2011.3.31 14:13 産経ニュース
福島第1原発から5キロの地点で見つかった男性の遺体を囲む警察官。放射線量が高いため収容作業を断念した=27日、福島県大熊町(福島県警提供)
福島第1原発事故で、政府が避難指示を出している原発から約20キロの圏内に、震災で亡くなった人の遺体が数百~千体あると推定されることが31日、警察当局への取材で分かった。
27日には、原発から約5キロの福島県大熊町で見つかった遺体から高い放射線量を測定しており、警察関係者は「死亡後に放射性物質を浴びて被曝した遺体もある」と指摘。警察当局は警察官が二次被曝せずに遺体を収容する方法などの検討を始めた。当初は20キロ圏外に遺体を移して検視することも念頭に置いていたが、見直しを迫られそうだ。
警察当局によると、高線量の放射線を浴びた遺体を収容する際、作業する部隊の隊員が二次被ばくする可能性がある。収容先となる遺体安置所でも検視する警察官や医師、遺族らに被ばくの恐れが生じる。
遺体は最終的に遺族か各市町村に引き渡すことになるが、火葬すると放射性物質を含んだ煙が拡散する恐れがあり、土葬の場合も土中や周辺に広がる状況が懸念される。
▽海水へ流出継続か 放水口付近ヨウ素4000倍超す
2011年3月31日 東京新聞夕刊
東京電力福島第一原発の事故で、経済産業省原子力安全・保安院は三十一日、1~4号機の南放水口付近の海水から、法令で定める濃度限度の四千三百八十五倍に当たる放射性ヨウ素131を検出したと発表した。これまでの最高値で、保安院は「継続的に原発敷地内から汚染水が漏れている可能性がある」との見方を示した。
海水は三十日昼に採取し、ヨウ素131の濃度は一ミリリットル当たり一八〇ベクレルだった。南放水口付近では二十六日に約千八百五十倍を記録、いったん下がったものの、二十九日には三千三百五十五倍に再び上がった。
5、6号機の北放水口付近でも三十日朝に採取した海水から千四百二十五倍のヨウ素131を検出した。
保安院は「この海域で漁業は行われてなく、健康に影響はない」と、海産物への影響を否定しているものの、沖合十五キロの三地点で新たに海水を調査するほか、敷地内の地下水も調べるなど監視を強める。
放射性物質に汚染された水の処理では、1号機タービン建屋外の立て坑で、東京電力がポンプで集中環境施設のタンクに汚染水を移し、立て坑内の水位は三十一日午前に一メートル下がった。3号機では、タービン建屋地下の水を回収するため、復水器内にたまっている水を移すための復水貯蔵タンクを空にした。
一方、三十一日から予定していた原発敷地内での合成樹脂の水溶液塗膜剤の試験散布は、現地の天候が悪いためこの日の実施を見送った。東電は天候の回復を待って四月一日以降から数日、散布する予定。塗膜剤が固まると、放射能を帯びた敷地内のちりなどを閉じこめて飛散を防ぎ、作業員の被ばくの危険を低減する効果が期待されている。
1~3号機の原子炉内は温度や圧力がおおむね落ち着いているが、2号機の使用済み核燃料プールでは水温が四八度から三十一日早朝の時点で六一度に上昇した。
▽過酷労働もう限界、両親は不明…原発の東電社員がメール
朝日新聞 2011年3月26日20時0分
東京電力の福島第二原子力発電所で働く女性社員が、東電本社の幹部に、現場の状況を電子メールで伝えてきた。事故を起こした企業の社員であり、被災者でもある立場の苦しさもつづっている。両親の行方はわからないという。
メールを受けた幹部はかつて女性の上司として第二原発で働いていた。幹部からメール転送された東電関係者が、社員の名と所属を伏せて記者に見せた。関係者は「いまの状況で見せることが適切なのか迷ったが、社員の希望でもあり、現場の様子を知る参考にしてほしい」と話す。
メールの送信日時は23日正午過ぎ。送り主は46歳の事務職の女性社員だ。次のような内容でつづられている。
「1F(福島第一原発)、2F(第二原発)に働く所員の大半は地元の住民で、みんな被災者です。家を流された社員も大勢います。私自身、地震発生以来、緊急時対策本部に缶詰めになっています。個人的には、実家が(福島県)浪江町の海沿いにあるため、津波で町全体が流されました」
「実家の両親は津波に流され未(いま)だに行方がわかりません。本当なら、すぐにでも飛んでいきたい。でも、退避指示が出ている区域で立ち入ることすらできません。自衛隊も捜索活動に行ってくれません。こんな精神状態の中での過酷な労働。もう限界です」
福島第一、第二原発では、2010年7月時点で東電の社員約1850人、関連会社や原発メーカーなど協力企業の社員約9500人が働いている。東電によると、9割が福島県内在住で、そのうちの7~8割は原発周辺の双葉地域の住民。事故後は東電、協力企業の地元社員だけでなく、全国から集められた社員らが交代で作業している。
「被災者である前に、東電社員としてみんな職務を全うしようと頑張ってます。特に2Fは、自分たちのプラントの安全性の確保の他に、1F復旧のサポートも同時にやっていた状況で、現場はまるで戦場のようでした。社員みんな心身共に極限まできています。どうかご理解下さい」
「今回の地震は天災です。でも、原発による放射性物質の汚染は東電がこの地にあるせいです。みんな故郷を離れ、いつ戻れるかどうかもわからない状況で、不安を抱え怒りを誰にぶつけてよいのか分からない! それが今の現実です」
社員は「この現実を社内外に届けてください」と伝え、本社の支援を求めている。(永田稔)