人権NGO 言論・表現の自由を守る会が、笠間治雄・東京高検検事長は次期最高検検事総長に不適格であり、検事総長選任に反対する下記意見書を本日24日午前9時30分に法務省に提出しました。
内閣官房長官・法務大臣 仙谷由人 様
検察の在り方検討会議 座長 千葉景子 様
2010年12月24日
人権NGO 言論・表現の自由を守る会
Japanese Association for the Rights to Freedom of Speech
次期最高検検事総長選任について、 笠間治雄・東京高検検事長を起用に反対します。
次期最高検検事総長選任には、日本弁護士連合会に検察官経験者以外の推薦を求め、
憲法と国際人権条約を遵守し活用できる法律の専門家を起用するよう要請します。
今朝の毎日新聞朝刊は、「検察トップの大林宏検事総長の辞任が本日24日午前、閣議で正式決定され、後任には笠間治雄・東京高検検事長」と報じています。
法と証拠とに基づいて,社会正義の実現を担うという責務を負っている検察官が,証拠を改ざんし,あるいは,犯人隠避に問われるという今般の事態は,国民の信頼を大きく損ねたばかりでなく,社会の根幹にかかわる極めて深刻なものであるにもかかわらず、今回の事態に至った原因等については,まだ最高検の検証の内容も公表されていません。
なぜこのような事態に至ったのか,事実を明らかにし、十分な検討を加えた上で,幅広い観点から抜本的に,検察の在り方についての検討をしなければならないのは当然です。
検察の在り方検討会を立ち上げた法務大臣が、すでに辞任し、現在の大臣は兼任で多忙を極めている現状の下で、言論弾圧事件を支援して活動している当人権NGOの意見に対して、真摯に耳を傾け誠実に対応していただくことを強く要望します。
≪笠間氏選任反対の理由≫
1、笠間氏は広島高等検察庁検事長就任挨拶で抱負として、「当庁管内検察庁が、法と証拠に基づき、かつ起訴価値を十分考慮の上、起訴の可否や起訴対象者の選定を慎重に行い、起訴した案件については、妥当な裁判結果を獲得するという、検察の基礎中の基礎を守るように指導を徹底していきたい」と語っています。
笠間氏は、法的拘束力が国内法より上位に位置する自由権規約(国際人権条約)を全く考慮しないばかりか、さらには「妥当な裁判結果を獲得する」として、裁判結果についてまでも、検察が起訴した事件については100パーセント有罪にする指導を徹底すると宣言しているに等しい発言です。99.9パーセント有罪とされている日本の刑事訴訟の異常さを反省もなく踏襲し続けるだけでなく、さらに、裁判の結果まで支配しようとする越権行為の発言です。この発言からも検事総長の任にふさわしくないことは明らかです。
このような人権意識が欠如し、自浄能力が機能しない現状の深刻さを見ても、現在の公安警察・検察システムの下で仕事をしている検察幹部の中に最高検のトップにふさわしい人物が居ようはずもありません。『妥当な』という発言からも、判決を何が何でも検察が起訴した事件は有罪にするという意図が明瞭であり、弾圧事件の指揮をした元次長検事たちが裁判官として最高裁に送り込まれていることによって人権侵害とともに恐怖政治的な深刻な社会的な害悪を引き起こしています。元次長検事の罷免が急がれていることも指摘します。
よって、日本弁護士連合会に検察官経験者以外の推薦を求め、憲法と国際人権条約を遵守し活用できる法律の専門家を起用するよう要請します。
2、笠間治雄氏は、2008年4月11日の立川防衛庁官舎ビラ配布弾圧事件の最高裁有罪判決に対して当時の最高検次長検事として「他人の住居の平穏の侵害が、表現の自由の名の下に許されないのは当然で、妥当な判断」と不当判決を支持しました。
検察の在り方検討会発足のきっかけとなった郵便不正事件に絡む証拠改ざん・隠ぺい事件では、検察が証拠を改ざんまでして村木さんを犯人にしようとした冤罪事件であり、犯罪事実は存在しています。
しかし、この立川事件のビラ配布行為は、憲法と国際自由権規約の精神からも民主主義国家の国民の基本的権利であり犯罪ではありません。
この事件は、日本は国連人権理事国でありながら、犯罪ではない行為を警察・検察が「犯罪」だとして不当に逮捕し、立件・起訴し、さらには裁判所までもが追認した人権理事国日本における恐るべき言論弾圧事件です。
2008年10月に自由権規約委員会は、立川事件をはじめとするビラ配布弾圧6事件について次のように勧告しました。
【勧告(総括所見)26項】
:「委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下で逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する(第19条及び25条)」とした上で、「締約国(日本政府)は、規約第19条及び25条で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官、裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に課せられたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」
以上のように、国際水準から大きく遅れている日本の人権保障システムに懸念を示し、警察・検察・裁判所を名指しで具体的法改正も求めて勧告しています。
笠間氏は、今年6月の東京高検検事長就任あいさつでも「検察の仕事はあくまで法と証拠に基づく」と言いながら、憲法98条で遵守義務が謳われている国内法よりも法的拘束力が上位に位置する自由権規約をも無視して、ビラ配布弾圧事件の不当判決の支持を表明し、その後もこの発言を撤回していません。
日本弁護士連合会は下記の通り、国際人権(自由権)規約委員会第5回政府報告書審査を踏まえて作成したパンフレット“改革迫られる日本の人権保証システム”( 勧告全文掲載)の第8章で、「刑事罰で脅かされる表現の自由」と題して、検察の相次ぐビラ配布の逮捕・起訴・有罪判決について、下記の4点を指摘しています。
1、相次ぐビラ配布と戸別訪問などの検挙
最近、自衛隊官舎やマンションの郵便受けにビラを配布した活動家や公務員が、住居侵入罪や国家公務員法違反罪で逮捕起訴され、有罪判決を受ける事件が相次いでいます。
また、公職選挙法では、戸別訪問は全面禁止、文書配布も大幅に制限されていて、1946年以降戸別訪問や文書頒布罪で9万1,000人以上の人々が検挙、処罰されています。
2、 国際水準に遅れる日本の人権保障 ー警察・検察・裁判所ー
表現の自由、特に文書配布や対話による政治批判や選挙活動が自由に出来ることは民主政治の基盤であり、国際人権(自由権)規約は表現の自由(19条)、政治関与の自由(25条)を保証しています。そして委員会は、規約上の制限は、制限の必要性に比例しなければならないと考えていますから(比例原則)、具体的な弊害を問わずに、一律に刑罰でもってビラ配布や選挙活動を抑圧するのは規約に違反します。
日本が、1979年にこの規約を批准した以後、これらの裁判で弁護側が規約の保証を主張する事例が増えていますが、裁判所もなかなか受け入ないのが現状です。
3、表現の自由に対する不合理な制限の撤廃を
今回この問題について委員会は、ビラ配布や選挙活動で多数の市民や公務員が上記の法律によって逮捕、起訴され、処罰されている日本の現状に懸念を表明したうえで総括所見26項を日本政府に勧告しました。
国家公務員法や公職選挙法など、具体的な法令名を明示したうえで不合理な制限の撤廃を勧告したところに、委員会のはっきりとした見解と強い要請が込められています。
4、法改正と国内適用に向けて
日本は、規約を批准した締約国として委員会の勧告を誠実に受け入れる義務があります。政府は早急に関係法律を改正すべきであり、警察・検察はこのような活動に対する干渉を中止すべきです。
弁護士も、関連する裁判において積極的に今回の勧告を援用し、規約の実効的な国内適用を求める弁護活動を行うことが望まれます。
来年2月25日には、ビラ配布弾圧事件当事者が出席する三度目の日弁連集会(2009年11月人権擁護大会・2010年1月個人通報制度実現目指す集会)が明治大学で開催され、通常国会での個人通報制度批准は待ったなしの課題です。
以上
内閣官房長官・法務大臣 仙谷由人 様
検察の在り方検討会議 座長 千葉景子 様
2010年12月24日
人権NGO 言論・表現の自由を守る会
Japanese Association for the Rights to Freedom of Speech
次期最高検検事総長選任について、 笠間治雄・東京高検検事長を起用に反対します。
次期最高検検事総長選任には、日本弁護士連合会に検察官経験者以外の推薦を求め、
憲法と国際人権条約を遵守し活用できる法律の専門家を起用するよう要請します。
今朝の毎日新聞朝刊は、「検察トップの大林宏検事総長の辞任が本日24日午前、閣議で正式決定され、後任には笠間治雄・東京高検検事長」と報じています。
法と証拠とに基づいて,社会正義の実現を担うという責務を負っている検察官が,証拠を改ざんし,あるいは,犯人隠避に問われるという今般の事態は,国民の信頼を大きく損ねたばかりでなく,社会の根幹にかかわる極めて深刻なものであるにもかかわらず、今回の事態に至った原因等については,まだ最高検の検証の内容も公表されていません。
なぜこのような事態に至ったのか,事実を明らかにし、十分な検討を加えた上で,幅広い観点から抜本的に,検察の在り方についての検討をしなければならないのは当然です。
検察の在り方検討会を立ち上げた法務大臣が、すでに辞任し、現在の大臣は兼任で多忙を極めている現状の下で、言論弾圧事件を支援して活動している当人権NGOの意見に対して、真摯に耳を傾け誠実に対応していただくことを強く要望します。
≪笠間氏選任反対の理由≫
1、笠間氏は広島高等検察庁検事長就任挨拶で抱負として、「当庁管内検察庁が、法と証拠に基づき、かつ起訴価値を十分考慮の上、起訴の可否や起訴対象者の選定を慎重に行い、起訴した案件については、妥当な裁判結果を獲得するという、検察の基礎中の基礎を守るように指導を徹底していきたい」と語っています。
笠間氏は、法的拘束力が国内法より上位に位置する自由権規約(国際人権条約)を全く考慮しないばかりか、さらには「妥当な裁判結果を獲得する」として、裁判結果についてまでも、検察が起訴した事件については100パーセント有罪にする指導を徹底すると宣言しているに等しい発言です。99.9パーセント有罪とされている日本の刑事訴訟の異常さを反省もなく踏襲し続けるだけでなく、さらに、裁判の結果まで支配しようとする越権行為の発言です。この発言からも検事総長の任にふさわしくないことは明らかです。
このような人権意識が欠如し、自浄能力が機能しない現状の深刻さを見ても、現在の公安警察・検察システムの下で仕事をしている検察幹部の中に最高検のトップにふさわしい人物が居ようはずもありません。『妥当な』という発言からも、判決を何が何でも検察が起訴した事件は有罪にするという意図が明瞭であり、弾圧事件の指揮をした元次長検事たちが裁判官として最高裁に送り込まれていることによって人権侵害とともに恐怖政治的な深刻な社会的な害悪を引き起こしています。元次長検事の罷免が急がれていることも指摘します。
よって、日本弁護士連合会に検察官経験者以外の推薦を求め、憲法と国際人権条約を遵守し活用できる法律の専門家を起用するよう要請します。
2、笠間治雄氏は、2008年4月11日の立川防衛庁官舎ビラ配布弾圧事件の最高裁有罪判決に対して当時の最高検次長検事として「他人の住居の平穏の侵害が、表現の自由の名の下に許されないのは当然で、妥当な判断」と不当判決を支持しました。
検察の在り方検討会発足のきっかけとなった郵便不正事件に絡む証拠改ざん・隠ぺい事件では、検察が証拠を改ざんまでして村木さんを犯人にしようとした冤罪事件であり、犯罪事実は存在しています。
しかし、この立川事件のビラ配布行為は、憲法と国際自由権規約の精神からも民主主義国家の国民の基本的権利であり犯罪ではありません。
この事件は、日本は国連人権理事国でありながら、犯罪ではない行為を警察・検察が「犯罪」だとして不当に逮捕し、立件・起訴し、さらには裁判所までもが追認した人権理事国日本における恐るべき言論弾圧事件です。
2008年10月に自由権規約委員会は、立川事件をはじめとするビラ配布弾圧6事件について次のように勧告しました。
【勧告(総括所見)26項】
:「委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下で逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する(第19条及び25条)」とした上で、「締約国(日本政府)は、規約第19条及び25条で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官、裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に課せられたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」
以上のように、国際水準から大きく遅れている日本の人権保障システムに懸念を示し、警察・検察・裁判所を名指しで具体的法改正も求めて勧告しています。
笠間氏は、今年6月の東京高検検事長就任あいさつでも「検察の仕事はあくまで法と証拠に基づく」と言いながら、憲法98条で遵守義務が謳われている国内法よりも法的拘束力が上位に位置する自由権規約をも無視して、ビラ配布弾圧事件の不当判決の支持を表明し、その後もこの発言を撤回していません。
日本弁護士連合会は下記の通り、国際人権(自由権)規約委員会第5回政府報告書審査を踏まえて作成したパンフレット“改革迫られる日本の人権保証システム”( 勧告全文掲載)の第8章で、「刑事罰で脅かされる表現の自由」と題して、検察の相次ぐビラ配布の逮捕・起訴・有罪判決について、下記の4点を指摘しています。
1、相次ぐビラ配布と戸別訪問などの検挙
最近、自衛隊官舎やマンションの郵便受けにビラを配布した活動家や公務員が、住居侵入罪や国家公務員法違反罪で逮捕起訴され、有罪判決を受ける事件が相次いでいます。
また、公職選挙法では、戸別訪問は全面禁止、文書配布も大幅に制限されていて、1946年以降戸別訪問や文書頒布罪で9万1,000人以上の人々が検挙、処罰されています。
2、 国際水準に遅れる日本の人権保障 ー警察・検察・裁判所ー
表現の自由、特に文書配布や対話による政治批判や選挙活動が自由に出来ることは民主政治の基盤であり、国際人権(自由権)規約は表現の自由(19条)、政治関与の自由(25条)を保証しています。そして委員会は、規約上の制限は、制限の必要性に比例しなければならないと考えていますから(比例原則)、具体的な弊害を問わずに、一律に刑罰でもってビラ配布や選挙活動を抑圧するのは規約に違反します。
日本が、1979年にこの規約を批准した以後、これらの裁判で弁護側が規約の保証を主張する事例が増えていますが、裁判所もなかなか受け入ないのが現状です。
3、表現の自由に対する不合理な制限の撤廃を
今回この問題について委員会は、ビラ配布や選挙活動で多数の市民や公務員が上記の法律によって逮捕、起訴され、処罰されている日本の現状に懸念を表明したうえで総括所見26項を日本政府に勧告しました。
国家公務員法や公職選挙法など、具体的な法令名を明示したうえで不合理な制限の撤廃を勧告したところに、委員会のはっきりとした見解と強い要請が込められています。
4、法改正と国内適用に向けて
日本は、規約を批准した締約国として委員会の勧告を誠実に受け入れる義務があります。政府は早急に関係法律を改正すべきであり、警察・検察はこのような活動に対する干渉を中止すべきです。
弁護士も、関連する裁判において積極的に今回の勧告を援用し、規約の実効的な国内適用を求める弁護活動を行うことが望まれます。
来年2月25日には、ビラ配布弾圧事件当事者が出席する三度目の日弁連集会(2009年11月人権擁護大会・2010年1月個人通報制度実現目指す集会)が明治大学で開催され、通常国会での個人通報制度批准は待ったなしの課題です。
以上