◆ ハンドル型車いす乗車拒否
   新幹線売り込み急ブレーキ!?

 先月24日付「こちら特報部」で報じたハンドル型電動車いすの新幹線乗車拒否問題。今度は来日中の米国人女性を拒み、トラブルになった。
 日本は米国へも新幹線の売り込み中だが、女性は「明らかな差別」と、州知事らに問題を知らせる手紙を出すと話している。
 先進技術を誇る新幹線の売り込みが、後進的なバリアフリー対応に足を引っ張られるかもしれない。(熊谷通信局・柏崎智子)

 ◆ 来日女性、旅行を断念
 この女性は、カリフォルニア州のウエスタン保健科学入学臨時職員で、障害者政策コンサルタントのジューン・ケイルスさん(61)。脳性まひで、ハンドル型電動車いすを二十年来常用している。
 財団法人日本障害者リハピリテーション協会の外国人研究者招聘事業で先月来日。帰国前に観光しようと今月九日、JR新宿駅で、東京駅から京都駅までの新幹線を夫と二人分予約した。
 ところが、東京駅のJR東海・新幹線改札口で、駅員ら十二人に取り囲まれ「ハンドル型は乗せられない。緊急時に対応できない」と制止された。


 ケイルスさんは、乗リ降りは自力歩行し、車いすは分解して手荷物として持ち込むと説明したが、それも拒否された。
 駅員らは1時間ほどその場で対応を協議し、ケイルスさんに手動車いすを貸し出し、ハンドル型は同駅で預かると提案した。
 JR東海は「何とかご旅行いただくため」というが、手にも障害があるケイルスさんにとって手動車いすは使い勝手が悪く、結局、夫婦は京都行きを断念した。

 ◆ 「欧米で経験ない。知事に問題知らせる」

 電動車いすには、棒状のレパーで操作する「ジョイスティック型」と、小型スクーターのような「ハンドル型」があり、JRなど国内鉄道各社はハンドル型は重くて大きくほかの乗客の妨げになるとして特急車両への乗車を拒否してきた。
 このため、障害者との間でたびたびトラブルが発生。2○○4年には大阪法務局が、当時在来線にも乗車させなかったJR東海に対し、人権侵害だとして改善勧告を出した。
 昨年、一定の基準を満たし、国土交通省直轄の公益法人の認定を受ければ、特急にも乗れることになったが、認定作業が進まないうえ、外国人旅行者は適用外だ。
 ケイルスさんは障害者差別禁止法を持つ米国はもちろん、欧州を旅行した時も鉄道に乗れなかった経験はないという。
 「私の車いすはジョイスティック型よりずっと小さい。何が問題?」

 国交省によると、米国への新幹線売り込みのうち、JR東海はフロリダ州、JR東日本はカリフォルニア州などと現在、交渉中だ。いずれも来年には資格審査や入札が始まるとみられている。
 ケイルスさんは、米国が物事を決める時は世論が大きな影響力を持ち、時に障害者団体がその役割を果たすという。
 「帰国後、米国の州知事や国務省、運輸省などへ手紙を書いて、今回の人権侵害の実態とJRがどんな考えを持った会社かを知らせ、各地の権利擁護団体へ情報を流す。JRが米国仕様ではハンドル型も乗れるようにするというのなら、なぜそれが日本ではできないのかと問い返したい」

 ケイルスさんは、今回の経験で最も理解できない点をこう語った。
 「ちょっと制度を直せば解決するのに、なぜここまで大ごとにするのか。本当は(是正は)大した問題じゃないでしょ?」
 JR東海は、今回の対応について「認定ルールに基づいて適切に対応した」としている。

『東京新聞』(2010/12/20【ニュースの追跡】)

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