東日本大震災:私はこう見る モシェ・ファルヒさん

 ◇「能動的な生存者」尊重を--
    イスラエル・テルハイカレッジのトラウマ治療専門家、モシェ・ファルヒ博士(49)

 被災者は既に、持っている力を最大限に発揮して脅威に対処している。

 このことに気付かせてあげることこそが、いま被災者が必要とする心の支えだ。

 たとえば、シカはオオカミを見たら走る。これを、逃げたのではなく、脅威と闘い、正しく対処している姿だと肯定することだ。
 息継ぎのために立ち止まることも、正しい対処法だ。

 「受動的な被害者」でなく「能動的な生存者」として扱うことが必要だ。
  水を1杯渡すのではなく、「好きな飲み物を選んできて」と勧める。

  人生と日常を自ら動かしているという感覚を取り戻せるよう、次のようなことを勧めたらよい。

 (1)被災体験を書く。ただし、災害発生前から書き起こすこと。
   読み返し、時系列を正しく修正する。
   「とんでもない災害だ」という表現で済ませず、「二つの石が落ちた」などと具体的に書き込む。   悪いことは永遠に続くと思いがちだが、いくつかの事象は既に終わっていることが分かる。

 (2)1週間先の予定を手帳に書き込む。
   少しは挑戦的な予定を書いてもよいが、失敗の可能性が高い予定は避ける。
   規則正しい生活を心がけよう。

 (3)何でもいいから安心感の得られる「何か」を見つける。子供なら物かもしれない。
    大人なら、避難所の隅で一人で音楽を聴くことかもしれない。


   専門家でなく、素人からこうした助言をしてもよい。
   記事を読んだ被災者なら、そのまま実行してほしい。

   地域社会についても同じことが当てはまる。
   外部から何かを押しつけるのではなく、正確な情報を与え判断は任せよう。

   私にも日本から、専門的助言を求めるメールが届いた。
   「他人を使う能力」も対処能力の一つだ。どんどん声をかけてほしい。

   【聞き手・エルサレム花岡洋二】

   毎日新聞2011年4月21日より


   あなたも、できることから、はじめてみませんか?