data : 2011.03.18category
: 緊急会議 緊急対談の第二弾は小林武史×田中優。早くからずっと「脱原発」を訴えてきた田中さんは、今、何を思うのか。これまで何度も議論を重ねてきた小林×田中の二人が、改めてこの国の置かれた状況を確認しつつ、動き出すべき方向についてを話し合った。
震災は、"この国の構造"という分厚い鉄壁に風穴をあけた
起こり得ることが起こってしまった今
田中 しかしまさか、こんな事態になるとは思わなかったね。
小林 本当に。かれこれ10年くらい経っていると思うのだけれど、ap bankを作ろうと動き出した頃から優さんがおっしゃっていた電力会社の問題が、今、すべて露呈してますよね。
田中 ほんと。結局、露呈しちゃった。
小林 今になってヒステリックに騒ぎ立てる人もいるけれど、ここ数日の優さんの執筆や発言を拝見しているとすごく冷静じゃないですか。予測し得る出来事だったから、というわけですよね。そもそも優さんがエネルギー問題について行動を始めたのも、チェルノブイリ事故がきっかけだったということですが、今はどんな気持ちなんですか?
田中 まず事故が起こったこと自体は、この無責任な人達の責任を問いたいって気持ちだよね。だって僕たちはあれほど「こういうふうになるよ、こんなことが起こり得るよ」と伝えていたのにそれを無視し続けた結果だから。
だけど一方で、多くの人々は全然そういう論争があることすら知らなかった。だから今のこの現状に、非常にヒステリックになってしまっているところもある。それが怖いんだよね。パニックになりかけているから。今日も僕のところには、メールを1通送ると、10通返ってくる勢いで連絡がきている。永遠に追いつかないんじゃないかと思いながら、とにかく片っ端から、いい加減なデータや煽るような論調があると「それは間違っている!」と、すぐにメールを返してさ。変な方向に動きかけてるところの芽を摘むということを一日中やっていました。
新しいエネルギーが普及しない仕組み
小林 今回は東京電力でこういう問題が起きたけれど、「日本の原発はしっかりしていたからこの程度で済んだ」という論調、そして既にアメリカなども言い出しているけれど「今回の事に学んで更なるいい原発を作れば、より正しい道が待っています」みたいな論調が、既に出てきているじゃないですか。
これはやっぱり、"経済"というものの礎の上に立っている原発はすごいものだと思っている立場からの意見だと思うし。でもこの意見で進むと、どこまでいっても繰り返しになってしまうのではないかと。一個爆発しても「一個で済んで良かった。危なかった。」で済んじゃうみたいな話にもなりかねない。
田中 そこがまさにせめぎ合いのところだと思うんです。そこから我々の望んでいる方向に動かせるか、要は今回のことをエネルギー問題のターニングポイントにできるかどうかの、まさに局面に立っていると思うんですよ。これは日本だけの問題では全然なくなっている。ドイツのルフトハンザ航空は成田空港にもう降りないのを知っている?
小林 え! そうなんですか?
田中 名古屋と大阪にしか着陸しないの。なんとドイツでは日本から帰った人は全員、放射線のチェックを受けられるんだって。
小林 外資系企業などもみんな、「日本を離れろ」という動きになっているよね。外国人こそ、今の日本は本当にTerrible(恐ろしい)だと言っていますからね。
田中 それくらい、海外にも注目され、影響を及ぼしている。この状況を契機にできるかどうかがすごく重要だと思う。
小林 そうですね。僕としては、日本はエネルギーに対してのデモクラシーで言うと初級、子どもレベルだったと思うんですよ。
田中 そうだね。その分野に関しては言ってみれば独裁レベルだからね。ファシズム体制。
小林 あるところでエネルギーを享受するようになって「これは国が与えてくれるもの」ということで、バブバブというか。原子力ってなんだか怖いと言うけれど、でも仕方ないから飲み込む、という矛盾した体制を続けているから。
田中 うんうん。
小林 次のステップに行くためには、いきなり全部を変えなくてもいいけれど、まずは開示できる場というのを作らないと。今は東京電力さんもすごくショックだと思うし。
田中 ショックを受けているだろうし、ものすごいダメージだと思う。
小林 この状況で、周りがそこにちゃんと協力をするというか「一緒に話し合いをしませんか?」ということがすごく大事だと思うんですよ。優さんが今の状況で「そらみたことか!」と言わないのは、きっとどこかにそういう考えもあるのではないかと僕は勝手に思っていたんだけれど。
田中 実際にそうですね。
少し話はそれるかもしれないけれど、そこから先の話を少しだけさせてほしいんだよね。実は、原子力発電は保険に入っているんです。「原子力損害賠償制度」というものなんだけれど、1200億円までは保険がおりるの。イギリスのロイズに再保険をかけているから、使うことになってもイギリスの貴族の懐が痛むだけなんだけどさ。
小林 そういう仕組みがあるんですか。
田中優の'維持する志'
http://tanakayu.blogspot.com/
: 緊急会議 緊急対談の第二弾は小林武史×田中優。早くからずっと「脱原発」を訴えてきた田中さんは、今、何を思うのか。これまで何度も議論を重ねてきた小林×田中の二人が、改めてこの国の置かれた状況を確認しつつ、動き出すべき方向についてを話し合った。
震災は、"この国の構造"という分厚い鉄壁に風穴をあけた
起こり得ることが起こってしまった今
田中 しかしまさか、こんな事態になるとは思わなかったね。
小林 本当に。かれこれ10年くらい経っていると思うのだけれど、ap bankを作ろうと動き出した頃から優さんがおっしゃっていた電力会社の問題が、今、すべて露呈してますよね。
田中 ほんと。結局、露呈しちゃった。
小林 今になってヒステリックに騒ぎ立てる人もいるけれど、ここ数日の優さんの執筆や発言を拝見しているとすごく冷静じゃないですか。予測し得る出来事だったから、というわけですよね。そもそも優さんがエネルギー問題について行動を始めたのも、チェルノブイリ事故がきっかけだったということですが、今はどんな気持ちなんですか?
田中 まず事故が起こったこと自体は、この無責任な人達の責任を問いたいって気持ちだよね。だって僕たちはあれほど「こういうふうになるよ、こんなことが起こり得るよ」と伝えていたのにそれを無視し続けた結果だから。
だけど一方で、多くの人々は全然そういう論争があることすら知らなかった。だから今のこの現状に、非常にヒステリックになってしまっているところもある。それが怖いんだよね。パニックになりかけているから。今日も僕のところには、メールを1通送ると、10通返ってくる勢いで連絡がきている。永遠に追いつかないんじゃないかと思いながら、とにかく片っ端から、いい加減なデータや煽るような論調があると「それは間違っている!」と、すぐにメールを返してさ。変な方向に動きかけてるところの芽を摘むということを一日中やっていました。
新しいエネルギーが普及しない仕組み
小林 今回は東京電力でこういう問題が起きたけれど、「日本の原発はしっかりしていたからこの程度で済んだ」という論調、そして既にアメリカなども言い出しているけれど「今回の事に学んで更なるいい原発を作れば、より正しい道が待っています」みたいな論調が、既に出てきているじゃないですか。
これはやっぱり、"経済"というものの礎の上に立っている原発はすごいものだと思っている立場からの意見だと思うし。でもこの意見で進むと、どこまでいっても繰り返しになってしまうのではないかと。一個爆発しても「一個で済んで良かった。危なかった。」で済んじゃうみたいな話にもなりかねない。
田中 そこがまさにせめぎ合いのところだと思うんです。そこから我々の望んでいる方向に動かせるか、要は今回のことをエネルギー問題のターニングポイントにできるかどうかの、まさに局面に立っていると思うんですよ。これは日本だけの問題では全然なくなっている。ドイツのルフトハンザ航空は成田空港にもう降りないのを知っている?
小林 え! そうなんですか?
田中 名古屋と大阪にしか着陸しないの。なんとドイツでは日本から帰った人は全員、放射線のチェックを受けられるんだって。
小林 外資系企業などもみんな、「日本を離れろ」という動きになっているよね。外国人こそ、今の日本は本当にTerrible(恐ろしい)だと言っていますからね。
田中 それくらい、海外にも注目され、影響を及ぼしている。この状況を契機にできるかどうかがすごく重要だと思う。
小林 そうですね。僕としては、日本はエネルギーに対してのデモクラシーで言うと初級、子どもレベルだったと思うんですよ。
田中 そうだね。その分野に関しては言ってみれば独裁レベルだからね。ファシズム体制。
小林 あるところでエネルギーを享受するようになって「これは国が与えてくれるもの」ということで、バブバブというか。原子力ってなんだか怖いと言うけれど、でも仕方ないから飲み込む、という矛盾した体制を続けているから。
田中 うんうん。
小林 次のステップに行くためには、いきなり全部を変えなくてもいいけれど、まずは開示できる場というのを作らないと。今は東京電力さんもすごくショックだと思うし。
田中 ショックを受けているだろうし、ものすごいダメージだと思う。
小林 この状況で、周りがそこにちゃんと協力をするというか「一緒に話し合いをしませんか?」ということがすごく大事だと思うんですよ。優さんが今の状況で「そらみたことか!」と言わないのは、きっとどこかにそういう考えもあるのではないかと僕は勝手に思っていたんだけれど。
田中 実際にそうですね。
少し話はそれるかもしれないけれど、そこから先の話を少しだけさせてほしいんだよね。実は、原子力発電は保険に入っているんです。「原子力損害賠償制度」というものなんだけれど、1200億円までは保険がおりるの。イギリスのロイズに再保険をかけているから、使うことになってもイギリスの貴族の懐が痛むだけなんだけどさ。
小林 そういう仕組みがあるんですか。
田中優の'維持する志'
http://tanakayu.blogspot.com/