【ブリュッセル福島良典】

 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は2日、国連安保理の対リビア制裁決議を受け、モレノオカンポ主任検察官が同国最高指導者、カダフィ大佐らによる反体制派の武力弾圧について捜査の開始を決めたと発表した。「人道に対する罪」などに当たる可能性があるとの判断を下したためだ。

 主任検察官は先月28日、「民間人攻撃が組織的であれば『人道に対する罪』となり得る」と指摘、情報収集のため、カダフィ大佐に反旗を翻したリビア政府・軍の高官・将校と接触するなどの予備調査に着手したことを明らかにしていた。

 通常、予備調査から捜査開始までは数カ月以上かかるが、カダフィ政権による反体制派への攻撃激化を踏まえ、異例のスピード判断を下したとみられる。

 主任検察官は今後、証拠集めを進め、必要であれば大佐の逮捕状請求などができる。

 カダフィ大佐への圧力を強めたい欧米など国際社会はICCの捜査開始により、反体制派への攻撃を食い止める「抑止効果」を狙っている。武力弾圧を続ければ訴追される可能性が高まるためだ。

 リビアはICCに加盟していないため、捜査開始には安保理決議による事件のICC付託が必要だった。過去の同様のケースとしてはバシル・スーダン大統領に逮捕状が発行された同国ダルフール紛争がある。

 ICCは重大犯罪を犯した個人を処罰するために設置された初の常設国際刑事法廷で、集団殺害罪、「人道に対する罪」、戦争犯罪、侵略犯罪を扱う。

毎日新聞 2011年3月3日 0時47分
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110303k0000m030134000c.html