新勤評を校長たちはどう捉えているか
--府教委が消し去り無視した校長たちの生の声--
■教育現場にはなじまないと指摘する意見
・評価・育成システムは、そもそも教員の育成にはなっていない。意欲を持って仕事に当たる者は、このシステムがある・なしにかかわらず、仕事をしている。このシステムは教職員にはそぐわないと考える。
・デメリットの方が大きい。よけいな混乱、精神的負担を評価者、被評価者に与えている。
・教育の現場にはそぐわない。意欲と活性化に必要なのは、競争でなく協働化、給与でなく働き甲斐、管理でなく自立、自己満足でなく協同し合う喜び、お金による意欲でなく教師としての専門的力量と職人技の練磨のための交流と育成。
■システム批判・おもに廃止を求める意見
・評価者・被評価者、双方にとって、全く労力のムダになっている。早くなくすべきであると考えています。
・今のままのシステムでやると学校はだめになると考えている。
(表)
・全く別のシステムを考えてください。現場は疲れています。
・人間関係を損なうので早く止めていただきたい。
・教職員に評価・育成システムはなじまない。給与反映に大いに苦慮している。
・教員と管理職との断絶を深めるだけのシステムを早急にやめるべきだ早くやめた方が教職員が良くなる。これ以上いくら続けてもダメである。教職員にどれだけ礼を言い、ほめているのか、管理職の苦労をもっと知って、このシステムをどのように変えるのか考えてほしい。
・評価者・被評価者ともに望んでいないシステムであり、給与反映を含め、見直しが必要である。
・大阪市内の学校園、特に中学校の状況は様々です。「しんどい学校」で日々子供たちのために尽力している教職員の労苦に報いるシステムの構築を切に願っています。
・教育の現場にふさわしいシステムであるとは言い難い。このシステムにより教職員が非常に前向きになったというようなプラス評価は聞いたことがない。
■職場における人間関係(信頼関係)の問題点を指摘するもの
・評価育成システムの有無にかかわらずまじめに取り組み、資質を向上させ成果を上げている職員は存在する。給与反映はあまり意味が無くむしろ一部職員と人間関係がまずくなった。校長の大変な負担になっていることを是非わかってほしい。
・評価をする時期になると人間関係が悪くなるようでストレスがある。
・教職員同士や管理職と教職員間で人間関係が崩れる。仕事量が多くみんな協力しあうことが重視される職なので差を付けることが難しい。現場にはなじみません。
・各校の校長によって評価基準が異なるため、校長への不信につながり管理職と職員の関係を悪くする。
・評価という部分、そして給与反映の仕組みが、教職員との関係性をズタズタにさせる。
■特に給与反映の問題点を指摘するもの
・皆必死になって取り組んでいるように思われるので、給与差を付けることは好ましくないように思う。
・教育という仕事の評価は難しい。給与差を設けることで、意欲をそがれる。評価者によっても差が生じるので回答しにくい。
・給与に反映させるシステムをやめ、職務精励や教育功労などの表彰の人数を増やすべき。
・評価し育成するためには、目先の給与反映に反対である。資質・能力向上に役立っていない。
・評価結果がCDの人のみ抑制するか、昇給への反映をなくしてほしいと思います。
・評価・育成システム、給与反映が学校組織としての高まりや意欲・能力の向上において、むしろマイナスになっている。
■評価者として評価することの苦渋を述べた意見
ア 評価の困難性
・教職員数に差があるのに面接等同じようにするには物理的に無理な面があるように最近強く感じる。
・評価者からすると、大変苦労の多い制度である。
・評価基準を数値化など客観的な基準で表すことが困難である。人が人を評価することの難しさに直面している。評価結果を丁寧に説明を行うなどを行っても被評価者すべての納得が得られず、評価者に対する不信感は拭い切れずある。そのため校務運営に支障をきたすことがある。
・「労多くして功少なし」という感想です!
イ 評価基準のあいまいさ・不公正性
・評価者によってアンバランスが生じている。より具体的な共通の評価基準の導入及び絶対評価の一部見なおしを図る必要がある。
・学校によって評価基準が異なるため不公平感がある。
・同じようにクラス運営をしても、課題が多くある学級を引き受けてがんばった人と、普通のクラスを持ってがんばった人では評価が違っても同じでも職員は不満を持つ。勤務評定ではだめだったのかと思う。
ウ 特に客観性担保の困難性
・評価結果について被評価者自身が納得できるものである必要がある。今の評価内容は主観に左右されることが多く、客観性に欠ける点が改善に求められる。
・このシステムがあることによって、おおらかな視点で職員を見ることができなくなっている。
エ 特に「A」「B」の評価分けの困難性
・BとAの差は、非常に微妙で、ほんの少しの「さじ加減」でどちらにでもなるので評価が難しい。それが給与に反映するとなるともっと難しい。今のシステムなら教職員の意欲を向上するというよりも、低下させることの方が多いし、評価者がいつも苦しい評価を迫られる。
・評価AとBの差も曖昧な上、給与に差が出るというのは、むしろやる気をなくすことにつながる。
・AとBでは、校長に対する「うらみ・つらみ」が存在する。
・AとBの評価をすることが大変むずかしく悩む
オ 特に「B」評価の問題点を指摘するもの
・B評価のものが給与が下がる結果となったところが一番の問題点である。
・現在の基準ではBがAになるためのハードルが大きくスモールステップの評価による意欲づけがむずかしい。給与への反映はC、Dのみとし格差を大きくする。A、Bは絶対評価で給与への反映はしない方がよい。
・S・A・B・C・Dの表記をS・AA・A・B・Cに変更。
カ 「たてまえ」絶対評価の問題点
・責任者として続ける努力はしますが、システムとしては多くを期待できない気がしています。とくに「絶対評価」として指導されてきているのに「相対評価」的「広く総合的に」は矛盾した考えであると感じています。
・絶対評価と言いながら、実際の運用面では、相対評価を加味した絶対評価になっているところに問題がある。
キ その他の問題点
・これだけ日常の業務が多忙化している中で、(書類対応、地域業者対応、保護者対応)管理職も含め教職員の体力・気力も限界にきている。本来であればもっと細かく点検をし、指導助言を与えることで活性化につなげることができると思っても、その時間が作れない現状。(一部略)現状は仕事量が多すぎる。
・とにかく現場は頑張っています。時間外勤務も多く、休憩時間もとりにくい中で能力の差もあるが組織として補い合って活動しています。頑張っている教員の給与のみ上げるか、その逆でよいと思う。
■アンケートや教育委員会に対する批判
・このシステムが試験的に導入される以前より管理職であるが、何回ものアンケートで「教員にはなじまない制度であること」を書き続けてきたし、質問もしてきた。しかし、全く改善も委員会は考えていただけない! 非常に残念である!
■管理職の立場・被評価者の立場から・管理職と一般教員の給与差がほぼなくなっている状況では昇任試験の受験者はいなくなると思われる。努力している者、責任ある仕事に対する正当な評価を期待する。
・市教委が行う校園長評価の適当さを恥じよ。年一回20分程度の面談、年一回30分程度の学校訪問年1回20分程度の開示面談→これ以上は無理な訳であり、よってこのシステムそのものが無理であることになる。
■「改善」を要望するもの、システムを賛美・肯定するものの意見は少数でありここでは省略する。
府教委が実施した「教職員の評価・育成システムに関するアンケート」は、恣意性・誘導性が強いものでした。しかし、校長すべてを対象とした点で初めてのもので、その生の声が反映している点で重要です。
十月末に府教委が発表した「アンケート結果」は、自分の都合のいいように賛否同数を並べただけの全くいいかげんなものでした。記述の大多数を占めたシステム批判・廃止の声は切り縮められ、真剣に意見を述べた校長達の叫びは冷たく切り捨てられています。
ここでは校長の声を直接紹介します。まず大阪市教委が開示した全校園長477名のうち「Q6ー1」の自由記述欄に書かれた253名の意見を、府教委が切り捨てたシステムに批判的な意見を中心に示します。
府教委は質問項目に、「システム廃止」「給与反映の中止」「評価することの是非、あるいは評価の困難性」を回答する選択肢を用意しなかった。したがって、システム廃止等の意見は選択回答の分析には表れません。
ところがQ6の自由記述の回答を見ると、実に多くの校長がシステム廃止や給与反映の愚弄を述べています。
現行システムについて、面談等を評価する記述は一定見られますが、給与反映を含めシステム全般について積極的に肯定する記述は極めて少ない。
その反面、システム廃止をはじめとして、システムについての否定的・批判的意見は非常に多く、特に学校における人間関係・信頼関係の崩壊を挙げる意見は切実でした。さらに給与反映の問題を指摘する意見も多々見られました。また、実際の評価を通して評価の不可能性・困難性を述べる意見も数多くありました。給与差をもっと大きくという意見もなくはないが、これもまた極めて少数の意見でした。
概して、校長たちは成果主義的教員評価である大阪府評価・育成システムに否定的であることが如実に表れていると言えます。これから導かれる結論は、評価・育成システムと給与反映は廃止しかないということです。
『大阪・新勤評反対訴訟』
http://www7b.biglobe.ne.jp/kinpyo-saiban/osaka/hajime.html
≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
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