文科省こそ、旧科技庁を取り込んだ原発推進村の親玉であることを忘れるな!

 『ジャーナリスト 木下黄太のブログ  「福島第一原発を考えます」』から

 ▼ 「放射能恐怖症」をでっち上げようとする
   文部科学省へのある精神科医の抗議

 Facebookに精神科医の方が投稿されています。僕自身、オウム真理教事件の取材などを通して、PTSDについて、できる限り、きちんと考えなければならないという認識を前からもっています。そしてこの投稿は、放射能をどうとらえるのかという政府の考え方が、いかにおかしなことかをきちんと伝えられています。僕自身、チェルノブイリでおきたことが、同じように今の日本で起きていることは間違いないと再三書いています。民主主義国家の日本と社会主義国家のソ連という体制の違いに関係なく、本当の現実をはっきりと伝えることが如何に行われず、事態を矮小化するために、病気を理由としているのは、同じ構造です。PTSDというものを、誤用する事によって、放射能を恐れる事を否定すると言う論理は、まったくまともな話ではありません。お読み下さい。

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Kurumizawa Shin
大阪で精神科医をしています。


 原発問題には以前から関心があり、今回の福島原発の事故も気が気ではなく、事態の展開を見守っていました。
 最近になり、精神科医としても黙っていられない状況となり、以下のようなメールを友人の精神科医たちに送っています。

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 文科省が教育関係者に向けて「放射能を正しく理解するために」という文書を4月20日に発表しています。
 精神科領域に関係することが書いてあるとのことでしたので、目を通してみたのですが、なんてことだと頭を抱えてしまいました。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/21/1305089_2.pdf

 前半は、あの「年間20mSVまでは安全」というとんでもない基準について述べられていて、これだけでもかなり不愉快なのですが、我々精神科医に直接関係してくるのは後半です。
 12ページの一番下に
 「放射線の影響そのものよりも、『放射能を受けた』という不安を抱き続ける心理的ストレスのほうが大きいと言われています」と書き、13ページ以降にその説明として、心理的な強いストレスの受けたときの子供の反応を解説し、「PTSD」について述べ、「放射能のことを必要以上に心配しすぎてしまうとかえって心身の不調を起こします」と結論付けて、「からだと心を守るために正しい知識で不安を解消!」と結んでいます。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)は過去の心的外傷が原因で発症しますから、現在進行形の事態に対してPTSDを持ち出すことはそもそもおかしな話です。
 また、あたかも「放射能を心配しすぎて」PTSDになるかのような説明は間違っています。「心配しすぎて」PTSDになったりすることはありません。
 PTSDはレイプ、虐待、戦争体験、交通事故などなど、生命が危険にさらされる現実の出来事の後に生じる疾患です。

 今、原発被害に関してPTSDを論じるのであれば、PTSDの予防ですから、「安全な場所に避難すること」と「事実を伝えること」が必要です。
 ところが文科省のこの文書は「年間20mSVでも安全という間違った情報」を与え、「避難の必要はない」と言っていますから、PTSDの予防としても間違っています。
 そもそも放射線の被曝による生命の危機を認めていません。
 あまりのお粗末さにあきれてしまい、開いた口がふさがりません。

 福島原発の事故の責任は国にあります。
 この文章は加害者である国が、被害者の口を封じ、あたかも被害の責任が被害者側にあるかのような論述を組み立てています。
 これは、レイプでも幼児虐待でも加害者側がよくやるやり方です。
 このやり方を繰り返されているうちに、被害者は被害を受けたという事実が見えなくなり、自分を責め、PTSDであることすらわからなくなってしまいます。
 PTSDという疾患概念は、被害者が自分の症状と過去の出来事との関連に気づくためのものです。
 それを被害者の口封じのために利用していることに腹立ちを感じます。

 こんな内容の文書を信じる人はいないだろうと思っていたのですが、先週末に福島出身の作業療法士さんと話をしたら、「そんなことありませんよ。信じてしまいます。肩書のある偉い先生や、政府の人が言ったら、一般の人はそうかなって信じてしまいますよ。福島は混乱しています」と言っていました。事態は切迫していて、黙っていたら加害者側に立つのと同じになってしまいます。

 時間も気力も限られていますので、まずは伝わりそうな人に伝えています。
 この文書の作成に協力している小児心身医学会とメールのやり取りをしているのですが、なかなか動こうとしません。

 トラウマティックストレス学会には原発事故の際の心のケアについてちゃんとした文章が載っていました。
http://www.jstss.org/pdf/konishi0324.pdf

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 以上です。

 福島の皆さんにこのことを知らせたいと思っています。
 文科省に文書を撤回させることはできなくても、知識を広めることで文書を無効化してしまえたらと思います。
 転送等していただけたらありがたいです。

 チェルノブイリの事故の後、心身の不調を訴える人々に対してソ連が「放射能恐怖症」という精神科的な病名をつけて、放射線被曝の後遺症を認めようとしなかったことがありました。
 それと同じことが日本でも起こるのではないかと心配しています。

 放射線被曝の被害を矮小化しようとする国の態度は正さなければなりませんし、そのために*精神医学が利用されることを防ぎたいと思っています。
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 さて2号機も3号機も東電の膨大な資料で当初からメルトダウンしていたことがわかりました。また、1号機のメルトダウンをはやめたのは、冷却装置を手動で一時停止していたことではないのかという疑惑もおきています。
 地震に対する対応を誤った部分がこの手動停止に端的に顕われているとすれば、過去の海外の原発事故と同じ構図になりますし、さらに廃炉覚悟の注水が遅れた部分については、いったい何を東電は優先したのかという疑惑が再認識されます。
 さらに、こういう場合、官邸がこちらがケツを持つと言って、東電に無理やり注水をさせなければならなかったのですが、それも機能していなかったと可能性も高いです。
 しかも、現場でポンプも機能しないというお粗末もでています。
 東電を主犯として、政府官邸が従犯の犯罪としか思えませんし、二重三重の人災である事は間違いありません。
 こうなってくると、最悪想定がゆっくりと現実化してきている危機感をもう一度持つしかありません。
 さらなる大量被曝がおきないという緩い感覚は捨てなさいと僕は言いたいです。もう一度爆発がおきての被曝も想定できますし、そうでなくて更に被爆していく状況もありえます。
 官邸内は「二度の爆発以降、東京の放射性物質の降下は少ない。だから東京は大丈夫」という感覚しかありません。僕は爆発がおきればたぶん大丈夫ではないと思いますし、問題は爆発しなくても大丈夫でなくなる状態が想定されなくはないと考えます。
 とにかく、しんどくても緊張を保つしかないのです。
 (以下略)

『ジャーナリスト 木下黄太のブログ  「福島第一原発を考えます」』(2011-05-17)
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/a8b451d39996f03c2f24e43c274ba719

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