12月3日(金),日弁連主催の上記研究会において,「自由権規約委員会の動向について」岩澤雄司さん(自由権規約委員会委員長)の講演が行なわれた。
 岩澤さんは,委員長職務の難しさなどの話を前ふりされたのち,1,国家報告審査について素人にもわかりやすいようにかみ砕いて話された。
 まず1の(1)として制度の現在抱えている困難の一つに,公式語(英,スペイン,仏)への翻訳が力量的においつかず,各国政府からの回答を読むことができない事態となっていることをあげられた。
 1の(2),作業方法の改善として取り組んだのは,委員会が質問票(リストオブイシュー)を先に出し,締約国からの書面回答をもって報告とする,という質問票先行方式にあらためていくこと,また,報告指針の改訂も行なったことであると話された。
 報告指針の改訂とは,一つは報告書を出さないままの国に対して報告なしでも討議をすることにした点,もうひとつはフォローアップの強化,即ちフォローアップ手続きの改善,総括所見の評価の5段階化をはかったことである。
 規約委員会が締約国に対してより実行性のある,より強力な人権監複をしていくぺく,一歩一歩進めていることがよくわかった。


 岩澤さんは次に2,個人通報制度について話された。
 民主党政権のマニフェストにかかげられ,千葉景子元法務大臣が就任会見で述ぺた抱負の一つ,選択議定書の推准のことである。
 私もこの個人通報制度を一日も早く日本政府が批准してできるようのぞむ一人であり,大泉ブラウス処分について正式に国連に申し立てできる日を待っている。(とにかく日本人でやったのはメルボルン事件だけなのである。事件がオーストラリアだったからできた。オーストラリアは批准しているので申し立てられる。)

 まず2の(1)として,受理可能要件について語された。①国内の救済をすぺて尽くしたのち,はじめて可能であること,②主張ごとに国内手続きが行なわれたか救済完了が判断されること,③十分に立証したか,④時間的管轄,即ち遡及適用はできないが人権侵害が継続している場合は認められる,こういった点が審査されるということであった。

 2の(2)として,提出が不当に遅れた通報について,どうなるか話された。過去に事件から15年おくれた通報は,権利の濫用として不受理,10年,9年,7年も不受理,という例があった。8年で受理ということもあり整合していない。ヨーロッパ人権裁判所では4年4ヶ月おくれで受理されている。

 そこで,2の(3)として,手続規則の改正について,何年たつと濫用とするのか,現在規則変更の討議中であると,生々しい討議の様子も含めて,会議録の発言を追いながら報告された。

 2の(4)としては,具体的案件が報告された。一端受理されたが,その後不受理となった場合としてこれまで1件しかない珍しいフランスの事例--国内で救済し尽くしていない,弁護士責任として手続きの過誤があるとされた--をあげられた。

 講演の3は,一般意見34号,2010年10月に,第1読を終了した自由権規約開連条文(第19条,第20条)について,現在行なっている討議を報告された。
 これは駆け足で,タイトルのみの紹介だったので全くわからなかったが情報へのアクセス,反テロ,宗教冒涜など興味深い項目があった。心に残ったのは,ヨーロッパの国の中には,歴史的事実をまげると処罰される法をもっている,ということである。

 79ページにわたる資料は日本語のページが3枚だけ,あとは全部英語で,私ははなからひいてしまったが,個人通報制度を利用するため,かなリリアルな基準がわかったし,何より規約委員会と締約国の間でかわされる質問票と報告書の作業方法の改善もわかったし,委員会の中のやりとりの様子がリアルに聞けて一気に身近(?)に感じられた。

 新井さん木村さんたちがジュネーブに行き,私も国連活動日本委員会に資料を届けてもらって以来の自由権規約に関する,第2段階踏みだしであった。プロジェクトチームにとっても私にとっても意義ある一歩となった。(渡辺)

『ほっととーく 96』より
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