2011年4月12日3時1分


. 高濃度の放射能に汚染された福島第一原発の復旧作業にあたる作業員の間で、放射能への不安から早期に体内の被曝(ひばく)量を検査するよう求める声が高まっている。第一原発の被災後、その検査が十分にできない状態が続いているという。

 体の表面についた放射性物質はシャワーで洗い流せるが、呼吸で体に入った放射性物質の一部は体内に蓄積される。東京電力などによると、体内の被曝量を測る機械「ホールボディカウンタ」は、第一原発内に4台設置されているが、被災後は使えない状態。機械を積んだ車両を他の原子力関係機関から借り、いわき市内で検査している。

 だが、復旧のため短期に作業員を大量動員した非常事態の中で、初めて原発内に入る作業員の入所時の検査は行われていない。成人男性の平均的な被曝量を見積もって、その後の被曝量の上積みを測るやり方にしているという。

 また、以前から原発の放射線管理区域内で働いていた作業員は、被曝前歴などを記した「放射線管理手帳」を持っているが、避難指示が出ている第一原発周辺に事務所がある企業が多く、手帳を取りにいけないまま作業に入っている人もいるという。

 こうした状況に加え、3月中は放射線量を測る携帯線量計が不足し、グループで1台だけ持たせる状態だった。このため、作業員から「体内の被曝量もどれだけになっているか、わからないのではないか」と不安を訴える声が出ていた。

 原発に入所後のホールボディカウンタによる検査は3カ月ごとと定められているが、作業員を派遣している協力企業幹部は「危険な環境にいる全作業員対象で、早期に検査を受けさせるべきだ」と強調。他の電力会社関係者も「現場に詰めっぱなしの東電やメーカー幹部の体も心配で、調べる必要がある」と話した。


 安斎育郎・立命館大学名誉教授(放射線防護学)は「呼吸や食事などで放射性物質を体内に取り込む内部被曝は、放射線を体の中から長時間浴びることになるので極めて危険。専用のマスクなどでしっかりと予防することが重要だ。内部被曝は検査をしなければわからない。作業員の不安を和らげるためにも、ホールボディカウンタなどで検査しながら作業することが望ましい」と指摘した。

 東京電力広報部は「必要に応じて、定期的な検査も検討していく」としている。(小島寛明、奥山俊宏、佐々木学、中村信義)

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 〈ホールボディカウンタ〉 身体を透過してきた放射線を検出するなど精密な検査をする機械。各電力会社は、放射線管理区域内の業務従事者について、入所時、3カ月ごと(女性は1カ月ごと)、退所時などに体内の放射線量を測定している。


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