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【1つの反対意見と3つの補足意見がついた君が代裁判 最高裁第3小法廷判決】

 2011年6月14日 
≪八王子 日の丸君が代訴訟 原告団・弁護団声明≫

1 日の丸君が代訴訟(八王子)について、最高裁第3小法廷は本日上告を棄却する旨の判決を言い渡した。本件については、5月30日付で上告受理申し立てについて、受理しない旨の決定が出ている。
 2003年10月23日付け東京都教育委員会通達(以下10・23通達)後、同内容の通達は各市区町村教委から義務制の学校にも発出されている。本件は、八王子市、町田市に勤務する義務制学校の教師である上告人らが、市教委通達による職務命令に反し、卒業式・入学式で君が代斉唱時に起立しなかったため、地方公務員法第32・33条の信用失墜行為として戒告処分を受けた事件である。

2 本判決は以下の通り、上告人らの主張を退けた。
 第1に、判決は本件職務命令は憲法19条の思想良心の自由の侵害には当たらないとする。判決は、国歌斉唱時の起立斉唱行為は、思想及び良心の自由についての間接的な制約になるということまでは認めながら、本件職務命令は学校教育の目標や儀式的行事の意義を定めた関係法令の規定の趣旨に添い、地方公務員の地位や性質、職務の公共性をふまえ、教育上の行事にふさわしい秩序を確保し、式典の円滑な進行をはかるものであって、憲法19条に反するものではないとしている。
 上告人らは、教師であるからこそ、憲法26条によって守られる子どもたちの教育の自由を守るために、起立斉唱ができないことを主張したが、本判決はこのことを一顧だにしなかった。

 しかし、田原裁判長の意見は
(1)起立行為と斉唱行為を分け、
(2)斉唱命令については、否定的な歴史観・世界観を有する者にとっては、その歴史観・世界観に真っ向から対立する行為にほかならず・・・。歌うことを強制することは、思想良心にかかる内心の核心的部分を侵害する者であると評価されうるとした。

3 本判決は、君が代斉唱時の起立を、一般的・客観的に「儀礼所作」と割り切る一方で、公務員の職務の公共性や学校教育法・学習指導要領などの国旗国歌条項の趣旨を強調し、思想良心の自由への規制について極めて緩やかに、必要性・合理性を認めてしまった。しかし「一般的・客観的」という多数者の視点で、少数者の精神的自由の制約を論じることは問題であって、この点は6月6日最高裁判決(第1小法廷)の宮川少数意見こそ参考とされるべきである。

4 教育委員会が学校現場の教育内容にまで介入し、各教師の行動にまで指示をすることは許されない。私たちはこの原則に立って、引き続きたたかい続ける決意である。 

 2011年6月14日

 日の丸君が代訴訟(八王子)弁護団・日の丸君が代訴訟(八王子)原告団