外務 大臣 松本 剛明 殿
2011年5月19日 人権NGO 言論・表現の自由を守る会
要請内容
未だ参政権が確立していない日本において、国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です。
人類普遍の基本的人権を尊重し、
国際自由権規約第一選択議定書(個人通報制度)の批准について御決断いただき、
東日本大震災による大地震・津波被害と原発震災の被災者の人権尊重の立場で復興に
のぞみ、今国会における可及的すみやかな批准を要請します。
国民の世界標準の人権保障を求める声は、刑事弾圧事件や冤罪事件の被害者や労働、女性、教育など様々な分野から強く上がっています。また、2008年には国連自由権規約委員会から、参政権を確立させる課題として、公職選挙法や国家公務員法などの改正を求める勧告も出されており、憲法98条を遵守した人権の国際標準の適用が強く求められています。
1,日弁連主催の2・25大集会の成功
(法務大臣への要請文参照 http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/folder/164332.html?m=lc&p=2)
2,震災復興と国際人権規約
(1)自由権規約の活用
日本政府は、2008年に自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査を受け、日本の人権保証システム全体に関し、29項目もの重大な懸念と厳しい勧告を受けました。
とりわけ、戸別訪問の禁止や文書配布の禁止規定などを持つ公職選挙法や、一般公務員の市民的政治的自由を刑罰で禁止している国家公務員法を名指しで懸念を示した上で、日本政府に対して「参政権に対する非合理的な法律を撤回せよ」(資料※パラグラフ26)と勧告しています。
日本では、政府に批判的なビラを配布したことによって逮捕・起訴され最高裁においても有罪とされており、まさに“弾圧ラッシュ”の状態です。こうした人権状況が、原子力発電に対する『安全神話』を引き起こす大きな原因になっていると考えます。
まだ参政権が確立していない日本の政府が、国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です。
また、希望ある復興の道を切り開くために不可欠だと考えます。
(2)社会権規約の活用
復興の基本的な施策は、住宅・衣食・労働・教育・医療等の政策と万全の人権保証の予算措置が不可欠です。この法的根拠となるのが、憲法と共に社会権規約です。
これについては、2001年に国連が阪神・淡路大震災被災者と関係者の皆さんの告発とレポートなどをもとに審査し、社会権規約第2回日本政府報告書審査を経て勧告しました。(資料※※)しかし、日本政府はこれに対する勧告も、原発に関する勧告もいずれも実施していません。それどころか、翌年には国連の勧告に対して反論(資料※※※)し、その後10年間にわたってさぼり続け、経済的・身体的・社会的弱者の被害をさらに拡大し、今回の震災被害を拡大し、自然災害の上に甚大な被害を与え、地震から2か月以上たった今尚、被災者は一日の食事がおにぎり2つという方も多く存在し、膨大な瓦礫・汚泥によるアスベスト・化学物質・放射線汚染の中で、12万人近くの方が避難所での難民生活が強いられ、生きる糧:社会権規約で保障している人権保証を求めています。
阪神・淡路大震災後の日本政府の対応について、国連:経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は、「最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けられず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居している」と懸念を表明し、「家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである」「多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない」』と指摘し、『「阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。」「これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。」』と、住宅問題など対する改善を提起しています。
今回立ち上げられた震災復興会議についての報道からは、社会権規約も自由権規約もこどもの権利条約とこどもの権利条約に関する2つの選択議定書などについても、日本政府が批准している人権条約はもちろんのこと、日本政府報告書に基づいて審査された結果、国連が勧告した内容についても一切報じられていません。
これらの国際人権条約は法的には憲法と同等もしくは憲法以上の拘束力を持つものです。
震災支援の住宅建設・確保や、食料や衣類、生活基盤、医療、教育、労働などとともに親を亡くした子供たちの保護やこどもの貧困に関する重要な予算措置根拠となる法律です。
また、委員会は原子力の問題についても、「原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念を示し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進するよう」勧告し、「原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを」日本政府に対して要求していました。
日本政府(自民党・公明党政権)は翌年に、この勧告(最終見解)に対して国連に意見し、その後においてもさらに原発安全神話を強化し、震災弱者の深刻な問題を放置してきたのです。
災害復興においても原発事故の対応においても、国際人権の水準で構想を構築するためには、人権保障の基礎的提言として、まず国連の勧告を受け入れることが、全ての法的根拠を示こととなり、国民に希望ある道を指し示すためには国連の勧告の実施が不可欠です。
被災者や復興支援に入る国民に、これ以上被害を拡大することは人道上許されません。
国際人権規約を活用する道を開くためには、個人通報制度の批准が不可欠であり大変急がれています。大震災と原発人災による未曾有の被害を、人権保証の立場で国際法に基づいた法的根拠を明確にして希望ある社会を構築していくために不可欠だと考えます。
日本政府が個人通報制度を批准することによって、世界人権宣言と自由権規約・社会権規約等の人権条約を遵守し活用する立場を表明することとなり、アジアと国際社会において日本政府が人権の尊重に積極的であると発信することは、日本にとってのみならずアジアと世界の人々にとっても希望ある決断です。
(3)原発事故への活用
この度の未曾有の東日本大震災においては、15,093人もの方が亡くなり、未だ9,093人もの人もの方が行方不明で、今日も家族の皆さんが不安に打ちのめされながら、見つかることを必死に祈り、その願いに答えようと懸命の捜索が続けられています。(5月17日現在:警視庁まとめ)
この巨大地震と大津波の未曾有の自然災害のうえに、福島第一原発爆発による放射能汚染
は危機的状態を未だ脱していません。これまでの人災による放射能汚染と避難生活を強いられた上に、さらなる放射能汚染による「人災」が被災者を打ちのめしています。とりわけ乳幼児とこども達には、被爆による命に係わる健康被害の恐怖が襲い掛かっています。
文部科学省が、福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が年間20mSvの被曝を基礎として、毎時3.8μSvと決定し通達しましたが、これは、こどもの命にかかわり、絶対に許されません。政府・文科省・教育委員会が、こども達と保護者に対して、放射線の高濃度汚染を強いることは許しがたい犯罪行為です。到底この基準は容認できません。ただちに憲法と国際人権条約で保障されている生存権を保障し、国際的な安全基準と勧告等に基づき、健康と生命の安全が保障される数値に是正し、その安全確保のために必要な措置を取ることを要請します。
3,今こそ個人通報制度の国会上程と批准の実現を
松本外務大臣におかれましては、ぜひ今国会における個人通報制度の批准についてご決断ください。菅総理大臣、江田法務大臣とともに、719人の全国会議員に対して「今国会において個人通報制度を批准し、国際標準の人権保証を構築し、被災者と国民の願いにこたえよう」とご提起ください。
現在の国難ともいうべき困難を極めた事態の中で、日弁連をはじめ、人権NGOも強力な力を発揮し、国連および国際人権関係者からも大きな歓迎を受けるでしょう。
当会も、微力ですが全力で協力することをお約束いたします。
以上
【 資料 】
※自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査 最終見解(勧告)2008年10月(抜粋)
パラグラフ26 委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、詩人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下での逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する。
締約国(日本)は、規約19条及び25条の下で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」
2011年5月19日 人権NGO 言論・表現の自由を守る会
要請内容
未だ参政権が確立していない日本において、国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です。
人類普遍の基本的人権を尊重し、
国際自由権規約第一選択議定書(個人通報制度)の批准について御決断いただき、
東日本大震災による大地震・津波被害と原発震災の被災者の人権尊重の立場で復興に
のぞみ、今国会における可及的すみやかな批准を要請します。
国民の世界標準の人権保障を求める声は、刑事弾圧事件や冤罪事件の被害者や労働、女性、教育など様々な分野から強く上がっています。また、2008年には国連自由権規約委員会から、参政権を確立させる課題として、公職選挙法や国家公務員法などの改正を求める勧告も出されており、憲法98条を遵守した人権の国際標準の適用が強く求められています。
1,日弁連主催の2・25大集会の成功
(法務大臣への要請文参照 http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/folder/164332.html?m=lc&p=2)
2,震災復興と国際人権規約
(1)自由権規約の活用
日本政府は、2008年に自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査を受け、日本の人権保証システム全体に関し、29項目もの重大な懸念と厳しい勧告を受けました。
とりわけ、戸別訪問の禁止や文書配布の禁止規定などを持つ公職選挙法や、一般公務員の市民的政治的自由を刑罰で禁止している国家公務員法を名指しで懸念を示した上で、日本政府に対して「参政権に対する非合理的な法律を撤回せよ」(資料※パラグラフ26)と勧告しています。
日本では、政府に批判的なビラを配布したことによって逮捕・起訴され最高裁においても有罪とされており、まさに“弾圧ラッシュ”の状態です。こうした人権状況が、原子力発電に対する『安全神話』を引き起こす大きな原因になっていると考えます。
まだ参政権が確立していない日本の政府が、国際人権条約(自由権規約)の個人通報制度を即時批准し、人権の開国をすることは、日本の民主主義にとって極めて重要です。
また、希望ある復興の道を切り開くために不可欠だと考えます。
(2)社会権規約の活用
復興の基本的な施策は、住宅・衣食・労働・教育・医療等の政策と万全の人権保証の予算措置が不可欠です。この法的根拠となるのが、憲法と共に社会権規約です。
これについては、2001年に国連が阪神・淡路大震災被災者と関係者の皆さんの告発とレポートなどをもとに審査し、社会権規約第2回日本政府報告書審査を経て勧告しました。(資料※※)しかし、日本政府はこれに対する勧告も、原発に関する勧告もいずれも実施していません。それどころか、翌年には国連の勧告に対して反論(資料※※※)し、その後10年間にわたってさぼり続け、経済的・身体的・社会的弱者の被害をさらに拡大し、今回の震災被害を拡大し、自然災害の上に甚大な被害を与え、地震から2か月以上たった今尚、被災者は一日の食事がおにぎり2つという方も多く存在し、膨大な瓦礫・汚泥によるアスベスト・化学物質・放射線汚染の中で、12万人近くの方が避難所での難民生活が強いられ、生きる糧:社会権規約で保障している人権保証を求めています。
阪神・淡路大震災後の日本政府の対応について、国連:経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は、「最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けられず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居している」と懸念を表明し、「家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである」「多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない」』と指摘し、『「阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。」「これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。」』と、住宅問題など対する改善を提起しています。
今回立ち上げられた震災復興会議についての報道からは、社会権規約も自由権規約もこどもの権利条約とこどもの権利条約に関する2つの選択議定書などについても、日本政府が批准している人権条約はもちろんのこと、日本政府報告書に基づいて審査された結果、国連が勧告した内容についても一切報じられていません。
これらの国際人権条約は法的には憲法と同等もしくは憲法以上の拘束力を持つものです。
震災支援の住宅建設・確保や、食料や衣類、生活基盤、医療、教育、労働などとともに親を亡くした子供たちの保護やこどもの貧困に関する重要な予算措置根拠となる法律です。
また、委員会は原子力の問題についても、「原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念を示し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進するよう」勧告し、「原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを」日本政府に対して要求していました。
日本政府(自民党・公明党政権)は翌年に、この勧告(最終見解)に対して国連に意見し、その後においてもさらに原発安全神話を強化し、震災弱者の深刻な問題を放置してきたのです。
災害復興においても原発事故の対応においても、国際人権の水準で構想を構築するためには、人権保障の基礎的提言として、まず国連の勧告を受け入れることが、全ての法的根拠を示こととなり、国民に希望ある道を指し示すためには国連の勧告の実施が不可欠です。
被災者や復興支援に入る国民に、これ以上被害を拡大することは人道上許されません。
国際人権規約を活用する道を開くためには、個人通報制度の批准が不可欠であり大変急がれています。大震災と原発人災による未曾有の被害を、人権保証の立場で国際法に基づいた法的根拠を明確にして希望ある社会を構築していくために不可欠だと考えます。
日本政府が個人通報制度を批准することによって、世界人権宣言と自由権規約・社会権規約等の人権条約を遵守し活用する立場を表明することとなり、アジアと国際社会において日本政府が人権の尊重に積極的であると発信することは、日本にとってのみならずアジアと世界の人々にとっても希望ある決断です。
(3)原発事故への活用
この度の未曾有の東日本大震災においては、15,093人もの方が亡くなり、未だ9,093人もの人もの方が行方不明で、今日も家族の皆さんが不安に打ちのめされながら、見つかることを必死に祈り、その願いに答えようと懸命の捜索が続けられています。(5月17日現在:警視庁まとめ)
この巨大地震と大津波の未曾有の自然災害のうえに、福島第一原発爆発による放射能汚染
は危機的状態を未だ脱していません。これまでの人災による放射能汚染と避難生活を強いられた上に、さらなる放射能汚染による「人災」が被災者を打ちのめしています。とりわけ乳幼児とこども達には、被爆による命に係わる健康被害の恐怖が襲い掛かっています。
文部科学省が、福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が年間20mSvの被曝を基礎として、毎時3.8μSvと決定し通達しましたが、これは、こどもの命にかかわり、絶対に許されません。政府・文科省・教育委員会が、こども達と保護者に対して、放射線の高濃度汚染を強いることは許しがたい犯罪行為です。到底この基準は容認できません。ただちに憲法と国際人権条約で保障されている生存権を保障し、国際的な安全基準と勧告等に基づき、健康と生命の安全が保障される数値に是正し、その安全確保のために必要な措置を取ることを要請します。
3,今こそ個人通報制度の国会上程と批准の実現を
松本外務大臣におかれましては、ぜひ今国会における個人通報制度の批准についてご決断ください。菅総理大臣、江田法務大臣とともに、719人の全国会議員に対して「今国会において個人通報制度を批准し、国際標準の人権保証を構築し、被災者と国民の願いにこたえよう」とご提起ください。
現在の国難ともいうべき困難を極めた事態の中で、日弁連をはじめ、人権NGOも強力な力を発揮し、国連および国際人権関係者からも大きな歓迎を受けるでしょう。
当会も、微力ですが全力で協力することをお約束いたします。
以上
【 資料 】
※自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査 最終見解(勧告)2008年10月(抜粋)
パラグラフ26 委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、詩人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下での逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する。
締約国(日本)は、規約19条及び25条の下で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」