報道陣に囲まれながら警察車両に乗り込む堀内利信容疑者(中央)=東京都江戸川区で2011年6月23日午後6時49分、津村豊和撮影 腎不全を患った開業医が腎臓提供の見返りに暴力団組員らに報酬を渡したとされる事件で、警視庁組織犯罪対策4課は23日、東京都江戸川区の堀内クリニック院長、堀内利信容疑者(55)ら5人を臓器移植法(臓器売買の禁止)違反容疑などで逮捕した。堀内容疑者は組員らと金銭トラブルになって移植を断念したが、別の組員の仲介で新たな臓器提供者(ドナー)と養子縁組し、生体腎移植を受けた。手術は昨年7月に宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で行われ、万波(まんなみ)誠医師が執刀した。
ほかに逮捕されたのは堀内容疑者の妻で会社役員、則子(48)▽指定暴力団住吉会系組員、滝野和久(50)▽滝野容疑者の内縁の妻で飲食店店員、佐々木ひとみ(37)▽ドナー候補だった元住吉会系組員、坂上文彦(48)の4容疑者。逮捕容疑は堀内容疑者と則子容疑者は09年10月~10年4月、坂上容疑者が腎臓提供の謝礼に、仲介役の滝野、佐々木両容疑者を含め3人に計1000万円を供与。同年1月に坂上容疑者と養子縁組したとする虚偽の届けを出したとしている。組対4課によると5人とも容疑を大筋で認めているという。
捜査関係者によると、堀内容疑者は板橋中央総合病院(東京都板橋区)での腎移植を計画したが、10年5月に滝野容疑者らから1000万円を求められ断念。別の組員にドナー探しを依頼し、20代の男性と養子縁組をし腎臓の提供を受け、宇和島徳洲会病院で手術を受けたという。
同病院は5年前にも臓器売買事件の舞台となった。万波医師は13日、取材に「どの患者にも臓器売買はだめだと話している。でも、移植したいと言うなら信じたい」と答えた。【川崎桂吾、前谷宏】
2011年6月24日 2時30分
http://mainichi.jp/select/today/news/20110624k0000m040150000c.html
臓器売買:疑惑の医師、当初海外で移植計画
生体腎移植を受けるため、暴力団関係者らに1000万円の報酬を渡し、腎臓の提供を受けようとした疑惑が浮上した開業医(55)は当初、フィリピンに渡航して生体移植を受ける計画を立てていたことが捜査関係者への取材で分かった。国内での死体腎ドナー不足に直面したためとみられるが、国際的な生体移植の規制強化で渡航計画も頓挫。この後、暴力団関係者らとの偽装養子縁組に踏み切り、臓器売買をしようとしたとみられる。
捜査関係者によると、開業医は05年8月に慢性腎不全と診断され、体外式の人工腎臓装置に血液を通して毒素を取り除く人工透析を始めた。しかし人工透析は1回数時間かかり、週に2、3回施設に通う必要がある。ある移植医は「人工透析は生活にも仕事にも支障をきたしかねない」と指摘する。長年にわたって人工透析を続ける患者も多いが、開業医は移植を目指すことにしたという。
開業医は07年2月、「日本臓器移植ネットワーク」に登録。脳死や心停止後に臓器提供を受ける死体腎移植を待った。しかし希望する患者に比べてドナーは圧倒的に少なく、移植が実現するまで平均15年の待機を強いられるとされる。
臓器移植には、健康な人から臓器提供を受ける生体腎移植という選択肢もあるが、日本移植学会の倫理指針はドナーを原則親族と限る。開業医は親族からドナーを見つけられなかったとみられ、海外での移植を目指したという。
開業医が渡航先に選んだのはフィリピンだった。しかし、フィリピン政府も「貧しい人が金銭目的で臓器を提供している」という国際的な批判を受け、08年6月、外国人への臓器提供を禁止。開業医の移植計画も断念に追い込まれたとみられる。【川崎桂吾、前谷宏】
◇開業医、金銭授受を否定
臓器売買疑惑が持たれる開業医(55)は5月16日、東京都江戸川区で経営するクリニック内で毎日新聞の取材に応じた。ドナーとの養子縁組を偽装した上で生体腎移植を受けようとした疑いには明確な回答を避けたが、臓器売買については「そういうことはないと思う」と否定した。一問一答は次の通り。
--養子縁組したドナーから臓器提供を受けようとしたのか。
個人的な問題なので答えられない。(一般論として)法的に問題はないと思うが。
--ドナーの紹介者が暴力団組員だったのではないか。
うちの患者にも組員はいるが、個人的な付き合いはない。
--ドナーやその紹介者に金銭を渡したことはないか。
そういうことがあれば警察は黙っていないでしょう。そういうことはないと思います。
--臓器移植についてどう考えるか。
私の知見では、日本では(死体腎ドナー不足で)難しい。そういう人が海外に行くのだろうが、最近では海外も厳しくなってきている。
--疑惑は事実ではないということか。
そう聞かれても困る。こんな事実があったと具体的に指摘されれば話すが、何が何だか分からないような話を言われても困る。
毎日新聞 2011年6月23日 15時00分
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110623k0000e040068000c.html?toprank=onehour
ほかに逮捕されたのは堀内容疑者の妻で会社役員、則子(48)▽指定暴力団住吉会系組員、滝野和久(50)▽滝野容疑者の内縁の妻で飲食店店員、佐々木ひとみ(37)▽ドナー候補だった元住吉会系組員、坂上文彦(48)の4容疑者。逮捕容疑は堀内容疑者と則子容疑者は09年10月~10年4月、坂上容疑者が腎臓提供の謝礼に、仲介役の滝野、佐々木両容疑者を含め3人に計1000万円を供与。同年1月に坂上容疑者と養子縁組したとする虚偽の届けを出したとしている。組対4課によると5人とも容疑を大筋で認めているという。
捜査関係者によると、堀内容疑者は板橋中央総合病院(東京都板橋区)での腎移植を計画したが、10年5月に滝野容疑者らから1000万円を求められ断念。別の組員にドナー探しを依頼し、20代の男性と養子縁組をし腎臓の提供を受け、宇和島徳洲会病院で手術を受けたという。
同病院は5年前にも臓器売買事件の舞台となった。万波医師は13日、取材に「どの患者にも臓器売買はだめだと話している。でも、移植したいと言うなら信じたい」と答えた。【川崎桂吾、前谷宏】
2011年6月24日 2時30分
http://mainichi.jp/select/today/news/20110624k0000m040150000c.html
臓器売買:疑惑の医師、当初海外で移植計画
生体腎移植を受けるため、暴力団関係者らに1000万円の報酬を渡し、腎臓の提供を受けようとした疑惑が浮上した開業医(55)は当初、フィリピンに渡航して生体移植を受ける計画を立てていたことが捜査関係者への取材で分かった。国内での死体腎ドナー不足に直面したためとみられるが、国際的な生体移植の規制強化で渡航計画も頓挫。この後、暴力団関係者らとの偽装養子縁組に踏み切り、臓器売買をしようとしたとみられる。
捜査関係者によると、開業医は05年8月に慢性腎不全と診断され、体外式の人工腎臓装置に血液を通して毒素を取り除く人工透析を始めた。しかし人工透析は1回数時間かかり、週に2、3回施設に通う必要がある。ある移植医は「人工透析は生活にも仕事にも支障をきたしかねない」と指摘する。長年にわたって人工透析を続ける患者も多いが、開業医は移植を目指すことにしたという。
開業医は07年2月、「日本臓器移植ネットワーク」に登録。脳死や心停止後に臓器提供を受ける死体腎移植を待った。しかし希望する患者に比べてドナーは圧倒的に少なく、移植が実現するまで平均15年の待機を強いられるとされる。
臓器移植には、健康な人から臓器提供を受ける生体腎移植という選択肢もあるが、日本移植学会の倫理指針はドナーを原則親族と限る。開業医は親族からドナーを見つけられなかったとみられ、海外での移植を目指したという。
開業医が渡航先に選んだのはフィリピンだった。しかし、フィリピン政府も「貧しい人が金銭目的で臓器を提供している」という国際的な批判を受け、08年6月、外国人への臓器提供を禁止。開業医の移植計画も断念に追い込まれたとみられる。【川崎桂吾、前谷宏】
◇開業医、金銭授受を否定
臓器売買疑惑が持たれる開業医(55)は5月16日、東京都江戸川区で経営するクリニック内で毎日新聞の取材に応じた。ドナーとの養子縁組を偽装した上で生体腎移植を受けようとした疑いには明確な回答を避けたが、臓器売買については「そういうことはないと思う」と否定した。一問一答は次の通り。
--養子縁組したドナーから臓器提供を受けようとしたのか。
個人的な問題なので答えられない。(一般論として)法的に問題はないと思うが。
--ドナーの紹介者が暴力団組員だったのではないか。
うちの患者にも組員はいるが、個人的な付き合いはない。
--ドナーやその紹介者に金銭を渡したことはないか。
そういうことがあれば警察は黙っていないでしょう。そういうことはないと思います。
--臓器移植についてどう考えるか。
私の知見では、日本では(死体腎ドナー不足で)難しい。そういう人が海外に行くのだろうが、最近では海外も厳しくなってきている。
--疑惑は事実ではないということか。
そう聞かれても困る。こんな事実があったと具体的に指摘されれば話すが、何が何だか分からないような話を言われても困る。
毎日新聞 2011年6月23日 15時00分
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110623k0000e040068000c.html?toprank=onehour