「沖縄タイムス」 2011.3.28 社説 

東日本大震災の被災地で、両親を失った孤児の実態把握が始まった。寒い避難所でひとり、寄り添う親のいない子どもらに一日も早く手を差し伸べてもらいたい。

 被災地は犠牲者の身元確認や生活基盤の復旧に追われる。行政機能がマヒした自治体もあり、現地では孤児らのケアには手が回らない。

 政府は全国の児童福祉司ら専門家を集め、避難所ごとに確認する作業を始めた。実態把握を急ぎ、早期に手だてを講じてもらいたい。

 厚生労働省によると、被災地の自治体で親を亡くした子どもがいるとの情報は入っているが、その後の行方は把握しきれていないという。

 各避難所で子どもや関係者から状況を聞いて回るだけでも手間がかかる。それぞれの子に合ったケアを考え、措置するまでの手続きも膨大な作業となる。

 すでに北海道や東京都、横浜市などから児童福祉司や児童心理司ら専門家が、食料やガソリンを持参して、公民館に寝泊まりしながら活動しているという。全国で支援の輪を広げていきたい。

 阪神大震災で身寄りをなくした18歳未満の子どもは68人で、両親のどちらかを亡くした子どもも332人いた。今回の震災は死亡・行方不明者の数がはるかに多く、孤児の数はこれを上回ることが懸念される。

 被災から2週間が過ぎている。いつまでも保護者の行方が分からない状態が続くと、精神的に不安定になる。安心できる場所、寄り添ってあげる大人の存在が必要だ。

 現実の対応はさまざまな困難が予想される。諸対応の入り口となる実態調査さえ難しそうだ。

 地震に次ぐ大津波で被災が大きく広がった上、子どもたちが学校にいる時間の震災発生だったため、親子が離れ離れになったケースが多いとみられる。

 身寄りのない子どもは通常なら児童相談所の一時保護所や児童養護施設が受け入れ先となるが、そこは児童虐待の増加に伴い定員超過が常態化しているという。

 同じ地域に住む親類らを頼れるといいのだろうが、彼らもまた被災している。高齢な祖父母には負担が大きく、長期的なケアは難しい。

 現行の里親制度では一定の年収があることや研修の受講などが求められ、認定に時間がかかる。

 震災孤児に対して、政府は特別な支援策や、制度の弾力的な運用も含めた対応を検討すべきだ。

 厚生労働省は里親探しや、経済的な支援といった長期的な課題について、都道府県などに協力を求めることを検討している。沖縄でも何かできないだろうか。

 ソフトバンクモバイルは18歳未満の震災孤児の携帯電話機、通信料などを無料にする方針だ。ロート製薬は孤児らを支援する「震災復興支援室」を設け、職員を配置。役員が一部報酬を返上して運用費とするらしい。

 息の長い取り組みが必要だ。みんなで善意を持ち寄り、応援していきたい。