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 税理士 元静岡大学教授 湖東京至さん

 消費税は最大で最後の不公平税制です。すべての物品・サービス、生活必需品に同じ税率でかかり、逆進性が高い不公平な税金です。なかには食料品は非課税にすべきだという学者や政党がいます。しかし、私は賛成できません。たとえ食料品が非課税になっても、消費税が良くなる可能性はないからです。
 フランスの付加価値税の標準税率は19・6%、食料品5・5%の軽減税率があります。しかし、不公平税制であることには変わりありません。角度を変えると、消費税は「物にかかる間接税」といわれますが、これは消費税を矮小化する一面的な見方です。



 今、日本には消費税を納める事業者が350万いますがその99%を占める中小零細業者は、端数をきちっと乗っけて値段をつけるわけではありません。たとえば、斎藤貴男さんの『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)は本体720円に消費税を乗せて756円で売っています。これをまけてくれという人はいません。しかし弁当屋さんで弁当を756円で買う人はいません。
 値段は、消費税があろうとなかろうと一人歩きします。消費税を値段に上乗せ転嫁できるかできないかの判断は業者、それも強い業者がします。トヨタなど強い業者は製品に転嫁できます。しかし、下請け零細業者は身銭を切って負担しています。だから消費税は弱肉強食税なのです。製品に転嫁できない中小企業と大企業の間に不公平があります。これは消費税の一つの特徴です。


 ところで消費税を常に納める事業者がいる一方で、常に還付を受ける企業があります。
 2009年に消費税の還付を受けた上位10社の合計額は推定8014億円に上ります(表2)。いずれもトヨタなど輸出大企業ですが、問題はなぜ還付しなければならないのかです。
 2010年度の政府予算書によると、還付金は国の4%分と地方消費税の1%を合わせて3兆3762億円。この還付額は5%の消費税収入12兆475億円の28%に相当します。これが毎月、トヨタやキャノンの銀行口座に振り込まれます。トヨタは年間2000億円以上になります。
 還付金が多いため、トヨタ自動車の本社や関連会社がある愛知県の豊田税務署は消費税収入が赤字になっています。キャノンの本社がある東京・蒲田税務署もそうです。税務署が下請零細業者が納めた税金を大企業に返しているのです。

 消費税の還付金をもらっている企業は、全国に約16万社。一番多いのは東京の芝税務署で4333社もあり、芝税務署の管理運営部門は還付金の振込みに追われています。こうした実情はあまり知られていません。

 不公平という点でいうと、医者や病院の社会保険診療報酬も非課税ですが、還付金はありません。それで、医師会は盛んに還付せよと要求しています。しかし、実現はほとんど不可能です。消費税で還付金が認められているのは輸出の免税だけで、国内の非課税には還付は認められないのです。
 (続)

『週刊新社会』(2010/12/21)

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