招く可能性があったと報告している。
だが、災害対策基本法では、こうした状況下でもSPEEDIの予測を使用することが求められている。SPEEDIの運営に携わっていた人々は、正常に機能していたと認識しており、原子力安全技術センターの数土理事長は、「SPEEDIは、3月11日の事故以来、何の落ち度も、遅れもなく、正常に本来の役割を果たしていると思う」と話している。
放射線安全を専門とする東京大学の小佐古敏荘教授は4月下旬、内閣官房参与を辞任した。小佐古氏は辞任声明で、「文部科学省ならびに原子力安全委員会の不適切な初動により、SPEEDIの運用による放射性物質の拡散予測結果の活用が十分にされず、余分な被ばくを住民に与えるなどの事態を招いている」と、政府を批判した。同氏はインタビューでも、SPEEDIは避難計画に有用な情報を提供していたが、そのような恐ろしい決定に誰も関わりたがらなかったと述べている。
また、政府が浪江町住民にうまく情報を伝えられなかったことについては、福山哲郎官房副長官が、緊急電話システムの故障が原因だったと説明している。
現在も浪江町は、汚染のためほぼ全域が閉鎖された状態だ。いつになれば安全に戻れるのか、町民には知る由もない。他の津波被災地では復旧工事が進んでいるが、浪江町の海岸は今もがれきで覆われ、作業員が近づくことさえ許されていない。
記者: Yuka Hayashi『The Wall Street Journal』(2011年8月17日)
http://jp.wsj.com/Japan/node_290831/?nid=NLM20110817
しかし、福島第1原発の放射線放出データをリアルタイムで送信するシステムは、事故発生後に使用不能となった。菅内閣は6月に国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書の中で、損壊した原発の放射線放出に関する完全なデータをリアルタイムで入手することができなかったと説明した。さらに、SPEEDIが推測に基づいて作成した予測結果を公表すれば、「不必要な混乱」を招く可能性があったと報告している。
だが、災害対策基本法では、こうした状況下でもSPEEDIの予測を使用することが求められている。SPEEDIの運営に携わっていた人々は、正常に機能していたと認識しており、原子力安全技術センターの数土理事長は、「SPEEDIは、3月11日の事故以来、何の落ち度も、遅れもなく、正常に本来の役割を果たしていると思う」と話している。
放射線安全を専門とする東京大学の小佐古敏荘教授は4月下旬、内閣官房参与を辞任した。小佐古氏は辞任声明で、「文部科学省ならびに原子力安全委員会の不適切な初動により、SPEEDIの運用による放射性物質の拡散予測結果の活用が十分にされず、余分な被ばくを住民に与えるなどの事態を招いている」と、政府を批判した。同氏はインタビューでも、SPEEDIは避難計画に有用な情報を提供していたが、そのような恐ろしい決定に誰も関わりたがらなかったと述べている。
また、政府が浪江町住民にうまく情報を伝えられなかったことについては、福山哲郎官房副長官が、緊急電話システムの故障が原因だったと説明している。
現在も浪江町は、汚染のためほぼ全域が閉鎖された状態だ。いつになれば安全に戻れるのか、町民には知る由もない。他の津波被災地では復旧工事が進んでいるが、浪江町の海岸は今もがれきで覆われ、作業員が近づくことさえ許されていない。
記者: Yuka Hayashi『The Wall Street Journal』(2011年8月17日)
http://jp.wsj.com/Japan/node_290831/?nid=NLM20110817