2011年7月 8日
女川原発の運転再開問題
止めようプルサーマル!女川原発地元連絡会、石巻市に公開質問書を提出(2)
<質問事項>
1.東京電力福島第1原発の炉心溶融事故の発生で原発の安全神話が崩壊したいま、女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定に当たっては、何より、17万石巻市民の考えを尊重すべきではないでしょうか。
2.福島県や茨城県、島根県などは、原子力安全委員会のいわゆる防災指針などに従い、原子力防災計画で、住民避難の範囲を原発の半径3キロ圏内としてきました(避難先は原発から5キロほど先の施設。屋内退避の範囲は原発から10キロ内)。
これに対して、石巻市は原子力防災計画で、たとえば旧・牡鹿町については原発の2キロ~16キロの全集落を住民避難の範囲としたうえで、避難先も原発から約30キロ先の施設と定めてきました。そして、10キロ圏外住民の避難訓練やコンクリート屋内退避訓練も実施してきました。
ところが、今回の福島第1原発の事故で、この石巻市の避難範囲も狭すぎ、避難先施設も近すぎろことが明らかになりました。
貴職は、このような石巻市の原子力防災計画を現行のままにして、女川原発の運転再開を認めるお考えですか。
(追記)3・11後、列島各地で急速に、原子力防災計画の見直しや新設の動きが広まっています。滋賀県高島市議会は6月29日、原子力安全委員会の防災指針の「原子力防災対策を重点的に重点的に充実すべき地域の範囲」(EPZ)を、現行の原発の8~10キロ圏内から50キロ圏内に拡大することを国に求める意見書を、このほど全会一致で可決したといいます。
3.女川原発の放射線・放射能監視の中心施設である県原子力センターも、女川原発の周辺に設けられた放射線監視局(モニタリングステーション)のいくつかも、そして、原発で大事故が起きた場合に国・県が現地災害対策本部を起き、国・県・地元市町が一同に会して合同対策協議会等や方針決定会議を開くことになるオフサイトセンターも、津波で破壊されてしまいました。
※破壊されたそれらのありさまは、原子力発電を考える石巻市民の会のホームページの次を御覧ください。
「津波に襲われ廃墟と化した県原子力センター」
http://shiminnokai.info/cat58/post-5.html
「現地で目にしたモニタリングステーション・・・」
http://shiminnokai.info/cat58/post-9.html
「オフサイトセンターの惨状」
http://shiminnokai.info/cat58/post-8.html
貴職は、これらの施設の場所をかえての再建・再開や市内各地域への放射線監視局の増設・完成を待たないまま、女川原発の運転再開を認めるお考えですか。
4.事故原因を明らかにしなければ的確な再発防止対策を取ることはできません。
未だに収束していない今回の炉心溶融事故の、今後(収束後)の最大の課題の一つは事故原因の解明です。
1号機では津波前に地震で配管などが損傷して冷却材(「水」のこと)喪失事故が起きたのではないか、と指摘する専門家も少なくありません。東京電力と国は「津波による全電源喪失」を今回の炉心溶融事故の原因と見なしていますが、肝心の現地調査も行なえていない現状では1つの仮説に過ぎません。
※3月30日に経済産業省は各電気事業者に津波による全交流電源等喪失を想定した緊急安全対策の実施を指示し、6月7日に万一シビアアクシデント(苛酷事故)が発生した場合に備えて水素爆発を防ぐ等の措置を直ちに実施するよう追加指示して-女川原発等は対象外-、同18日、海江田経済産業大臣は「適切に実施されている」と「安全宣言」を出しました。
これに対して、泉田裕彦新潟県知事は、6月20日、「(福島第1原発の事故で)何が原因だったかを把握できなければ、対策はわからない。それなのに安全宣言を出すのは、違和感を感じる」、「津波による電源喪失にだけ対応して、安全だというのは問題がある。“安全詐欺”になってはいけない」と批判し、会田洋・柏崎市長も同日、「(原発の安全より)電力不足を解消したいということが先に立っているようにみえる」と不信感を示したといいます(7月4日付け読売新聞新潟県版)。
私たちも、経産省のこの津波による全電源喪失を想定した緊急安全対策の指示は、一面的で不十分な指示だと思わざるをえません。
女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定は、少なくとも、事故の収束を待ち、菅政権が設置した「事故調査・検証委員会」(委員長=畑村洋太郎東大名誉教授)(注1)での事故原因等の十分な調査・検証を待って行なうべきではないでしょうか。
(注1)同委員会には「社会システム」「事故原因」「被害拡大防止対策」「法規制のありかた」の4チームが設置され、「法規制チーム」では、原子力を推進する経済産業省から原子力安全・保安院を分離することや、原子力安全委員会との統合も議論される見通しだといいます。
6月7日にあった初会合で、菅直人首相は「従来の原子力行政から独立して公開のもとで調査し、原子力村といわれる閉鎖的なグループや法制度など、包括的に検討して欲しい」と挨拶したということです。(asahi.com6月7日)
5.女川原発は今回の地震・津波で、福島第1原発のような放射能放出事故こそ起こさないで済んだものの、危機一髪の事態となりました。このような事態に関して、見直されたばかりの女川原発の「基準地震動」580ガル(注2)が小さすぎたのではないかと疑わざるをえません。
今度こそ、今回の地震・津波が福島第1原発に与えた地震の影響だけでなく、女川原発に関するこの疑問もしっかりと検証される必要があります。そのためには、まず、耐震安全性を含む国の原子力規制行政のありかたそのもの、安全審査体制のありかたそのものが抜本的に見直される必要があります。
女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定は、この原子力規制行政、安全審査体制等の抜本的な見直し(具体的には、原子力安全・保安院の解体・再編や原子力安全委員会の委員の入れ替えなど)とその上での国による女川原発の耐震安全性の徹底的な検証をも待って行なう必要があるのではないでしょうか。
(注2)原発の耐震設計の基礎とされる、地震時の上に土がない状態の地盤(解放基盤表面)の最大の揺れ(地震動)が「基準地震動」。ガルは地震の振動による加速度を表す単位。1秒間に速度が「1cm/秒」だけ増加する場合が1ガル。1秒間に速度が「100cm/秒」だけ増加する場合が100ガル。
※この項については、添付した「亀山紘・石巻市長の余りにも早すぎた運転再開受け入れ発言-女川原発の基準地震動と東北地方太平洋沖地震-」http://shiminnokai.info/cat58/post-25.html を御参照ください。
6.国も事業者も、原発には「5重の壁」(中心となる「壁」は原子炉圧力容器とその外側の格納容器)があるから放射性物質が外に漏れることはないと、列島各地住民に宣伝してきました。
しかし、今回の炉心溶融事故で列島各地住民の前に明らかとなったのは、格納容器が破壊されるのを防ぐためにその中にたまった放射能混じりの水素などを(ベントによって)外部に放出するという奇怪な対策。
貴職は、広範な住民に放射線被曝を強いるこのような奇怪な対策(ベント)を「安全対策」とした原発の運転を本当に「再開する方向で考えていく必要がある」とお考えなのでしょうか。
もしそうなら、このような対策を万が一の場合の対策とした運転の再開の是非を、運転再開前に全市民に問うべきではないでしょうか。
7.近くまた、日本の原発で炉心溶融事故やそれ以外の大事故につながるような事故が起きる可能性があります。
その際に、事業者や政府が的確に対処して炉心溶融事故等の大事故を防ぐためには、今回の事故の原因とともに今回の東京電力と政府の事故対応(特に最初の数日間)の問題点と事故の全体像をしっかりと把握する必要があります。
そのために欠かせないのは、国にこの事故に関して国が持つ全ての情報を明らかにさせることであり、また、東京電力にこの事故に関して同電力が持つすべての情報を明らかにさせることです。
このことに関して石巻市はこれまでに国などにどのような要請を行なってきたのでしょうか。
その全てを具体的にお知らせください。
以上。
原子力発電を考える石巻市民の会
http://shiminnokai.info/cat58/-1-10-163010-291050.html
分類: 東日本大震災と原発
女川原発の運転再開問題
止めようプルサーマル!女川原発地元連絡会、石巻市に公開質問書を提出(2)
<質問事項>
1.東京電力福島第1原発の炉心溶融事故の発生で原発の安全神話が崩壊したいま、女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定に当たっては、何より、17万石巻市民の考えを尊重すべきではないでしょうか。
2.福島県や茨城県、島根県などは、原子力安全委員会のいわゆる防災指針などに従い、原子力防災計画で、住民避難の範囲を原発の半径3キロ圏内としてきました(避難先は原発から5キロほど先の施設。屋内退避の範囲は原発から10キロ内)。
これに対して、石巻市は原子力防災計画で、たとえば旧・牡鹿町については原発の2キロ~16キロの全集落を住民避難の範囲としたうえで、避難先も原発から約30キロ先の施設と定めてきました。そして、10キロ圏外住民の避難訓練やコンクリート屋内退避訓練も実施してきました。
ところが、今回の福島第1原発の事故で、この石巻市の避難範囲も狭すぎ、避難先施設も近すぎろことが明らかになりました。
貴職は、このような石巻市の原子力防災計画を現行のままにして、女川原発の運転再開を認めるお考えですか。
(追記)3・11後、列島各地で急速に、原子力防災計画の見直しや新設の動きが広まっています。滋賀県高島市議会は6月29日、原子力安全委員会の防災指針の「原子力防災対策を重点的に重点的に充実すべき地域の範囲」(EPZ)を、現行の原発の8~10キロ圏内から50キロ圏内に拡大することを国に求める意見書を、このほど全会一致で可決したといいます。
3.女川原発の放射線・放射能監視の中心施設である県原子力センターも、女川原発の周辺に設けられた放射線監視局(モニタリングステーション)のいくつかも、そして、原発で大事故が起きた場合に国・県が現地災害対策本部を起き、国・県・地元市町が一同に会して合同対策協議会等や方針決定会議を開くことになるオフサイトセンターも、津波で破壊されてしまいました。
※破壊されたそれらのありさまは、原子力発電を考える石巻市民の会のホームページの次を御覧ください。
「津波に襲われ廃墟と化した県原子力センター」
http://shiminnokai.info/cat58/post-5.html
「現地で目にしたモニタリングステーション・・・」
http://shiminnokai.info/cat58/post-9.html
「オフサイトセンターの惨状」
http://shiminnokai.info/cat58/post-8.html
貴職は、これらの施設の場所をかえての再建・再開や市内各地域への放射線監視局の増設・完成を待たないまま、女川原発の運転再開を認めるお考えですか。
4.事故原因を明らかにしなければ的確な再発防止対策を取ることはできません。
未だに収束していない今回の炉心溶融事故の、今後(収束後)の最大の課題の一つは事故原因の解明です。
1号機では津波前に地震で配管などが損傷して冷却材(「水」のこと)喪失事故が起きたのではないか、と指摘する専門家も少なくありません。東京電力と国は「津波による全電源喪失」を今回の炉心溶融事故の原因と見なしていますが、肝心の現地調査も行なえていない現状では1つの仮説に過ぎません。
※3月30日に経済産業省は各電気事業者に津波による全交流電源等喪失を想定した緊急安全対策の実施を指示し、6月7日に万一シビアアクシデント(苛酷事故)が発生した場合に備えて水素爆発を防ぐ等の措置を直ちに実施するよう追加指示して-女川原発等は対象外-、同18日、海江田経済産業大臣は「適切に実施されている」と「安全宣言」を出しました。
これに対して、泉田裕彦新潟県知事は、6月20日、「(福島第1原発の事故で)何が原因だったかを把握できなければ、対策はわからない。それなのに安全宣言を出すのは、違和感を感じる」、「津波による電源喪失にだけ対応して、安全だというのは問題がある。“安全詐欺”になってはいけない」と批判し、会田洋・柏崎市長も同日、「(原発の安全より)電力不足を解消したいということが先に立っているようにみえる」と不信感を示したといいます(7月4日付け読売新聞新潟県版)。
私たちも、経産省のこの津波による全電源喪失を想定した緊急安全対策の指示は、一面的で不十分な指示だと思わざるをえません。
女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定は、少なくとも、事故の収束を待ち、菅政権が設置した「事故調査・検証委員会」(委員長=畑村洋太郎東大名誉教授)(注1)での事故原因等の十分な調査・検証を待って行なうべきではないでしょうか。
(注1)同委員会には「社会システム」「事故原因」「被害拡大防止対策」「法規制のありかた」の4チームが設置され、「法規制チーム」では、原子力を推進する経済産業省から原子力安全・保安院を分離することや、原子力安全委員会との統合も議論される見通しだといいます。
6月7日にあった初会合で、菅直人首相は「従来の原子力行政から独立して公開のもとで調査し、原子力村といわれる閉鎖的なグループや法制度など、包括的に検討して欲しい」と挨拶したということです。(asahi.com6月7日)
5.女川原発は今回の地震・津波で、福島第1原発のような放射能放出事故こそ起こさないで済んだものの、危機一髪の事態となりました。このような事態に関して、見直されたばかりの女川原発の「基準地震動」580ガル(注2)が小さすぎたのではないかと疑わざるをえません。
今度こそ、今回の地震・津波が福島第1原発に与えた地震の影響だけでなく、女川原発に関するこの疑問もしっかりと検証される必要があります。そのためには、まず、耐震安全性を含む国の原子力規制行政のありかたそのもの、安全審査体制のありかたそのものが抜本的に見直される必要があります。
女川原発の運転再開問題に対する石巻市としての態度決定は、この原子力規制行政、安全審査体制等の抜本的な見直し(具体的には、原子力安全・保安院の解体・再編や原子力安全委員会の委員の入れ替えなど)とその上での国による女川原発の耐震安全性の徹底的な検証をも待って行なう必要があるのではないでしょうか。
(注2)原発の耐震設計の基礎とされる、地震時の上に土がない状態の地盤(解放基盤表面)の最大の揺れ(地震動)が「基準地震動」。ガルは地震の振動による加速度を表す単位。1秒間に速度が「1cm/秒」だけ増加する場合が1ガル。1秒間に速度が「100cm/秒」だけ増加する場合が100ガル。
※この項については、添付した「亀山紘・石巻市長の余りにも早すぎた運転再開受け入れ発言-女川原発の基準地震動と東北地方太平洋沖地震-」http://shiminnokai.info/cat58/post-25.html を御参照ください。
6.国も事業者も、原発には「5重の壁」(中心となる「壁」は原子炉圧力容器とその外側の格納容器)があるから放射性物質が外に漏れることはないと、列島各地住民に宣伝してきました。
しかし、今回の炉心溶融事故で列島各地住民の前に明らかとなったのは、格納容器が破壊されるのを防ぐためにその中にたまった放射能混じりの水素などを(ベントによって)外部に放出するという奇怪な対策。
貴職は、広範な住民に放射線被曝を強いるこのような奇怪な対策(ベント)を「安全対策」とした原発の運転を本当に「再開する方向で考えていく必要がある」とお考えなのでしょうか。
もしそうなら、このような対策を万が一の場合の対策とした運転の再開の是非を、運転再開前に全市民に問うべきではないでしょうか。
7.近くまた、日本の原発で炉心溶融事故やそれ以外の大事故につながるような事故が起きる可能性があります。
その際に、事業者や政府が的確に対処して炉心溶融事故等の大事故を防ぐためには、今回の事故の原因とともに今回の東京電力と政府の事故対応(特に最初の数日間)の問題点と事故の全体像をしっかりと把握する必要があります。
そのために欠かせないのは、国にこの事故に関して国が持つ全ての情報を明らかにさせることであり、また、東京電力にこの事故に関して同電力が持つすべての情報を明らかにさせることです。
このことに関して石巻市はこれまでに国などにどのような要請を行なってきたのでしょうか。
その全てを具体的にお知らせください。
以上。
原子力発電を考える石巻市民の会
http://shiminnokai.info/cat58/-1-10-163010-291050.html
分類: 東日本大震災と原発