女川原発の新たな基準地震動と東北地方太平洋沖地震
東北電力は国に、4月7日、女川原発で東北地方太平洋沖地震(3・11地震)の際に観測された地震観測記録の分析結果と津波の調査結果を報告。
4月25日には、4月7日の余震(4・7余震)の際に観測された地震観測記録の分析結果を報告しました。
(3・11地震のマグニチュードは9、震央距離は123km、震源深さは24km、震源距離は125km、石巻市鮎川浜の震度は6弱。
4・7余震のマグニチュードは7.1、震央距離は43km、震源深さは66km、震源距離は78km、宮城県涌谷町新町の震度は6弱でした)
こ地震と余震について、まず今回は、5年半前の2005年8月16日に起きた宮城県沖の地震(8・16地震)についての東北電力の同年9月2日の(原子力安全委員会の耐震指針検討分科会で配布された)資料「女川原子力発電所における観測記録について」と比較して気になることを書き留めておきたいと思います。
(8・16地震のマグニチュードは7.2、震央距離は73km、震源深さは42km、震源距離は84km、石巻市の震度は5弱でした)
女川原発の耐震設計の土台となった2種類の基準地震動(解放基盤表面-岩盤上に土がない状態-の地面の揺れ)は、「将来起こりうる最強の地震動」(S1)が250ガル、「およそ現実的でないとは考えられる限界的な地震動」(S2)が375ガル。
これに対して敷地内の地盤観測点の解放基盤表面相当位置(前面海域の海抜より8.6m低い位置)に埋め込まれた地震計が記録した地震動は、233ガル。
その位置の上部の地盤の影響を解析によって取り除いた地震動(はぎとり波)は、284ガルでした。
基準地震動の設定が適切だったかどうかを評価するには、(敷地地盤の解放基盤表面相当位置の実測値ではなく)「はぎとり波」と基準地震動とを比較してみる必要があります。
この比較(284ガルと250ガル)から、基準地震動S1の設定値(250ガル)が適切でなかったことがわかります。
「応答スペクトル」とは、東北電力の説明によれば、「地震動が設備にどのような揺れ(応答)を生じさせるかをグラフに示したものであり、横軸に各設備の固有周期、縦軸に各設備の揺れの最大値(応答の最大値)をとって、分かりやすいように描いたもの」。
8・16の「はぎとり波」の「応答スペクトル」が一部の周期で基準地震動S2の「応答スペクトル」を上回ったことで、基準地震動S2の設定値(375ガル)等が適切でなかったことも明らかになりました。
このような結果、東北電力は「自主的」に580ガルの「安全確認地震動」なるもの(実質的には新たな基準地震動。その後の国の新たな耐震指針の基で基準地震動とされる)を設けて、女川原発の耐震安全性を「確認」し、「念のため」耐震補強工事を実施もしました。
さて、東北電力は3・11地震と4・7余震のあと、国にその地震観測記録の分析結果を報告した時、同時にそれを報道機関に公表し、インターネットでも公表しています。
しかし、インターネットで公表されたものを見るかぎり、3・11地震と4・7余震の際に敷地地盤の解放基盤表面相当位置で観測された実測値(の数値)は示されていません。
そこで、おととい9日午後、女川原発に電話で問い合わせたところ、その日のうちに回答がありました。
次がその内容です。
3・11地震・・・・・水平の南北方向(の地震動の最大値)473ガル、東西421ガル、上下269ガル。
4・7余震・・・・・・水平の南北方向(の地震動の最大値)323ガル、394ガル、上下203ガル。
これから、元の基準地震動が小さすぎたことがさらに明確になりました(国などはS2を「およそ現実的でないと考えられる限界的な地震動」などと称してきましたが、「仮想事故」と同じように虚仮(コケ)オドシにすぎませんでした)。
では、新たな基準地震動(Ss)580ガルは適切なものだったと言えるのでしょうか。
果たして、3・11と4・7のはぎとり波は、この新たな基準地震動を下回るのでしょうか。
公表された3・11地震の「原子炉建屋観測用地震計の最大加速度値」の表を見ると、1,2,3号機のすべてで(階によっては)「観測記録の最大加速度値」が「基準地震動の最大応答加速度値」を上回っています。
4・7余震の「原子炉建屋観測用地震計の最大加速度値」の表を見ても、同様のことが言えます。
これらを見るかぎり、新たな基準動が適切なものではなかったことが疑われます。
また、公表されたどちらの敷地地盤の解放基盤表面相当位置の実測値の応答スペクトルも、基準地震動の応答スペクトルを一部周期で上回っています。
それらのはぎとり波の応答スペクトルが基準地震動の応答スペクトルを大きく上回ることはないのでしょうか。
まだ、3・11と4・7のはぎとり波とその応答スペクトルは公表されていません。
亀山紘・石巻市長は、どういう訳で、このような肝心なことの発表を待つこともなく早々と、女川原発の運転再開を受け入れてしまったのでしょうか。
原発問題を考える石巻の会HP
http://shiminnokai.info/cat58/post-25.html
日下郁郎 | 分類: 東日本大震災と原発
東北電力は国に、4月7日、女川原発で東北地方太平洋沖地震(3・11地震)の際に観測された地震観測記録の分析結果と津波の調査結果を報告。
4月25日には、4月7日の余震(4・7余震)の際に観測された地震観測記録の分析結果を報告しました。
(3・11地震のマグニチュードは9、震央距離は123km、震源深さは24km、震源距離は125km、石巻市鮎川浜の震度は6弱。
4・7余震のマグニチュードは7.1、震央距離は43km、震源深さは66km、震源距離は78km、宮城県涌谷町新町の震度は6弱でした)
こ地震と余震について、まず今回は、5年半前の2005年8月16日に起きた宮城県沖の地震(8・16地震)についての東北電力の同年9月2日の(原子力安全委員会の耐震指針検討分科会で配布された)資料「女川原子力発電所における観測記録について」と比較して気になることを書き留めておきたいと思います。
(8・16地震のマグニチュードは7.2、震央距離は73km、震源深さは42km、震源距離は84km、石巻市の震度は5弱でした)
女川原発の耐震設計の土台となった2種類の基準地震動(解放基盤表面-岩盤上に土がない状態-の地面の揺れ)は、「将来起こりうる最強の地震動」(S1)が250ガル、「およそ現実的でないとは考えられる限界的な地震動」(S2)が375ガル。
これに対して敷地内の地盤観測点の解放基盤表面相当位置(前面海域の海抜より8.6m低い位置)に埋め込まれた地震計が記録した地震動は、233ガル。
その位置の上部の地盤の影響を解析によって取り除いた地震動(はぎとり波)は、284ガルでした。
基準地震動の設定が適切だったかどうかを評価するには、(敷地地盤の解放基盤表面相当位置の実測値ではなく)「はぎとり波」と基準地震動とを比較してみる必要があります。
この比較(284ガルと250ガル)から、基準地震動S1の設定値(250ガル)が適切でなかったことがわかります。
「応答スペクトル」とは、東北電力の説明によれば、「地震動が設備にどのような揺れ(応答)を生じさせるかをグラフに示したものであり、横軸に各設備の固有周期、縦軸に各設備の揺れの最大値(応答の最大値)をとって、分かりやすいように描いたもの」。
8・16の「はぎとり波」の「応答スペクトル」が一部の周期で基準地震動S2の「応答スペクトル」を上回ったことで、基準地震動S2の設定値(375ガル)等が適切でなかったことも明らかになりました。
このような結果、東北電力は「自主的」に580ガルの「安全確認地震動」なるもの(実質的には新たな基準地震動。その後の国の新たな耐震指針の基で基準地震動とされる)を設けて、女川原発の耐震安全性を「確認」し、「念のため」耐震補強工事を実施もしました。
さて、東北電力は3・11地震と4・7余震のあと、国にその地震観測記録の分析結果を報告した時、同時にそれを報道機関に公表し、インターネットでも公表しています。
しかし、インターネットで公表されたものを見るかぎり、3・11地震と4・7余震の際に敷地地盤の解放基盤表面相当位置で観測された実測値(の数値)は示されていません。
そこで、おととい9日午後、女川原発に電話で問い合わせたところ、その日のうちに回答がありました。
次がその内容です。
3・11地震・・・・・水平の南北方向(の地震動の最大値)473ガル、東西421ガル、上下269ガル。
4・7余震・・・・・・水平の南北方向(の地震動の最大値)323ガル、394ガル、上下203ガル。
これから、元の基準地震動が小さすぎたことがさらに明確になりました(国などはS2を「およそ現実的でないと考えられる限界的な地震動」などと称してきましたが、「仮想事故」と同じように虚仮(コケ)オドシにすぎませんでした)。
では、新たな基準地震動(Ss)580ガルは適切なものだったと言えるのでしょうか。
果たして、3・11と4・7のはぎとり波は、この新たな基準地震動を下回るのでしょうか。
公表された3・11地震の「原子炉建屋観測用地震計の最大加速度値」の表を見ると、1,2,3号機のすべてで(階によっては)「観測記録の最大加速度値」が「基準地震動の最大応答加速度値」を上回っています。
4・7余震の「原子炉建屋観測用地震計の最大加速度値」の表を見ても、同様のことが言えます。
これらを見るかぎり、新たな基準動が適切なものではなかったことが疑われます。
また、公表されたどちらの敷地地盤の解放基盤表面相当位置の実測値の応答スペクトルも、基準地震動の応答スペクトルを一部周期で上回っています。
それらのはぎとり波の応答スペクトルが基準地震動の応答スペクトルを大きく上回ることはないのでしょうか。
まだ、3・11と4・7のはぎとり波とその応答スペクトルは公表されていません。
亀山紘・石巻市長は、どういう訳で、このような肝心なことの発表を待つこともなく早々と、女川原発の運転再開を受け入れてしまったのでしょうか。
原発問題を考える石巻の会HP
http://shiminnokai.info/cat58/post-25.html
日下郁郎 | 分類: 東日本大震災と原発